『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  397

2014-11-05 07:26:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 とにかく古代である。彼らの交易にはルールなしの時代である。あるのは双方の力関係とカケヒキであった。カケヒキが10残る90が力といった問答無用の取引と想像してもらえばいいと思う。
 「軍事と交易と海賊が三位一体」で相手にあたったといっていい。軍事の優位があればタダで貢がせる、力ずくで奪い取る。エーゲ海多島の海域では、そして、クレタの周辺では大小さまざまの群れ、集団が軍事力、武力、政治力を駆使する争いの場であった。
 クレタ人は、平和的な民族で平和的に交易をおこなって繁栄を享受して、文明を開き、質の高い物産の生産を行い、交易をおこなったと思われる。歩みの速度は速いとは思われないが、彼らが築いたクレタ文明は発祥から終焉に至るまで1000年余りの時を経ていたのである。資料を読んでいても文明の時代は短く感じられるが1000年といえばそれはそれは長い長い年月である。平均寿命が短い古代にあって家族世代が20世代以上に及ぶ年月である。
 クレタ人が平和的民族であった証は、クレタの宮殿には城壁といったたぐいの建造物のないこと、また、イラクリオンの博物館の展示品を見ても、ギリシアの博物館の展示品に比べて、武器、武具等の展示品の少ないことでも察せられる。
 ギリシアは、ミケーネを中心に台頭してきたアカイア人らは、スパルタといえば察しがつくように、彼らは戦闘的であり、軍事力の持つ意味を理解していたといっていい。大陸の突端にしてエーゲ海の多島の海域を隣にする彼らは海洋島国的な意志を持ち、小規模ながら軍事的思考で事にあたった。軍事力あり、軍事技術あり、彼らは海賊行為をもって、クレタに挑み侵略していった。
 クレタは、島の各地に展開する彼らの執拗な攻撃に、ギリシアはアカイア人の軍門に降った。
 ギリシアのアカイア人らは、クレタに対して交易乗っ取りの図式で政権、利権、交易の利益を奪った。このクレタの権益を奪ったアカイア人らも、イリオネスの感じた彼らの政権崩壊の前駆症状の通りに、そののちに「海の民」と呼ばれる海賊の群れ、群団、集団に襲われて壊滅するのである。
 この「海の民」と呼ばれる集団は、どのような集団であったかははっきりしていない。この奴らは、天候不順、農作物の不作、西アジアの海岸沿いに南下して、玉突き状態で海に押し出された難民ではないかと言われている。
 この海の民がヒッタイト王国を滅ぼし、クレタに押し寄せる、エジプトにも襲いかかったが、エジプトは辛うじてこれを撃退するがこれで国力をすり減らしてしまったのである。
 この海の民が地中海の各地に散らばり動乱の終結を見たが、繁栄していた地中海沿岸の諸国はすっかり荒れ果ててしまったらしい。
 そのあとに、技術史上で大きな変化が生じた。何故かわからないが、地中海沿岸が「鉄の時代」を迎えたのである。