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Appleが独立系アーティストを支援する。さて、日本の音楽業界は?

2021-05-12 11:42:51 | ビジネス

GW前に、Bloombergに気になる記事があった。
Bloomberg:アップル、独立系アーティストを支援するスタートアップに投資 (動画につき音声付)

この動画ニュースだけでは、Appleが投資する「ユナイテッドマスターズ」という企業が分からない。
詳しい情報はないか?と、調べてみると音楽関係のサイトではなく、技術系のサイトに情報があった。
TechCrunch Japan:Appleが独立系アーティストを支援する音楽配信プラットフォームUnited Mastersに出資

このUnitedMastersは、「独立系」と言われるミュージシャンの音楽を配信する、という事業を行っている。
いわゆる「大手レコード会社」に所属してないミュージシャンの楽曲を積極的に配信をするが、著作権などミュージシャンに帰属する権利などについては、管理をしないというのが、このUnitedMastersの大きな特徴ということになる。

このような事業が成り立つのは、ご存じのように生活者の音楽を聴くスタイルがレコードやCDという、「形」のある形態から、ダウンロードやストリーミングという「データ」という形態で、音楽を楽しむような変化によるところが大きいだろう。特にストリーミングはダウンロードとは違い、聴きたい時に配信サイトであるSpotifyやAppleMusicなどにアクセスをし、音楽を楽しむという方法だ。ストリーミングを普及させることができたのが、サブスプリクションと呼ばれる「定額利用」という課金システムである、ということは、ご存じの通りだと思う。

このUnitedMastersに出資しているのが、Appleだけではなくアルファベット(=Google)やTicTokなどのIT企業である、という点だ。
これらの企業に共通するのが、「配信事業」をしているという点だろう。
とすると、これからの音楽ビジネスの一つの形態として、UnitedMastersのように大手レコード会社に所属しないミュージシャンを世に出すことで、配信会社から利益を受け取り、配信会社側はミュージシャンが有名になる事でより多くの利益を得るという一つのビジネスモデルができるかもしれない。

このような音楽ビジネスが誕生する背景には、米国に根強く残る人種差別やラップミュージックのような、大手レコード会社が二の足を踏むような音楽分野があるからだろう(ラップミュージックの中心となるミュージシャンが黒人である、という点も大きいかもしれない)。
日本でも同じようなビジネスモデルが通用するのか?と言われれば、難しい点は多いと思う。
ただ、昨年メジャーデビューをした藤井風さんは、メジャーデビュー前からyoutubeなどの動画サイトを積極的に利用をし、メジャーデビューをした時には既に、数多くのファンがいた。
その意味では、大手レコード会社が積極的なプロモーションをする必要はなく、コアなファンによるSNS発信から新たなファン獲得をしてきた、という経緯がある。
それは藤井風さんに限らず、ここ2、3年メジャーデビューするミュージシャンやバンドに見られる傾向かもしれない。

まだまだ日本では、大手レコード会社と契約をしないと「プロのミュージシャン。プロのバンド」として認められないという傾向はあるが、配信サービスによる音楽の楽しみ方は軽々と国境を越えてしまう。
既に「日本だけを市場として考えれば良かった」という時代は終わり、UnitedMastersのような企業が登場したコトで、日本の無名ミュージシャンが、いきなり海外の音楽市場に登場する、という可能性もあるということを示しているのではないだろうか?
いち早くそのような動きをキャッチできる日本の企業は、どれだけあるのか?疑問に感じるところでもある。