ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~盾の母、犠牲の子~

2012-12-14 | 散華の如く~天下出世の蝶~
市姫「痛い、痛い」
つい殿の影に苛立ち、行動が荒くなってしまった。
帰蝶「すまぬ…、私を許せ」
姫様に淋しい思いをさせたのは、私。
五年前の長良の合戦、我が兄が原因。
小さな姫を肩から優しく抱き寄せて、
私の袿で彼女の頭からすっぽり覆い、
強く深くしかと、思いを抱き止めた。
市姫「母の中は、かよう温かいものなのか…」
帰蝶「え?」
十月過ぎたお腹に、手を当て、
なでなで、腹のややを撫でた。
市姫「…いいな…」
私は、彼女の黒髪を、一つ、
ゆっくり上から下へ撫でた。
そして、
「母は、私を嫌っておる…」
本音が一つ、零れて落ちた。
母に抱かれた記憶が無いのであろう。
母と引き離された五年前、姫は四つ。
義龍の命により、実兄に反旗を翻す実弟。
“已む得ず”
殿は義弟に暗殺令を出し、そして、誅殺。
謀反首謀者たる母は命こそ免れたが隠居。
確か、家臣柴田、縁の寺でいると聞いた。
御母上様も事を後悔し、淋しいかろうに。
帰蝶「子を嫌う母はおらず。ただ…」
子を思うが故の謀反。
わが身安泰故の反旗。
「子を守りたい、その一念であった…」