(ジンバブエのホテル)
成田空港から香港へ、
香港で南アフリカ航空に乗り換えてヨハネスブルグ、
さらに乗り継いでビクトリアの滝まで飛ぶ。
なんと飛行時間通算20時間。
ほとんど一日掛かった空の旅。
飛び立つ成田では、夏に近い気温であった。
乗換えで最初に降り立った香港空港も夏姿で十分快適であった。
南アフリカ航空で13時間、
一眠りして到着したヨハネスブルグでは、
空はどんより曇り、肌寒く感じる。
出発前の東京で、テレビのニュースにアフリカは
異常気象に見舞われ雪が降り積もったと報道されていたが、
その名残りかと、用意した衣類が心配になってきた。
何しろアフリカといえば「暑い」が代名詞のようなもの。
黒人が腰に蓑をつけ、弓矢と槍、
チーターと象とターザンのイメージが強い。
ボクには想像も付かない気温である。
(空港で人待ち顔の黒人女性)
冷静に考えれば、アフリカは南半球にあり、
今の季節は5月初めと考えれば、
時には寒さに震える時期があってもおかしくはない。
そのように用意したつもりでもなんとなく不安が頭をよぎる。
ヨハネスブルグで乗り継ぎ、
2時間でビクトリア・フォールズ空港に着陸。
今度は予想通りの暑さで、
とりあえず衣類の心配はどこかに飛んでしまった。
ガイドさんの説明では、
日中は最高気温38℃、
朝晩は17~18℃という。
本来今頃は雨季に入っているのに、
世界的な異常気象で、まだ乾季の中にいるとのこと。
旅行者の皆さんにとっては幸いなことです、
と慰められた。
長旅に疲れて、すぐホテルに案内されたが、
飛行機を二回も乗り換えた所為もあって、
ツアー同行者のスーツケースが一つ
どこかへ行ってしまった事件が起きた。
このスーツケースは旅行中の五日目に航空会社から返送されてきたが、
この五日間スーツケースをなくした人は、
毎日着物の洗濯を余儀なくされたのであろうか。
ボクたち夫婦のバッグ――
二つのうち一つの鍵が破壊され中身が引っ掻き回されていたが、
鍵を壊した人にとっては、
ろくでもないものばかりだったのか、
何の被害もなかったのが幸いであった。
幸いといえば、偶然にも予備の鍵セットを持っていたので、
翌日から間に合い、快適に旅を続けることができた。
宿はリゾートホテルで、
その名も「Kingdom(王国)」。
夕方16時からのサンセットクルーズに出かけるまで一時間ほどを、
休憩することになった。
スーツケースを広げ、就寝の準備をして、
窓を見るとすぐ目の前が池になっていて、
その先がプールになっている。
リゾートホテルの雰囲気で庭は広く、ここに三泊の予定。
初日はザンベジ川のサンセットクルーズ。
二日目は、ボツワナまで出向いてチョべ国立公園で、
サファリドライヴとチョベ川のボートサファリを楽しむ。
三日目は、雨季には1,7キロあるというビクトリアの滝を、
ジンバブエ側からとザンビア側から観光する。
飛行機の上からは大草原と、
ところどころに集落があり、
回りを囲んで円形に紫色の塊が見える。
きっとジャカランダの花であろうと推測できる。
空港からホテルまでの道のりで、
ジャカランダの大木を見つけ、ツアー客は歓声をあげたり、
桜のようにびっしり真紅の花をつけた木を見て
奇声をあげたりしている。
(炎の用に赤い火炎樹/ボクのビデオから)
ガイドさんの説明によれば、
真紅の花の木は「火炎樹」というそうで、
まさしく大木が紅蓮の炎に包まれているようであった。
(赤く萌える火炎樹)
一時間のホテルの休憩も、
少し横になると朝まで起きられそうもないので、
ホテルの建物の周りを散歩することにした。
部屋のある建物の裏庭はきれいに芝が刈り込んであって、
庭は金網に囲まれて外界から隔離されている。
金網の先は熱帯樹林になっていた。
金網の近くに何か蠢く動物がいる。
ちょっと目には「いたち」か「りす」のようであるが、
大きいのや子供と思われる小さなものまで、無数にいる。
餌を探し食べ歩いているようだが、
リスでもイタチでもない。
カメラを持参して撮ればよかったと悔やまれる。
近づくとボスらしい一番大きなものが立ち止まり、
こちらを伺うようにしてから、
一声鳴いた。「チエ!」とねずみのような鳴き声と共に
全ての動物は茂みの中へ消えていった。
後で動物図鑑を調べてみるとシママングースであった。
芝生を歩くと裏門があり外へ出ようとすると、
当然のことであるが黒人の門番が立っている。
呼び止められて、
「どちらへ?
この先15分ほど歩けば、ビクトリアの滝に出られるが、
途中、野生のバッファローの群れに出合うかもしれない」という。
もちろん英語だ。
アフリカに来て野生の動物に出会ったとき、
どう対処すればよいか不安に思ったので、
門番に礼を言って、外出するのをやめた。