ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~私も、そうだった…~

2012-12-07 | 散華の如く~天下出世の蝶~
武庫に隠れて、鬼を待ち、
「も~ういいよぉ」
って言ったのに、
鬼が迎えに来なくて、待ち疲れて寝てしまい、
“いた…様、…帰蝶様”
ゆさゆさと私を揺り起し、
私の夢は、そこで消えた。
私を現実に引き戻したのは、かの美しい従兄殿、明智様。
そういえば、長良の合戦前、明智城は兄に攻め落とされ、
その後、従兄弟殿は、どうしていらっしゃるのであろう?
明智様は、浪人に朽ちたと風の便りに聞き及び、
渦中の鬼は今や敵、さらに、ご病気と聞き及ぶ。
兄上にお従兄殿、今、どうしていらっしゃるのであろう?
帰蝶「…信長様が、お好きなのか?」
市姫「大嫌いッ…信長の兄上なんて、大ッ嫌いッ」
一の姫様は兄である信長を好いていた。
最近の殿は、政と戦に忙しく飛び回り、
帰蝶「淋しい思いをさせてしまったな…」
可哀そうに、妹君との時間が取れずにいた。
さらに、淋しさを募らす原因に、
美しき生駒のへの嫉妬と、義弟誕生へのヤキモチがあった。
市姫「大嫌い…皆、忙しい、忙しいって、…わらわの相手をしてくれぬ…遊んでくれぬ」
帰蝶「遊ばぬから、嫌うのか?」
市姫「だって、だって…今までずっと、」
お姫様、お姫様と、チヤホヤされて育つと、
相手されなくなった時、孤独感に苛まれる。
私もそうだった。彼女くらいの九つ十の頃、弟が誕生し、
兄が戦に出向き、私だけ、取り残された気持ちになった。
帰蝶「私“も”、兄上様が好きだった…」
おいおいと泣きじゃくる一の姫様に聞かせる訳でもなく、私は昔話を語り始めた。