先日、所沢市が「ふるさと納税」を取りやめると、発表した。
毎日新聞:埼玉県所沢市が返礼品廃止 「税収」は赤字
税収に悩む地方自治体に対する、支援策としてスタートした「ふるさと納税」だが、最近では返礼品目当てで納税をする人も多く、自治体間で「返礼品」がエスカレートしている、という指摘が以前からされていた。
その「返礼品」も、納付した自治体とは関係のない「商品券」などがあり、返礼品そのものの意味も問われるようになってきていたのは、確かだろう。
そのため、自治体の中には「返礼品赤字財政」とも呼べるような、赤字財政にまで発展してしまった自治体もあったようだ。
IZAニュース:ふるさと納税、分かれる明暗・・・「出ていく方が多い」自治体悲鳴
IZAのニュース記事は、昨年のお盆の頃の記事なので、その頃から既に問題視されていたのだろう。
その一方で、昨年起きた「熊本(大分)大地震」の時には、返礼品辞退のふるさと納税をされた方が随分いらっしゃったと聞く。
災害等の発生で、これまでの財政規模では対応できないような場合「ふるさと納税」という方法で、被災地を支援するコトができる、ということを示した一例だった。
では「ふるさと納税」の何が、問題なのだろうか?
一つは、所沢市のように「返礼品」という問題だろう。
以前から問題となっている「商品券」のように、換金性の高い商品やその自治体とは関係のない「返礼品」は、自治体にとって、大きな負担となりやすい。
地元に「特産品」があれば話は別だが、都市部になればなるほど「特産品」と呼べるモノは、限られてくる。
まして「商品券」のように、市中に普通にあるモノとなれば、相応の額面でなくては納付者側は納得しない(かもしれない)。
これでは、地域振興のために創設された「ふるさと納税」の趣旨から反する、ということになる。
もう一つあるとすれば、今まで地方税として納付されていた税収が、自治体によっては見込めなくなる、という点だ。
ご存じの方も多いと思うのだが、「ふるさと納税」をした場合、自分が住んでいる自治体への納付額が減額される。
上述したように「返礼品」欲しさに、いろいろな自治体に「ふるさと納税」をしている住民がいると、住んでいる自治体への納付額は減額されるため、自分の住んでいる自治体そのものが税収不足に陥る可能性が出てくる、というわけだ。
所沢市のような大都市圏のベットタウンとして大きくなってきた自治体にとっては、大きな打撃となってしまう。
なぜなら、ベットタウンとして大きくなってきた自治体は、住民税が税収の主な柱となっているからだ。
そのように考えると、都市部に集中する人口により、地方の自治体は税収は少なく、社会保障費が膨大になる、という点を是正する意味で、「ふるさと納税」そのものの趣旨は良いが、すべての自治体が実施する必要もないし、納付額そのものの上限を決める、ということも必要かもしれない。
何より「返礼品」が、地域活性化につながるようなモノでなければ、意味がないという気がする。
その視点で考えると、所沢市の決断に続く自治体はあると思うのだ。