NHKの番組で、「プロフェッショナル仕事の流儀」があり、良く見ます。
出てこられる方々は、その道のプロフェッショナルです。
見積もりを依頼すると、必ず現場を見てくれる鉄工所の社長がおられました。
見積仕様書、工事工程表と図面を提出し、見積もりを依頼します。
見積もりを提出書類通りにされる業者が多い中で、現場を見てくれる
数少ない一人でした。
書類や図面に現れない段取りについて、現場を見たいというのが理由でした。
大阪、福岡や北海道での仕事もあり、そんな時は、その方の交通費と宿泊費は
私の会社で経費としてみました。
今回だけでなく、今後とも発注するかどうか分からないからでした。
食費も私の会社で支払いました。言ってみれば、当然のことです。
設計者と私で行く二人分の旅費(会社の経費)で、旅行業者に依頼して
4人分(見積側2人を加えて)の費用としたこともありました。同額でした。
書類には書ききれない課題とその解決へのアプローチが、現場には落ちています。
その方の見積もりは、高くもなく低くもなかったのです。
追加金額も請求されない代わりに、むやみな値切り(単に一律10%-20%を値引く)には
応じてくれませんでした。見積もりの中味を視て、段取り変えや仕様書の変更などを
した上で値段交渉をしました。
それには、応じてくれました。また知恵も貸してくれました。
社長は、67歳で鉄工所をたたみたいと言われました。
たたむのを3年間延ばしていただきました。会社には、貴重な戦力でしたから。
時には、合わない見積もりで発注することができない場合もありました。
社内のサービス部門に紹介しました。
川崎に工場を構えていた社長は、仲間の連絡網を駆使して、
短期で満足の行く仕事をこなされたようです。短納期が常のサービスにとっては
便利屋となりました。どんな小さな仕事でも、電話で受注はされませんでした。
必ず、欲しい部品のサンプルを見に図面をチェックしに頻繁に会社に顔を出すように
なられました。時には、機械設計者を連れてこられたり、
現場視察も忘れることはありませんでした。見積もりまでは無償で動かれたようです。
鉄材の配送兼倉庫として使用したい元売り業者と、
鉄工所の賃貸契約されるまで続けられました。
70歳でした。
若い設計者が見積もり依頼することが発生します。
そんな時は、足りない部分を補って見積もりをしてくれたようです。
今でも、各業者からの見積書を、私は必ずチェックします。
見積書は、発注側と受注側の無言の対話です。
良くできた見積書に助けられることも何度かあります。
見落としの見積書には、増額して発注することもあります。
見積仕様書を良く見ていない証拠ですが、いじめる訳にはいきません。
私達プロジェクトエンジニアーにとって、基準となるような見積もりを
してくれるプロフェッショナルは貴重です。なかなか出来ないことなのです。
2014年11月24日