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農作物の指名買いが始まる

2024-06-20 21:08:34 | ビジネス

今年は、スーパーに行っても「梅」の入荷がとても少なく、「梅仕事(=梅干しづくり)」を諦めた。
そんな時、「梅ボーイズ」というYouTubeを見つけた。
YouTube:梅ボーイズ 

彼のプロフィールを読むと、北大大学院で薬学を学んでいたようだ。
そのまま就職をすれば、製薬企業で新薬・創薬の研究をしていただろう。
その彼が、実家の梅農家を引き継いだのは、梅農家が抱える問題を解決し、よりよくしていきたい!という思いからのようだ。

「梅ボーイズ」の彼だけではなく、「米利休」という名前でInstagram等を始めた若者もいる。
Instagram:米利休

名前の通り、米農家である祖父の後を引き継ぐ為、東大卒業後農業に携わることを決めた、という若者だ。
彼らに共通しているのは、一般的には「企業のエリートコース」に進める条件をもちながら、農業に携わるということを決めた、という点だ。
地方出身の彼らだからこその選択、ともいえるのかもしれないが、彼らに共通しているのは「自分の選択に迷いが無い」ということと「これまでの農家のイメージを一新したい」という、思いの強さを感じられる事だ。
その為にSNSを活用して、自ら様々な情報を発信しつつ、「ファンを増やす(=応援してくれる人を増やす)」、農家のイメージアップのような取り組みをしているのだ。

政府は「自給率を上げよう」と、農協等をとしてPRをしているが、自給率を上げるために刄、農業に携わる人たちも増えなくては、維持することができない。
そこで政府が考えたのが「農地の集約化による、農業の機械化」だった。
一見この政策は、効率的に生産量を増やす為には、効果的なように思えるのだが、現実はそれほど甘くはない。

農業そのものは、時間と手間がかかる割に、収穫時期はとても短い。
今年のように、雹が振ったために出荷できる梅が傷つき、出荷量が減ったりして、出荷量そのものが減ってしまう、
おそらく米農家さんである米利休さんも、天候次第で出荷量が激減してしまうだろう。
「天候に左右される=安定的な生産ができない」ということは、市場価格の安定化が難しい、ということでもある。
それは「農家の収入の不安定さ」ということになり、農業従事者を減らす要因の一つとなったはずだ。

それだけではなく、農業をはじめとする第一次産業の多くは「3K(=きつい・汚い・危険)の職場」と言われている。
今現在は、第一次産業に限らず「3K」と言われる職業に従事する人は、減少傾向にあると言ってよいだろう。
そのようなマイナス要素を打開するための策として「6次産業化」ということ、10数年前から言われるようになってきたのだが、この6次産業化そをする為には、様々なアイディアや投資が必要になる、という現実がある。
その為6次産業化をする為に行われているのが「法人化」ということになるのだろう。

第一次産業と言っても、一つの分野だけに特化するのではなく、総合的な第一次産業化から6次産業化することを目指すことで、起きることが「生活者からの指名買い」という、新しい生活者と生産者の結びつきのような気がしている。
実際、「梅ボーイズ」は、YouTubeで様々な情報を発信するだけではなく、HPを開設し通販も行っている。
おそらく「米利休」さんも、Instagram等のSNSを通して、通販等を始めるのでは?と、想像している。
当然そのような「生活者と生産者が結びつく」という関係が起きることで、消費の変化が起きてくる。
関係としては「生産者のファン(あるいは推し)」という関係だ。
この関係について、マーケティングでは「インテマシー・ロック(親しみに鍵をかける)」と呼ぶ関係性なのだが、大企業であってもこの「企業のファン(あるいは推し)」づくりには、苦心している。
というのも、この関係は生活者という個人との信頼関係によるものだからだ。
一旦ファンとなった生活者が、何等かの理由で「期待外れ」と感じた瞬間、この信頼関係は崩れ去ってしまう。
まして現在のようなSNS社会であれば、悪い評判はあっという間に拡散されてしまう。

そのようなリスクを十分、若い彼らは理解しているはずだ。
その中で「指名買い」をしてもらうような生産者になる!という意識の高さは、これから先の農業を変える力となるかもしれない。





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