日々是マーケティング

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ヤマダ電機の大量閉店で見えてくること

2015-05-24 19:40:57 | ビジネス

これまで積極的な店舗展開で、売上を伸ばし続けてきたヤマダ電機が40を超す店舗の閉店を、発表した。
中日新聞:名古屋や郡上など46店舗閉鎖へ ヤマダ電機、増税影響

閉鎖予定の店舗を見てみると、都市部郊外の店舗という印象がある。
特に関東での閉店予定の店舗の印象から、そのようなイメージを持ってしまうのかもしれない。
記事にあるように、このような店舗では中国人観光客の「爆買い」の対象となるような店舗ではないだろう、というのはある程度想像がつく。
実際、名古屋での閉店予定となっている店舗は、観光客が行くにはロケーションが悪く、住民の人口増加も余り見込める地域ではない。そのような立地の店舗を早々と撤退させ、収益が見込まれる場所に集約したほうが、様々な意味でメリットがあると思う。その意味では、今回の撤退の判断は、将来を見据えたものだったと思う。

もちろん、他にも「地域内での競争」ということもあると思う。
「何もヤマダ電機でなくては、家電を購入することができない」というわけではないと思うし、実際家電量販店は過当競争という感がある。生き残りをかけ、地方の家電量販店が集まり一つの量販店になった「エディオン」のような例もある。ヤマダ電機のセールスポイントである「ポイント制」を逆手にとって「ポイント制のデメリット(使い勝手の悪さ?)」をセールスポイントにしている「ケーズデンキ」などがあるからだ。
そこに、「ジャパネットたかた」のような通販まで、加わると生活者の選択肢はずいぶんあるということになる。

ただこの記事で気になった点が、「大型テレビの売れ行きが悪い」ということを、撤退理由で上げている点だ。
確かに中国人観光客が「爆買い」する家電製品には、大型テレビは入っていない。
そもそも今家電量販店が力を入れている「4Kテレビ」は、中国に持ち帰っても視聴できないのでは?
それだけではなく、おそらく中国国内で生産されるテレビで十分、ということもあるのでは?
そこには、日本の家電メーカーの思惑のズレのようなところも大きいとは思うのだが、そのような商品に力を入れるよりも、売れる商品を中心にラインナップを構成したほうが、遥かに収益は上がるだろう。
とすれば、今後ヤマダ電機の店舗で起きてくることは、地域の事情に合わせた収益性の高い商品ラインナップ、ということだと思う。

そうなると、当然落ちこぼれる商品があり、そのような商品を中心に「昔ながらの町の電気屋さん」のような「ニッチ家電店」が、ヤマダ電機の店舗閉鎖後に注目されるようになるかもしれない。
ただそのためには、電気店が在庫を持つのではなく家電メーカーと協力した「在庫管理」とセールケア(修理や取り付け工事など)が必要かもしれない。もしかしたら、この「町の電気屋さん」復活が、今の家電メーカーを元気にさせる要素が含まれているようにも感じている。