「一笑」の題字を見て、何を思い出すだろうか?
一笑(いっ‐しょう)、
・ちょっと笑うこと、にっこりすること。(例、破顔一笑する、のように)
・ 一つの笑いぐさにする。笑って問題にしない。(例、うわさを一笑する、のように)
・周りの笑いものになる。(例、意見が一笑を買う、のように)
以上は国語の辞書にある。
ここでは「一笑」は人の名前、俳号を指す。
小杉一笑、また通称茶屋新七といい、
加賀俳壇の有力者、芭蕉の来訪を待たずして亡くなった。
芭蕉もこの俳人に逢うことを大変期待していた。
その模様が描かれている。
「奥の細道」で松尾芭蕉は金沢に一笑を訪ね、
次のように、
「一笑というものは、この道にすける名のほのぼの聞こえて、
世に知人(しるひと)も侍りしに、去年(こぞ)の冬、早世したりとて、
其兄(そのあに)追善を催すに、
・塚も動け 我泣声は 秋の風
ある草案にいざなわれて
・秋涼し 手毎にむけや 瓜茄子(うりなすび)
途中吟
・あかあかと 日は難面(つれなく)も あきの風」
と記している。
ボクの勝手な解釈によれば、
(一笑と言う人は、俳句の道に優れた人として、
世に知れ渡っているので、
逢いたいと思っていたが、
芭蕉の来訪を待たずに、昨年の冬、一笑は早世したと言う。
逢いたい人であったが、逢うこともかなわず残念に思っていると、
その兄が、一笑の墓のあるお寺で冥福を祈って、
句会を催してくれた。
そこで詠んだ芭蕉の句、
・塚も動け 我が泣く声は 秋の風)
【秋風となって墓(塚)を揺さぶるぞ、
あなたを悼む心にたかぶる私の泣く声で】
こんな意味であろうか、激情がほとばしり出ている・・・。