日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

医療費と薬剤の輸入

2013-10-28 17:57:21 | アラカルト

「がん」という病気になって、それまで知らなかったコトを知る機会が増えた。
専門医などによる市民公開講座などへ、出席するようになった、と言うのが大きな理由だ。

このところ話題になっているTPPの問題の中に、医療の分野がある。
いわゆる「混合診療」の問題なのだが、この問題が話題になるとセットのように「外資系生保の為」というようなことが言われる。
外資系生保と言った場合、多くはアメリカの生保のことを指すのだが、その代表格であるアフラックなどに関して言えば、既に本国アメリカの保険料収入よりも日本からの保険収入のほうが多い、と言われて久しい。
アメリカの生保=多くは「がん保険」に関して言えば、日本という市場無しでは経営が考えられない程の市場規模を既に日本でもっている、と言うコトなのだ。

そう考えると、TPPで問題になる「医療分野」というのは別の問題があるのでは?と言う気がしてくる。
それは何か?と言うと、「新薬」と言う気がする。
何故なら、薬価が高い抗がん剤や分子標的薬などは、海外からの輸入がほとんどで、いわゆる「輸入超過」という状況が続いている。
日経新聞:医薬品の輸入超過 11年2.4兆円 10年連続拡大(2012年8月21日掲載)

現在の「輸入超過」の状況で、TPPが実施されれば「海外で承認されているのだから」、と言う理由で今の薬価よりも高い価格で輸入し易くなるのでは?と言う気がしたからだ。

残念なコトに、欧米人に効果的であっても、日本人には強い副作用が発現するばかりで、欧米と同じ効果が認められ無い、と言う可能性もあるのが今の新薬にはある。
それが肺がんの分子標的薬「イレッサ」で、問題となった点だ。
「イレッサ」は、肺腺がんのアジア系・非喫煙者・女性に対して効果が高いのだが、それ以外の人にとっては副作用が強く、効果は余り期待できない、と言うコトが発売以降に判り、社会的問題となった。
この様なリスクが、TPPによって再びクローズアップされてくる可能性もあるのでは?と言う気が、先日あるセミナーを受けていて感じたのだった。

それだけではなく、日本の場合医療分野における基礎研究は世界第4位でありながら、新薬の開発となると25位と中国や韓国よりも下位にあるのが現実だ。
もし、基礎研究ほどではないにせよ、ある程度の上位であれば「医療費の削減」というメリットもあるはずなのだ。

「新薬」と言う分野は、それこそ「グローバル市場」だと言える。
国が、成長分野の一つとして位置づけても良いはずの実力はあるはずなのに、それができない理由もふくめ、これからの医療は経済という視点でも戦略的に考える必要がある・・・と言うコトも感じたのだった。