バンッ
作法書『式部之書』を殿に投げ付け、
帰蝶「晴れませぬ」
信長「コレ、ヒトやモノに当たるでない」
帰蝶「では、当て馬を立てて下さいませ」
信長「杉原は、当てにならぬか?」
帰蝶「彼女は…」杉原は否の打ちどころの無く、
私の狭き淋しき心をよう察し、面倒見が良く、居て、助かる。
信長「良い話し相手になろう」
彼女は、殿が私のために用立てた侍女だった。
帰蝶「…」
殿は、私より先に侍女らに疑いの目を向けていた。
三度の流産。
もしや、食に堕胎薬をと、まず先に侍女らを疑い、
そこで起用されたのが、尾張家臣杉原の娘だった。
侍女の見張り役として、抜擢された彼女だったが、
三人の娘がいる。一番上は十四で早々医者に嫁ぎ、
残った二番寧々と三番ややを連れて来るよう命じ、
しかし、それでは依怙贔屓。他も同じように扱い、
「…私の部屋が、ありませぬ」
信長「いつも通り、ここを使えば良かろう」
帰蝶「いつも…」
信長「留守中、ここで転寝。書を勝手持ち出す理由も無くなろうが、え?」
私は、ここの緋色アラベスク絨毯で寝そべるのが好きだっ。
端たなくも足を投げ出し、アラベスク(永遠)の中で横になる。
それはまるで、輪廻転生を待ち侘びる、ややのように感じる。
殿の御部屋は、興味の宝庫。面白そうな書を密かに持ち出し、
バレぬよう、元に戻して置いたはずが全部御見通しであった。
言い返す言葉が無く、ついには、
帰蝶「…私に、新しき懐剣を用立てて下さいませ」
作法書『式部之書』を殿に投げ付け、
帰蝶「晴れませぬ」
信長「コレ、ヒトやモノに当たるでない」
帰蝶「では、当て馬を立てて下さいませ」
信長「杉原は、当てにならぬか?」
帰蝶「彼女は…」杉原は否の打ちどころの無く、
私の狭き淋しき心をよう察し、面倒見が良く、居て、助かる。
信長「良い話し相手になろう」
彼女は、殿が私のために用立てた侍女だった。
帰蝶「…」
殿は、私より先に侍女らに疑いの目を向けていた。
三度の流産。
もしや、食に堕胎薬をと、まず先に侍女らを疑い、
そこで起用されたのが、尾張家臣杉原の娘だった。
侍女の見張り役として、抜擢された彼女だったが、
三人の娘がいる。一番上は十四で早々医者に嫁ぎ、
残った二番寧々と三番ややを連れて来るよう命じ、
しかし、それでは依怙贔屓。他も同じように扱い、
「…私の部屋が、ありませぬ」
信長「いつも通り、ここを使えば良かろう」
帰蝶「いつも…」
信長「留守中、ここで転寝。書を勝手持ち出す理由も無くなろうが、え?」
私は、ここの緋色アラベスク絨毯で寝そべるのが好きだっ。
端たなくも足を投げ出し、アラベスク(永遠)の中で横になる。
それはまるで、輪廻転生を待ち侘びる、ややのように感じる。
殿の御部屋は、興味の宝庫。面白そうな書を密かに持ち出し、
バレぬよう、元に戻して置いたはずが全部御見通しであった。
言い返す言葉が無く、ついには、
帰蝶「…私に、新しき懐剣を用立てて下さいませ」