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花粉症と森林資源

2024-06-07 22:48:53 | ビジネス

拙ブログに来てくださる方は、ご存じだと思うのだが、毎朝支度をするときのお供となっているのが、FM番組だ。
朝のラジオ情報番組は、何気なく聞き流すことができ、その中で「あ!」と感じる話題に出会うことも少なくない為だ。
先日も、「花粉症」の話題があり、林野庁が中心となり「花粉の少ないスギやヒノキへの植え替えを進めている」という話があった。
林野庁:花粉の少ない苗木を植えよう

今や「国民病」と言われるほど、潜在的患者を含め日本人の多くが罹患していると思われる「花粉症」。
その主な原因となっているのが、戦後住宅建材用として植林されたスギやヒノキだと言われている。

そこで考えだされたのが「花粉が飛散しないスギやヒノキ」だ。
単純に「花粉症の要因がスギ花粉やヒノキ花粉なのだから、花粉が飛散しない品種を植林すれば、花粉症は激減する」ということになる。
その考えはもっともなのだが、林業という視点で考えた時それほど単純な話ではないのでは?という、気がしたのだ。

まず「花粉の飛散が少ないスギ・ヒノキの植林」を進める為には、現在植林されているスギやヒノキを伐採する必要がある。
1970年代から始まった安価な輸入木材の普及により、日本の木材価格は暴落し、今や林業に携わる人材そのものが激減している。
おそらく、農家よりも激減しているのでは?と、想像している。
木材価格の暴落だけではなく、林業そのものが危険を伴う仕事ということも、就業者の激減に繋がっているのでは?と、考えられる。

そのような背景を考えると、丁度伐採時期に成長しているスギやヒノキを計画的に伐採をするだけではなく、市場に出すということも考えなくてはならない。
「コロナ禍」の頃、海外からの木材輸入が停まり「ウッドショック」と呼ばれる、国内の木材取引価格が暴騰した時があったが、それも一時期的なことだったようだ。
反面、ここ3、4年海外では「高層木造建築」が造られるようになり、その傾向は日本でも見られる。
Impress Watch:日本橋に国内最高層の木造ビル 地上18階高さ84m 

もちろん、このような高層木造建築ができるようになった背景には、「建築法」等の改正があってのことだが、このような「高層木造建築」は、あくまでも「木造建築の新しい姿」というシンボリックな存在だろう。
まして、「高層木造建築ができるようになる=国内の木造消費が増える」とも限らない。
花粉の飛散が少ないスギやヒノキの苗木を植える為には、住宅建築を増やす必要があるのだ。

とすると新たな問題が浮上することが、わかるだろう。
全国的に問題となっている「空き家問題」だ。
人口減少が進む中、空き家が増えるのは当然と言えば当然なのだが、その一方で東京を中心に都市部ではタワーマンションの建設が目立つ。
今の日本の住宅事情というのは、空き家が増える一方で大規模マンションの建設も進んでいる、というなんともチグハグな状況にあるのだ。

となれば、国や自治体の政策としてタワーマンション等の建設を抑制させながら空き家を取り壊し、日本の環境にあった価値の下がらない木造住宅を進めることが必要となってくるのでは?
それは都市計画にも影響を与える問題でもあるはずだ。

「花粉の少ないスギやヒノキの植林事業の推進」は、都市計画と生活する人のライフスタイルにも影響を与える問題でもある、という視点が必要だと考えるのだ。