はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part155 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第54譜

2020年04月11日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第54譜 指始図≫ 7六歩まで

指し手  ▲7七歩


    [名なしじゃ困るでしょ]

 アリスはちょっとのま、だまって考えていたけれど、また不意にしゃべりだしてね。
「じゃあやっぱり、ほんとにそうなっちゃったんだ!なら、あたしだれなの?思い出せるものなら思い出してみたいわ。ぜったい思い出してみせるから!」でもそう決心したところで、あまり足しにはならない。四苦八苦したすえに、ただこういったきりだ。「リだ、リではじまるんだ!」
 そこへちょうど、子ジカが一ぴき、ふらりとあらわれてね。大きなやさしい眼でアリスを見つめたけれど、べつだんおびえるけはいもない。
   (中略)
「きみ、なんて名前?」やっと子ジカがいいだした。とろけるようなやさしい声だ。
「それがわかればねえ!」アリスはおなかの中で思って、しょんぼり悲しげに、「ないのよ、いまのところ」
「もういっぺん、考えてごらんよ。名なしじゃ困るでしょ」
  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)


 プリシラは、まつげのかげから、じっとアンナを見上げました。そして、小さな小さな声でいいました。「あなたの、ひみつの、な・ま・え!」
 それ以上はなんにもききませんでした。プリシラは、あっというまに、スキップをしながらむこうへ行ってしまいました。それからの一時間ほどの間に、アンナは、五、六回、プリシラが静かなこうふんを胸にひめている顔つきで、じっとこっちを見ているのに気がつきました。それは、まるであるひみつをいだいていて、それをアンナと分け合う時の来るのを幸せな気持ちで待っている、とでもいうような顔つきでした。でも、二人が会話をする機会はありませんでした。
   (『思い出のマーニー』 ジョーン・ロビンソン作 松野正子訳 より)


 魔法の鏡の門を通って反対側に出たとたん、アトレーユは自分自身のこと、これまでの生涯、これからの目標や意図などについての一切の記憶をなくしてしまっていた。ここへ導かれてくることになった大いなる探索のことはもちろん、自分の名前すら忘れてしまっていた。アトレーユは生まれたばかりの子どものようになっていた。
 (『はてしない物語(Die unendliche Geschichte)』 ミヒャエル・エンデ著 佐藤真理子訳 )


 メドラがなおも突っ立ったままでいると、「モモをごらんなさいよ。よく熟れてるから。」とモエサシはうながした。「さあ、今すぐ食べなきゃ。」
 「もしもわたしが名まえを、わたしの真(まこと)の名まえをあかしたら・・・・・・。」
 「わたしもあかす。」モエサシは言った。「そうしないと始まらないと言うのなら。」
 ふたりは、だが、モモを食べることから始めた。
 ふたりとも内気だった。モエサシの手をとったメドラの手はふるえていたし、手をとられてもモエサシは、真(まこと)の名をエレハルといったが、かたい表情をして、そっぽを向いてしまった。それでもそのあと彼女はそっとメドラの手にふれた。メドラがモエサシのつややかな黒髪をなでたときには、モエサシはひたすらそれを我慢して耐えているように見えたので、メドラは途中で手をひっこめた。
  (『ゲド戦記Ⅵ 外伝 カワウソ』 アーシュラ・K・ル・グイン著 清水真砂子訳 より)




<第54譜 「吉祥図」と名付けよう>


≪最終一番勝負 第54譜 指始図≫ 7六歩まで

 ここから実戦は「7七歩、同歩成」と進むのだが、するとその図はこの≪指始図≫の2手前の図に戻っている。

7七と図
 つまりこの図になる。
 そしてここからまた「7八歩、7六歩」と進めば、今回の≪指始図≫に戻ってしまう。これが繰り返されると「千日手」である。
 
 この「千日手の周回軌道(ループ)」から抜け出さないと、先手に「勝ち」はない。
 我々――先手番をもつ終盤探検隊――の望みは「勝ち」なのだ。

 仮に千日手になった場合、この「最終一番勝負」の「初形図」に戻すことになる。

最終一番勝負初形図
 つまりこの図だ。ここからもう一度やり直すことになる。
 しかしこの勝負の「千日手」のルールで、この図を「先後を入れ替えて指し直し」であるから、我々はこの「後手番」を持たねばならない。
 我々終盤探検隊は、すでにこの図が「先手良し」であることをわかっていた。≪亜空間戦争≫の長い長い闘いの経験を重ねて、それがもうはっきりわかってきたのだった。
 だから、「千日手指し直し」になるということは、「不利になる」ということと同じことだということを知っていた。
 そういうわけだから、終盤探検隊は、なんとしても「千日手」は避けなければいけないのだ。

 するとこの「千日手ループ」のうちのどこかで、我々(先手)は手を代えなければいけない。
 代える箇所は2つしかない。

7七と図(再掲) =「吉祥A図」
 一つはこの図である。

 我々はこの図に「名前」をつけることにした。「勝ち」への道が開かれることを祈願して「吉祥図」と名付けよう。
 名前を付けるということは大事なことなのだ! 人が最大限の力を発揮するための知恵である。
 この図が、「吉祥A図」だ。

7六歩図 =「吉祥B図」
 そして、もう一つのこの図が、「吉祥B図」。

 「吉祥A図」または「吉祥B図」、どちらかを攻略して、「先手の勝ち」への道を進みたい。それが我々のめざすところだ。


吉祥A図
 まずは「吉祥A図」について調べ尽くしてしまおう。この図に関して、これまでにわかっていることは、次のことである。
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 互角(形勢不明)

 今回は、さらに【6】2六香および、【7】2六飛を調べていく。

 戦闘中、我々は▲9七玉を指した時から、「千日手ループ」に入ることはわかっていた。
 それはしかし、「かならず打開手順が存在する」と信じていたからである。
 実戦中、我々が期待をかけていたのが、【4】2五香、【6】2六香、【7】2六飛の、2筋を攻略をねらう手であった。


[調査研究 【6】2六香]

2六香図
 【6】2六香(図)と打って、「2三」を狙う。
 このまま先手の手番なら、2五飛、3一桂、3七桂(次に5二角成が詰めろ)、6二金、8四馬(2三飛成以下詰めろ)で先手勝ちというのが、先手の“勝ちの構図”である(3一桂に代えて2四桂には5五飛)

 実際は後手の手番。
 ここでまず考えられるのは、〔一〕7五桂である。これで先手に金を受けに使わせることができる。
 しかし桂をここで使うと、桂をもう受けに使うことができないので、7五桂を打つ手を保留して他の手を選ぶのもある。候補手は、〔二〕6二金〔三〕3一桂〔四〕7四銀〔五〕6六銀 である。

 すでに研究済みの「6七と図」での〔桃〕2六香(次の図)との違いがあるかどうかというところが、興味のあるところである。
参考2六香図a
 この「参考2六香図a」は、第40譜での研究調査で、「先手良し」と結果が出ているわけだが、今回のテーマの「2六香図」ではどうなるか。どこに“違い”が出るか。


変化2六香図01(7五桂図)
 〔一〕7五桂(図)には、9八金と受けるしかない(次の図)

変化2六香図02
 この図は、すでに研究した図(参考2六香図aから7五桂、9七玉、7七との変化)に完全に合流している。その結果は先手良しである。
 その手順を再確認しておこう。

 ここで後手は受けないと、先手2五飛で負けてしまう。といっても、桂馬を7五に使ってしまっているので、受ける駒がないのである。
 ということで、ここでは 6二金 とする。6二金 に2五飛なら、3一玉で後手良しになる。
 6二金 に対しては、3三歩成が好手となる。

変化2六香図03
 この3三歩成(図)があるので、先手良しになる。
 3三歩成を同玉は、8四馬、同銀、3五飛があるし、同銀は5一竜、4二銀右に、2五飛で後手玉は寄っている。
 なので3三同桂だが、この時に先手が「2五」に香を打っていると、3三同桂が香取りになって、その場合は後手良しになってしまう。
 つまりこの3三歩成以下の変化は、「2六香」と打った場合にのみ有効なのである。
 3三同桂に、3四歩と打つ。以下、4五桂には、5二歩(次の図)

変化2六香図04
 これで後手に適当な受けがない。5二同歩は、8四馬、同銀に、3三金、同銀、3二角成以下後手玉“詰み”
 放置すれば2五飛、3一玉、5一歩成で、先手勝ち。
 3一玉には、1一飛がある。以下2二玉には、8四馬、1一玉、7五馬、6八飛(詰めろ)、9五歩、2二玉、3五桂で、先手勝勢。
 6一歩と受けても、5一歩成、同銀、8四馬、同歩、3三金で、後手玉“詰み”

 なお、先手の3四歩(桂取り)に対しては、後手5四銀が粘りのある受けになるが、6三歩で先手良しになる。

変化2六香図05
 6二金 に代えて、2四歩(図)という受けもある。これなら2五飛と打てないし、2四同香は、2三歩、同香成、同玉、2五飛、2四歩、5五飛となり、この展開は、後手に分のある戦いになる。
 2四歩 には、3七桂が良い。これは次に5二角成(同歩なら2四香、2三歩、同香成以下詰み)がある。
 対して6二金とその狙いを避ける手が考えられるが、やはりここでも3三歩成がある。以下、同桂、3四歩、2五桂、3三歩成、同玉、3五歩で先手良し。
 なので、後手は3一銀と工夫してみた(次の図)

変化2六香図06
 ここで5二角成と攻めるのは、同歩、2四香、2三歩、同香成、同玉、3一竜と進むと、8七と、同金、同桂成、同玉、7六角以下、先手玉が詰んで、先手負けになる。これが後手3一銀(図)の狙いだ。
 よって、ここは7八歩が先手の正着手となる。以下7六歩に、5二角成、同歩、2四香、2三歩、同香成、同玉、3一竜。
 これなら、後手に「7六歩」と歩を打たせた効果で、先ほどの8七で清算して7六角という詰み筋がなくなっているというわけだ。
 7九角には、8八銀(次の図)

変化2六香図07
 後手玉は2二飛以下の“詰めろ”になっており、先手玉は詰まないので、先手勝ち。

 以上の通り、後手〔一〕7五桂 以下は、「先手の勝ち筋」に入る。


2六香図(再掲)
 というわけで、テーマ図の「2六香図」まで戻って、後手〔一〕7五桂 以外の手でどうなるかを考える必要がある。
 有力手は、〔二〕6二金〔三〕3一桂〔四〕7四銀〔五〕6六銀

変化2六香図08(6二金図)
 〔二〕6二金(図)
 桂馬を温存して、6二金と、先手の2五飛に備えた場合。ここで2五飛と打つと、3一玉で、角を取られてしまうので、先手が負けになる。
 〔二〕6二金 には、3三歩成が良い。同銀は5一竜だし、同玉は3五飛、3四桂、4五金で、“寄り”
 なので3三同桂(次の図)

変化2六香図09
 ここで3四歩は、3一玉でうまくいかない。1一飛に、2一桂がある(桂馬を後手が温存したことがここで生きてくる)
 3四金と打つのも、3一玉、1一飛に、2一桂がある。以下8四馬(同歩なら2一飛成以下後手玉詰み)があるが、4一玉、8五馬、7四歩、2一飛成、5二玉で、後手良しだ。「5二」に逃げ込まれてしまう。
 この図では、7八歩が正解手になる(次の図)

変化2六香図10
 7八歩(図)と打って、これを 同と7六と なら、今度は3四歩や3四金で先手が勝てる。3四歩に、3一玉なら、1一飛、2一桂、同飛成、同玉、2三香成で、先手勝ちだ。
 よって、7八歩には、7六歩。そこで3四金と打つ(次の図)

変化2六香図11
 「7八歩、7六歩、3四金」と進めたわけだが、単に3四金と打つのと何が違うのか。
 3四金(図)に、3一玉、1一飛、2一桂、8四馬(次の図)

変化2六香図12
 8四馬(図)と金を取って、この瞬間、後手玉に2一飛成以下“詰めろ”が掛かった。よって後手は4一玉だが、8五馬、6三歩、2一飛成、5二玉、9五歩(次の図)

変化2六香図13
 これで先手良し。9五歩(図)で、後手の7九角に9六玉と逃げる道をつくった。
 この図で、もしも「7八歩、7六歩」が入っていなかったら、7八角があるので9五歩としても先手は逃げられなかった、というわけである。これが「7八歩の効果」であった。

変化2六香図14
 7八歩に対し、3一玉(図)ならどうなるか。
 これは、以下1一飛、2一桂に、同飛成、同玉、7七歩とする(次の図)

変化2六香図15
 これで、先手良し。後手は飛車だけでは攻め切れない。
 次に先手2三香成があるので、3一玉とするが、5二金(次の図)

変化2六香図16
 先手勝勢である。


変化2六香図17(3一桂図)
 〔三〕3一桂(図)と、2三を先受けする手にはどう攻略していくか。

変化2六香図18
 これには、1五歩(図)として、1筋から攻めて行くのがわかりやすい。後手が桂馬を受けに使った分、先手玉への攻めは緩くなっている。
 後手の攻めは6六銀くらいだが、先手は1四歩と攻めていく。以下、1四同歩、1三歩。
 これを同香なら1二歩だ。同玉は3二角成で後手“受けなし”になる。
 よって後手は1三同桂と応じるが、先手は1四香。7五銀(次に7六銀や7六とが狙い)に、1三香成、同香、2五桂(次の図)

変化2六香図19
 1三桂成以下の“詰めろ”。 先手勝勢。
 1筋を攻めて、3一桂と受けた手を“一手パス”のような手にできた。


変化2六香図20
 〔四〕7四銀(図)は次に7五銀や7五金という進出を狙っている。
 しかし、ここはすでに先手が良い局面になっているようだ。
 先手の勝ち方はいろいろあるが、我々が「勝ちやすい」と判断した手は、ここで7八歩とする手だ。これを同となら2五飛以下、7六となら5二角成ではっきり先手良しに傾く。
 よって後手は7六歩。この「7八歩、7六歩」を入れておくことで、ここから2五飛、3一桂、5五飛と進んだ時、(後手が「7六」に歩を打っているので)そこから7五銀~7六銀のような攻め筋が消えているのが先手にとっての大きなメリットになっているのである。

 「7八歩、7六歩、2五飛」と進んで、後手は「2三」を受ける必要があるが、3一桂、1一桂、2四桂のうちの3択になる。そのうち、もっとも頑張れる手は1一桂なので、これを見ていこう。
 先手は、5五飛と銀を取る(次の図)

変化2六香図21
 ここで先手の手番なら、3三歩成で先手勝勢となる。3三同銀なら5二角成、3三同桂でも5二角成で、この角を取ると後手玉が詰んでしまう。
 考えられる後手の候補手は、3一銀と、6三銀

 3一銀 には、8九金と受けておくのが好手になる。これで角を切って攻めることもできるようになった。なので、そこで後手4二金なら、8四馬、同歩、7四角成でよい。
 3一銀、8九金に、後手の攻め手は9五歩くらいだが、その手には、3三歩成(次の図)

変化2六香図22
 3三歩成(図)が決め手。
 同歩なら、2五飛、3二銀、5二角成で、先手勝勢。
 同玉は、5二角成、同歩、3一竜。8九金を打ってあるので、角を切れる。
 そして3三同桂には、3四歩と打って、先手が勝てる。

変化2六香図23
 6三銀(図)場合。この手は後手は3一玉からの角取りを狙っており、ここで先手3七桂なら3一玉で後手ペースとなる。
 6三銀 には、8五歩がベストの手となる。この歩を突くのは、主に2つの意味があって、一つは9三馬を活用できるようにすること。もう一つの意味は、8六に空間をつくって角を後手に渡して7九角と打たれても逃げられるようにしたことである。
 8五歩、7四金に、2三香成とし、同桂に、2五飛と展開する。次に2四金があるので、後手は2四歩とするが、6六馬と王手をして、4四歩に、2四飛で、次の図となる。

変化2六香図24
 これで、先手優勢。
 8五金には8六歩でよいし、8四歩なら3七桂としてこの手が2三飛成、同玉、1五桂以下の“詰めろ”になっている。
 3一玉なら、2三飛成、4一玉、2一竜、3一香、3三桂である(次の図)

変化2六香図25
 以下3三同銀、同歩成となって、先手勝ち。7九角には8六玉と逃げられる。

 以上の通り、〔四〕7四銀 では「7八歩、7六歩、2五飛」から5五の銀を取る手が有効になって先手良しとわかった。
 後手は次の〔五〕6六銀 のほうが希望を持てそうだ(次の図)


変化2六香図26
  〔五〕6六銀(図)には、2三香成、同玉、2六飛が目に映るが、以下2五歩、6六飛、7五桂、9八金、9五歩と進んでみると、後手良しになる(7五桂に9八銀には7六桂)

  〔五〕6六銀 には、「7八歩、7六歩、2五飛」と指すのが良い。
 7八歩に対し、同となら、「2三香成、同玉、2六飛」で今度ははっきり先手が勝ちやすくなるし、7八歩に7六となら、5二角成、7五桂、8八金、5二歩、2三香成、同玉、2一竜以下、後手玉“寄り”である。
 よって、「7八歩、7六歩」と進み、そこで―――(次の図)

変化2六香図27
 2五飛(図)と打つのである。「7八歩、7六歩」を入れておくのが大事なところで、その理由は手順を追えば明らかになる。
 さて、先手2五飛に対し、後手の受けは、3一桂1一桂2四桂 の3通りがある。
  順に見ていこう。まず 3一桂 には、3七桂とする(次の図)

変化2六香図28
 これで先手優勢が確定する。
 次に8四馬で金を入手すれば、2三飛成、同桂、同香成、同玉、3五桂(1五桂)以下の詰めろになっており、これを防ぐには5四銀だが、この場合には5二角成があって、これを同歩と取るとやはり2三飛成以下の詰みがある。そして、この先手の攻めよりも速い攻めが後手にない。
 つまり3七桂(図)としたとき、もう後手は“受けなし”なのである。


変化2六香図29
 1一桂(図)の場合は、3七桂には3一銀という手があって、これは険しい道になる。
 それよりもこの場合、わかりやすい勝ち方がある。8五歩である。
 8五歩は、同金と取れない。取ると6六馬(銀を取って王手)があるからだ。
 なので、後手は7五金とするが、これを同馬と取り、以下同銀、同飛で、“二枚替え”である(次の図)

変化2六香図30
 このときに、先に「7八歩、7六歩」の手交換を入れておいた効果が出る。それがなかったらこの図で、7九角、8六玉に、“7六と”の手があって、後手良しになっていたところなのである。
 この場合は、その“7六と”の手がないので、この図は逆に「先手良し」の図となっている。
 ここで 6二金7八と とが候補手になる。

 6二金 は7三の銀取りを防ぎながら、先手の5二角成の切りも消した手。
 これには7七歩とする。以下7九角には、8六玉とかわす。
 そこで6八角成なら8八銀、7八馬、7九金と受け、以下同馬、同銀、3一玉には6三角打と角を繋いで先手良し。
 8六玉に、5七角成(飛車取り)には、3三金で攻めていく手がある(次の図)

変化2六香図31
 3三同桂、同歩成、同銀(同玉なら2五桂、2二玉、3三歩)、5一竜、3一金、7三飛成、同金、3二角成(次の図)

変化2六香図32
 後手玉は“詰み”。 3二同玉に、4一銀、同金、2一銀以下。

変化2六香図33
 戻って、7五飛に、7八と(図)と攻め合った場合。以下7三飛成、7七歩成、5二角成、7六と、3三銀(次の図)

変化2六香図34
 3三同桂、同歩成、同玉に、4二馬がある。同玉なら5一竜以下詰み。
 4二同銀には、4四銀(次の図)

変化2六香図35
 4四同玉に、6四竜以下、後手玉“詰み”

変化2六香図36
 2五飛に、2四桂(図)と受けた場合。
 この 2四桂 にも、同じく8五歩で良い。以下7五金、同馬、同飛、6二金に、この場合は3三歩成とする(次の図)

変化2六香図37
 3三同桂(図)に、2四香があるのだ。これを同歩なら、2三銀、同玉、1五桂から後手玉が“詰み”だ。
 よって、後手は7九角と打ち、8六玉に、2四角成。
 しかしそこで1一銀が継続手(次の図)

変化2六香図38
 1一同銀は3二角成で先手勝ちなので、3一玉だが、それには5二角成とする手が有効となる。以下同金に、2二金、4一玉、7三飛成が“詰めろ”で、先手勝勢。

変化2六香図26(再掲 6六銀図)
 〔五〕6六銀(図)には、「7八歩、7六歩、2五飛」で、先手が勝てる―――これが結論となる。


参考2六香図a(再掲)
 さてこれは上にも掲げたが、「7七と図=吉祥A図」の2手前、「6七と図」からの〔桃〕2六香の図である。
 ここから、後手6六銀(7六歩、7八歩、6六銀も同じ)には、9七玉とするのだが―――(次の図)

参考2六香図b
 そしてここで後手「7七と」なら、いま研究調査した図に合流する。今示してきたとおり「先手良し」である。
 ところが、この場合は後手に「7七銀成」があって、以下2五飛に2四桂の変化は「後手有望」となるのだった。その局面で、先手に良い手がない。8五歩は、同金、同飛、8四銀で、後手良しなのである。
 それが「7七と型」の場合は、6六の銀が浮いているということがネックになって先手良しとなる(7七とに、7八歩、7六歩、2五飛、2四桂、8五歩、同金には、6六馬があるため)

 つまり「6七と図」から「9七玉、7七と」と実戦は進んだが、そう進めることによって、先手は、先手がより勝ちやすい型へと誘導したことになるのである

 なお、この「参考2六香図b」からの「7七銀成」には、2三香成、同玉、1一飛という手があって、この変化を選べば、それでも「先手良し」になることがわかっている(そしてこの攻めは「7七と型」に対しても有効)

 (「6七と図」からの〔桃〕2六香についての研究調査は、第40譜第41譜で行っている)


2六香図(再掲)

 結論。 【6】2六香 と打ったこの図は、先手良し。





[調査研究 【7】2六飛]

2六飛図
 次は 【7】2六飛(図)の調査研究。

 まずここで <A>7五桂 と打つ手が考えられる。後手が攻めるならこの手だ。


変化2六飛図01(7五桂図)
 <A>7五桂(図)には、9八金と受ける(8九香はほぼ互角だが難解な先手にとって厳しい変化になる)
 そう進むと、すでに“研究済み”の局面に合流する。

参考2六飛図
 この参考図は、すでに研究済みの「6七と図」からの〔柏〕2六飛の図で、ここから後手が7五桂と桂と打って、以下9七玉、7七と、9八金と進めば、同じ図に合流である。(その研究内容は第38譜にある)

変化2六飛図02
 “研究済み”のこの図の結論は「先手良し」だが、ここから先の勝ち筋の発見はそう簡単ではない。再確認しておこう。

 ここで後手の有力手段は2つある。一つは、8七と(8七桂成) から清算して、そこで得た金を3五金と打つ手である。
 (もう一つは 6二金。これについては後述する)

変化2六飛図03
 後手が3五金と打って、先手が打った「2六飛」が捕まってしまった。“感覚的”には、これで先手不利に思われるが、実はそこで5二角成(図)として、厳密に調査すると「先手良し」とわかったのだった。5二同歩なら3三桂と打つ。2六金なら6三馬とする。
 まず、このこと(3五金に対する5二角成)を発見しなければいけない。

変化2六飛図04
 6二金(図)の場合も難しい。
 以下6三歩、7六桂、8九香、8五歩、7四銀と進むと、後手良し。
 しかし、6三歩、7六桂に、7九歩と受けるのが好手で、先手が指せる(次の図)

変化2六飛図05
 この7九歩(図)が発見の難しい、受けの好手。この歩が先手玉の受けに絶妙に利いており、角を持たれたときの7九角を消し、そして先手は香を攻めに使える。この図はギリギリ先手の勝ちになっているのであった。
 この7九歩は、“戦後研究”で発見した手で、こういう手を実戦で発見して指すのは難しいように思う。
 しかしたしかに、最善を尽くせば、「先手良し」なのは事実である。

2六飛図(再掲)
 <A>7五桂 は先手良しだ。
 ―――だとすれば、後手はこの図で他の手を選ぶしかない。
 その候補手は、<B>6二金<C>3一桂<D>1一桂<E>3一銀
 これらの手は、まだ未調査の変化になる。
 いずれも“受けの手”なのだが、なにもしないで先手の2五香を打たれては後手負けなので(たとえば9五歩なら2五香、9六歩、9八玉で、先手勝勢になる)、それに備えた手が必要となるわけである。

変化2六飛図06(6二金図)
 <B>6二金(図)。
 この手の意味は、先手の2五香の攻めを先受けしたということ。2五香なら3一玉で後手勝ちになる。
 6二金には、3三香で先手が勝てる(次の図)

変化2六飛図07
 3三香(図)という香車の使い方がある(我々終盤探検隊は実戦中この攻め筋が見えていなかった)
 以下3三同桂、同歩成、同玉に、3七桂、5四銀、4五歩(次の図)

変化2六飛図08
 これで、先手勝勢。
 放置して攻めてくれば(たとえば9五歩なら)、8四馬とすれば後手玉に“詰めろ”が掛かる。
 図では、4五同銀が考えられるが、それには3五金と打って、次に4五桂を狙えばよい。

変化2六飛図09(3一桂図)
 <C>3一桂(図)は、先手の2五香をあらかじめ受けた手。
 しかしそれでも、2五香と打っていく。次に2三香成、同桂、2四金となれば、後手に受けがない。
 なので後手は6二金とするしかない。これなら、2三香成~2四金は、3一玉で先手負け。後手としては、先手に2五香と香を使わせたので、上で出てきた“3三香”の手をなくしたという見方ができる。
 ここでの6二金には、3三歩成が正解手である。
 同銀は、5一竜、4二銀右、5五竜となって、先手優勢。
 したがって3三同桂とするが、それには8四馬。同銀(同歩)なら、2三香成、同桂、2一金以下、後手玉“詰み”。なので、8四馬以下、2五桂、5七馬が予想される展開(次の図)

変化2六飛図10
 次に2五飛と桂を取る手が、3四桂以下の“詰めろ”になる。
 それがわかっていても、ここで後手に有効な手がない。2四香には3六飛、3三銀、3四歩、4二銀右、5一竜。
 この図は、先手勝勢である。

変化2六飛図11(1一桂図)
 <D>1一桂(図)。
 この手に対して、同じように2五香と打って、6二金、3三歩成、同桂、8四馬と行くのは、そこで3一玉とされて、今度は先手が苦しい展開になる。これが後手が「1一」に桂馬を打った効果である。

 <D>1一桂 には、3七桂が良さそうだ。この手は、次に4五桂を狙っている。
 後手は3一銀と受ける。4五桂なら、6二銀左と引いて、次に4二金とすれば角を捕獲できるという狙いだ。その展開は先手まずい。

変化2六飛図12
 3一銀には、1五歩(図)がよい。後手からの速い攻めがないので、1筋を攻める。
 ここで後手7六桂なら、7八歩がピッタリの受けになる。
 よって後手は7四銀(7五銀~7六銀の活用)くらいしかない。
 先手は1四歩からの攻めを開始する。
 以下1四同歩、1三歩、同香(同桂なら5二角成、同歩、3三金以下詰み)、1二歩、同玉、3三歩成、同桂(同歩には2五香)、1八香打(次の図)

変化2六飛図13
 これで先手が勝てる。
 図以下、2二銀に、1四香、同香、1三歩、同銀、1四香、同銀、3二角成の要領である。

変化2六飛図14(3一銀図)
 <E>3一銀(図)には、2五香と打つ。以下1一桂に、どう攻めるか。
 やはりここでも1五歩とこの歩を突く。後手に1一桂を受けさせることで後手からの速い攻めはなくなっている(7五桂がない)
 すでに2五香と打っているこのケースでは、先手の狙いとしては2三香成、同桂、2四金の攻めがある。しかしすぐにそれを決行すると、1一玉、2三金、2二歩と受けられて、うまくいかない(これが後手3一銀の狙いの一つ)
 そこで1五歩なのである。1筋と2筋を組み合わせて攻める(次の図)

変化2六飛図15
 ここで後手はどうするか。候補手としては、4二金 と、5六銀 がある。 
 4二金 は、以下6三角成、6二銀右、4五馬と進むが―――(次の図)

変化2六飛図16
 4五馬(図)が絶好の位置で、4四銀としても、2三香成、同桂、同飛成、同玉、3三歩成以下、後手玉“詰み”
 この図は、すでに先手勝勢になっている。

変化2六飛図17
 5六銀(図)は、6七銀不成から7八銀不成(7六銀成)のような活用をみた手。しかしこの手は遅い。
 1四歩から攻めて、先手の攻めのほうが早い。1四歩、同歩、1三歩(次の図)

変化2六飛図18
 1三同香は、2三香成、同桂、2四金で後手“受けなし”。今度は「1二」に空間があるので1一玉には、1二歩、同玉、2三金、1一玉、2四桂で先手勝ちになるという仕組みだ。
 1三同桂には、5二角成。同歩なら、2三香成、同桂、2一金、同玉、2三飛成以下後手玉“詰み”
 よって5二角成に後手4二銀引と頑張る。それには、1四香(次の図)

変化2六飛図19
 1四香(図)は、次に1三香成以下の“詰めろ”。 先手勝ち。

変化2六飛図20(6一歩図)
 <F>6一歩(図)という手もある。これを同竜と取ると、7五桂、9八金、6二金で、これは後手ペースの戦いになる。
 この<F>6一歩 にも、2五香と打つのが良い。以下1一桂に、3七桂。
 次に5二角成、同歩に、2三香成、同桂、同飛成、同玉、3五桂から詰む筋がある。それを受けて6二金としても、8四馬で金が取れるので、やはり同じ詰み筋がある。
 この詰み筋を消す手は3一銀しかなさそう(次の図)

変化2六飛図21
 3一銀として「4二」に空間をつくったことで、先手の5二角成、同歩のあとの2三香成以下の“詰み筋”は消えている(3三から4二へと逃げられる)
 ここでも、1五歩が有効手となる。
 そこで後手の手番。後手は、9五歩、同歩、「7六と」
 そこで2三香成、同桂、2四金がここでは成立する。1五歩とこの歩を延ばしているから。
 以下1一玉に、3三歩成。これを同歩なら2三金で寄りなので、3三同桂と取るが、そこで1四歩が決め手である(次の図)

変化2六飛図22
 後手の攻めは9五金だが、それよりも先手の攻めが早い。先手勝ち。

変化2六飛図23
 いまの手順の途中、9五歩、同歩の次、後手が「9六歩、同玉、9四歩」(図)とした場合。
 この場合は、香車を後手に渡すと先手玉が詰んでしまうので、2三香成の攻めはできない。
 ここは9四同歩と取って、7六とに、8五歩とする。
 後手陣を攻めるのではなく、“入玉”に方針を変更するのだ。
 以下、7五金、8三馬、7四銀、8四馬(次の図)

変化2六飛図24
 ここで8六とが気になるところだが、それは同飛、同金、同玉、8九飛、9五玉、9九飛成、9六金で、先手玉の安全が確定する。
 この図では、6六銀が粘りのある手になる。以下9五玉、8六と、9三歩成、8五と、9四玉、8四と、同玉となって、馬を取られてしまうが、“入玉”はほぼ確定し、先手優勢である。


2六飛図(再掲)
 以上の調査により、【7】2六飛 と打って、先手良しと確定した。

 この【7】2六飛 と飛車を打つ手は、7五桂からの攻めに対する対応が難しかった。そして6二金に対する3三香も、我々は実戦の中ではまだ見つけていなかった。我々の相棒の「激指」が示さなかったからである。
 つまりこの【7】2六飛 は、「先手勝ち筋」は確かにあるのだが、その道筋の発見は容易ではないのであった。


 今回の調査研究のまとめは、こうなる。

吉祥A図
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 互角(形勢不明)
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し


 これで3つの、「先手勝ち筋」が発見できたことになる。
 (ただしこれは“戦後”での研究においてのことだが)
 しかし、実戦で「【7】2六飛で先手勝てる」と読み切るのはなかなかにむずかしい。発見の難しい手を含んでいるから。
 【6】2六香なら、先手が勝ちやすそうだ。ただしこれも変化は多い。


 とにかく、まずはこの「吉祥A図」を(戦後研究において)完全攻略してしまうつもりである。
 もっと良い手が見つかるかもしれない。





≪最終一番勝負 第54譜 指了図≫

 指始図から先手(終盤探検隊)は、▲7七歩 と指した。



第55譜につづく
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