はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part156 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第55譜

2020年08月12日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第55譜 指始図≫ 7七歩まで

 指し手  △7七同歩成


[でもずいぶん得なこともあるのよ。記憶が前後両方にはたらくの]

 「おう、おう、おう!」女王さまはわめきながら、ちぎれんばかりに手をふりまわしてね。「指から血がでてる!おう、おう、おうおう!」
 その金切声といったら、まるで蒸気機関車の汽笛そっくりで、アリスもおもわず両手で耳をおおったほどだ。
 「どうしたっていうの。指でもさしたの?」やっと声がききとれるようになって、アリスはさっそくたずねた。
 「まだ刺さっちゃいないの――でも、もうじき――おう、おう!」と女王さま。
 「いつ刺さるわけ?」アリスはききながら、いまにもふきだしそうだ。
 「ショールをとめなおすときよ」きのどくに女王さまはうめき声で、「ブローチがもうじき外れるわ、おう、おう!」いってるそばからブローチのピンがパチンとはずれて、女王さまは手あらくそれをひっつかみ、とめなおしにかかった。
 「気をつけて!」とアリス。「それじゃまがってる!」そういってブローチをつかもうとしたけれど、あとのまつり、ピンはすべって、女王さまは指をさしてしまったのだ。
 「ほら、ちゃんと血が出たでしょ」女王さまはにっこり、「この土地の順序がこれでわかったでしょう」
 「でも、どうして今度はわめかないの」
 「だってもう十分わめいといたもの。いまさら繰り返してなんになる?」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 鏡の国の住人である「白の女王さま」の頭の中では、記憶は未来と過去と両方向に働いているという話。



<第55譜 吉祥A図を攻略せよ>


≪最終一番勝負 第55譜 指始図≫ 7七歩まで
 
 亜空間戦争最終一番勝負は図のようになった。ここから△7七同歩成と進んで―――


≪最終一番勝負 第55譜 指了図≫ 7七同歩成まで

 こうなった。これは4手前と同一局面である。
 あと2回、これを繰り返せば「千日手」になるが―――

 戦いの中、「あるいは失敗したかな…」とも思っていた。千日手になるとしたら、明らかに失敗である。
 打開手順がありそうなのだがーーーでも、発見できていなかった。


第56譜につづく




 我々は今、この図に「吉祥A図」と名前をつけて、研究している(ただし、これは“戦後研究”である)
 今では、この図からの打開手順は発見できている。

吉祥A図
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 互角(形勢不明)
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し

 この「吉祥A図」は、このとおり、「先手良し」になる道がいくつかあることがわかってきている。
 ここまできたら、この図を完全に調べ尽くしてしまいたいと思う。
 
 これから調査するのは【8】2五飛である。


[調査研究 【8】2五飛

2五飛図
 【8】2五飛(図)は有力な手で、この「吉祥A図」で最も勝ちやすい手は、実はこの手なのかもしれない。
 ここで考えられる後手の手は次のとおり。
  〔ア〕7五桂
  〔イ〕6六銀
  〔ウ〕9五歩
  〔エ〕6二金
  〔オ〕4四銀引

 このうち、〔ア〕7五桂(図)および〔イ〕6六銀については、「2手前の6七と図で2五飛」とした場合の研究ですでに結論の出ている変化になる。結論はどちらも「先手良し」。
 まずは簡単にそのおもな変化を示しておこう。
  
研究2五飛図01
 〔ア〕7五桂(図)には、9八金と、金で受けるのが急所である。これを8九香と香で受けると、逆に後手良しになってしまうのだ。

研究2五飛図02
 9八金(図)と受けたところ。なぜ金で受けるかというと、「香」を攻めに使いたいからである。ここで後手6六銀なら、2六香で先手勝ちになる。後手は桂馬を7五に使っているので受ける駒がない。なので8七と、同金、同桂成、同玉、2四金と受けるしかないが、2四同飛、同歩、1五桂で、先手勝ちが確定する。
 したがって、図の9八金に対しては6二金とする。これなら、2六香には3一玉で、これは後手勝ち。
 では、6二金に、先手はどうするか。5五飛(銀を取る)では、やはり3一玉で後手良し。

研究2五飛図03
 6二金に、3三香(図)が正解手となる。この手が指したいために、9八金と金で受けておくのだ。これで先手良し。
 以下、3三同桂、同歩成。これを同銀と同玉があるが、同銀は5一竜で先手良し。
 3三同玉には、5五飛と銀を補充しておいて先手が良い(この時のために「2五」に飛車を打ったともいえる)
 以下は変化の一例。後手9五歩がきびしい攻めだが、2五桂、4四玉(代えて2二玉には7五飛)、5九飛、5四銀、4六銀(次の図) 

研究2五飛図04
 4六銀(図)で、先手勝勢である(後手9六歩には、同角成があるので大丈夫)

研究2五飛図05
 【8】2五飛 に、〔イ〕6六銀(図)の場合。
 ここではいろいろな有望手があって、実戦ならかなり迷うところ。たとえば2六香、あるいは7八歩や5二角成(同歩なら3三金で後手玉詰み)も考えてみたいところ。
 しかし、はっきり先手良しになるのは、3三香だ(次の図)

研究2五飛図06
 3三同桂、同歩成、同銀と進むと、8四馬と金を取った手が、2一金以下後手玉への“詰めろ”で、先手勝勢。(3三同桂、同歩成、同玉も、8四馬が3四歩以下の詰めろになる)
 よって3三香(図)には、3一銀と受けるしかなさそう(次の図)

研究2五飛図07
 しかしそれも、8四馬が有効になる。8四同銀に、3二角成、同銀、同香成、同玉、3三銀、同桂、同歩成、同玉、3四歩、同玉、4六桂(次の図)

研究2五飛図08
 後手玉“詰み”。 3三香の一手で、鮮やかに攻めが決まっていた。

研究2五飛図09
 〔ウ〕9五歩(図)は「端玉には端歩」で、理にかなった攻めである。
 この手には、5二角成がある。これを同歩なら、3三金以下後手玉“詰み”である。よって、取れない。
 以下7五桂には、8九香と受ける(次の図)

研究2五飛図10
 8九香(図)と受けたので、持駒は減ったが、それでも5二歩なら、3三金、同銀、同歩成、同玉、3四歩、同玉、3五金、3三玉、2三飛成、同玉、2一竜以下の“詰み”
 次に先手3三歩成、同桂、5五飛となれば先手勝勢が確定する。といって6六銀は3三歩成、同桂に7五飛がある。なので、ここは後手4四銀引が最善と思われる。以下4一馬、7六歩、9八金(次の図)

研究2五飛図11
 9八金(図)と受けておく。これで後手からの攻めは止まった。6九金なら、8五歩で先手勝勢になる。
 よって後手は8七とと無理をして攻めることになる。これには同金がわかりやすい。以下同桂成、同玉に、3五金という手があるが、5四桂で―――(次の図)

研究2五飛図12
 先手勝勢である。桂馬が入ったので、5四桂(図)が生じた。

研究2五飛図13
 【8】2五飛 に、〔エ〕6二金(図)
 放っておくと先手5二角成の手があったので、〔エ〕6二金とするのは当然考えられる応手である。
 これには、3三香がここでも炸裂する。4二の銀が動くと5一竜が生じるので、この手が有効になりやすい状況なのである。
 以下、3三同桂、同歩成、同銀(同玉は8四馬、同銀に、3四歩以下詰み)、5一竜、3一香、4五桂(次の図)

研究2五飛図14
 4四銀引としても、3二角成、同玉、3三桂成、同銀、2一銀以下“詰み”
 先手勝勢である。

研究2五飛図15
 〔オ〕4四銀引(図)と銀を受けに使うのはどうか。これなら、先手の狙いの5二角成と3三香を両方防いでいる。
 これには、7八歩とする(次の図)

研究2五飛図16
 7八同となら、8五歩とし、同金に、5七馬で先手良し(以下8四銀には2四香が決め手になる)
 なので後手は〈a〉7六とか〈b〉7六歩の2択。
 まず〈a〉7六と。この手には、3七桂(次の図)

研究2五飛図17
 この3七桂(図)のねらいは、5二角成である。同歩なら、2三飛成、同玉、2四金以下の“詰み”がある。
 よって後手は 3一銀 と受ける。これには先手2六香。
 以下1一桂(代えて2四桂には1五金がある)の受けに、5二角成、同歩、8四馬と攻める。金を二枚入手して、2三飛成以下の“詰めろ”になっている(「7八歩、7六と」の手交換が入ったので、先手は角を渡して攻められるようになっている)
 後手はこれを取れず、7九角と打ってくる。これは9八玉とかわす。7九角は2四に利かせた攻防手だった。後手は2四歩(次の図)

研究2五飛図18
 2四同飛、同角成、同香、2三歩、同香成、同桂、7三馬(3一竜以下詰めろ)、4二銀引、2四金(次の図)

研究2五飛図19
 2四金(図)と打って、2三金以下の“詰めろ”をかけた。
 以下9七香、同玉、8七飛、9八玉、3七飛成が想定手順だが、8八金、7五桂、8九香としっかり受けておけば、後手の攻めは続かない。
 その後、先手は6四馬と桂馬を取って1五桂と打つのが後手玉への早い攻めになる。先手はっきり優勢である。

研究2五飛図20
 3一銀 では先手良しになったので、代えて6二金(図)としてみる。
 先手は2六香と打つ。
 対して1一桂は8四馬、同銀に、2三飛成以下後手玉“詰み”。2四桂は5二歩、同金、7七歩、同と、8五歩という手順で先手良し。
 それでは2六香に、後手3一玉とするのはどうか。以下5二角成(次の図)

研究2五飛図21
 5二角成(図)はカラ成だ。以下5二同金、2三飛成、4一玉、2一竜、3一桂、3三桂(次の図)

研究2五飛図22
 先手勝ちになった。この変化も「7八歩、7六と」の手交換があるので、先手は角を渡して攻めることに成功している。

研究2五飛図23
 戻って、7八歩に、後手〈b〉7六歩(図)の場合。この場合は後手に角を渡せない。「7六歩」を後手に打たせたことを利用する指し方を選ぶことになる。
 8五歩がその手だ。7四金なら、9四馬として、8六玉~9五玉の“入玉”をねらう(後手は7六ととできないのが「7六歩」を打たせた効果)
 8五歩には、同金とする(同飛なら8四銀で後手良し)
 そこで5七馬とするのが有効手(次の図)

研究2五飛図24
 5七馬(図)には、次に2四香(同歩、同馬となれば後手“受けなし”)のねらいがある。
 後手は7五桂とするが、先手は8八歩と受ける。さらに後手9五歩が9六金以下先手玉への“詰めろ”である。

研究2五飛図25
 しかし、5二角成(図)というピッタリの手があった。この手が“詰めろ逃れの詰めろ”で、先手が勝ちになっている。

 以上の研究調査から、次の結論がはっきりした。

2五飛図(再掲)

 【8】2五飛 は先手良し。



 さらに、次のことを調査したい。これは“再調査”になる。

[調査研究 【5】5四歩

5四歩図

 【5】5四歩 には4つの応手がある。
 [A]7五桂[B]5四同銀[C]4四銀上[D]6二銀左、この4つ。

 このうち、[A]7五桂第37譜 で解説した変化と合流し「先手良し」の結論が出ている。
 そして [B]5四同銀 は3七飛で、[C]4四銀上 には7八歩、7六歩、8九香でこれも「先手良し」と 第53譜 で解説している。

 問題は、[D]6二銀左(次の図)の手であった。

研究5四歩図01(6二銀左図)
 第53譜では、[D]6二銀左(図)に対する攻略がはっきりしないので、「形勢不明」として検討を打ち切ったのであった。
 あらためてこの図を調査研究して、今度は結論が出たので、以下その報告をする。

 ここではまず、7八歩とする(次の図)

研究5四歩図02
 7八歩(図)に、同となら、2五香、3一桂、2六飛で先手良し。
 また7六となら、5二角成、同歩、4一飛、3一角、3七桂で、これも先手良し。
 よって、後手は7八歩に、7六歩とする。

 そこで2五香と打つ(次の図)

研究5四歩図03(2五香図)
 2五香(図)が有力な手だ(2五に打ったのは、あとで2六飛と打つ含みを持たせるため。ただし3七飛や8一飛など飛車の別の使い方も視野に入れている)
 ここで後手の手番だが、有力な手は〔カ〕7五桂、〔キ〕3一桂、〔ク〕1一桂、〔ケ〕3一銀である(最有力手は〔ケ〕3一銀で、前回調査時点ではこの手が攻略できていなかった)
 この順に、調べた結果を以下に示す。

研究5四歩図04(7五桂図)
 〔カ〕7五桂(図)は当然考えられる攻めである。これには9八金と受ける。
 受けに駒を使わせて、後手は6三銀(次の図)

研究5四歩図05
 対して先手2六飛なら、3一玉から角を取りに行って、これは後手優勢になる。6三銀は3一玉を可能とした手だったわけだ。
 3一玉を許しては先手まずいので、2三香成、同玉、2五飛と攻めて行く。以下、2四歩、5五飛、7四銀直、3七桂と進む(次の図)

研究5四歩図06
 後手の7四銀直は、先手の7五飛からの“二枚替え”を警戒した手だったが、3七桂(図)として、ここでも次に7五飛を狙っている。9五歩なら7五飛、同銀、1五桂と打つつもりだ。1四歩とそれを防いでも、3五に桂を打てる。
 なので後手は7八ととする。これなら、7五飛と飛車を切ってくれば、あとで後手の6七飛打ちが厳しい手になる。
 先手は3五飛(次の図)

研究5四歩図07
 次に4五桂が先手のねらいで、その手は3三歩成、同桂、3四銀、2二玉、3二角成以下、“詰めろ”になっているので、7七歩成では後手攻め合い負け。 
 また後手9五歩なら、同歩と取っておく。以下、9六歩、同玉、9四歩なら、8四馬で、先手良し。

 後手4四歩と桂跳ねを防ぐ手の変化を見ていこう。先手は3三銀と打ちこむ。以下、同桂、同歩成、同銀、1五桂、2二玉、3四歩(次の図)

研究5四歩図08
 「3四歩、4二銀、8四馬」が正確な勝ちへの手順で、これを単に8四馬とすると、後手玉が“詰めろになっていない”ので、8九銀で後手勝ちになる(2三金には1一玉で逃れている)
 3四歩、4二銀、8四馬、8九銀には、2三桂成(次の図)

研究5四歩図09
 「3四歩、4二銀」を入れておけば、2三桂成(図)で後手玉は“詰み” 2三同玉に、3三金だ。

 以上の研究調査により、〔カ〕7五桂以下は「先手良し」となる。

研究5四歩図10(3一桂図)
 〔キ〕3一桂(図)には、2六飛と打って、先手が良い。
 次に2三香成、同桂、2四金で後手玉は“受けなし”になるので、後手は6三銀とする。こうしておけば、2三香成、同桂、2四金には、3一玉、5二角成、同銀で、角が取れるので、これは後手勝ち。
 6三銀には、3三歩成とする。同桂なら、8四馬、同銀に、2一金以下詰み。3三同玉には4五金で先手勝勢。
 なので後手は3三同銀。以下5三歩成、同金、5一竜(次の図)

研究5四歩図11
 2三香成、同桂、3二角成、同玉、3一金以下の“詰めろ”
 1四歩とすればその詰めろは消えるが、3四歩(同銀なら4二竜)で先手勝ちは揺るがない。

 〔キ〕3一桂は、2六飛で「先手良し」。

研究5四歩図12(1一桂図)
 〔ク〕1一桂(図)の場合は、2六飛と打つと、「形勢不明」の変化となる。
 1一桂、2六飛に、3一銀があるからだ。以下2三香成、同桂、2四金は、2五歩、同飛、1一玉で、難解な形勢である。
 〔ク〕1一桂に対しては、「3七桂」の手が良い(次の図)

研究5四歩図13
 「3七桂」(図)と力を溜めて、たとえば9五歩、同歩、9四歩なら、5二角成、同歩、3三金以下、後手玉は詰んでいる。
 「3七桂」に、後手(e)6六銀 は4五桂で先手良し。
 また、(f)7八と はそこで2六飛と打ってこれも先手良し(金を渡しても先手玉が詰まない形なので3一銀に2三香成~2四金が有効になる)
 後手の有力手としては、(g)3一銀(h)4四銀 とが考えられる。

 (g)3一銀 に4五桂は、4二金で後手良し。これが(g)3一銀 の狙いだ。
 ここは、5二角成(4二金とかわされる前に切っておく)、同歩、8九金として、次の図となる。

研究5四歩図14
 8九金(図)は後手の7九角を防いだ手だが、こう受けておいて、この図は先手が少し良いようだ。
 以下一例は、9五歩、4一飛、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、4二角、4五桂(次の図)

研究5四歩図15
 4四銀、3三桂成、同銀、同歩成、同玉、3五金、2二玉、4四歩、同歩、7七歩、同歩成、4三歩(次の図)

研究5四歩図16
 先手勝ち。

研究5四歩図17
 「3七桂」に、(h)4四銀(図)の変化。
 これには3三歩成、同銀上、5二角成(やはり4二金とされる前に切っておく)、同歩、8九金(次の図)

研究5四歩図18
 こうなってみると、後手の打った「1一桂」がほとんど働いていないとわかるだろう。
 以下想定される手順は、4二銀(4一飛に5一銀右を用意した)、4一竜、5一銀右、6三飛(次の図)

研究5四歩図19
 この6三飛は、6四飛成と桂馬を取って、3四桂、3三玉、2三香成、同桂、4二竜、同銀、2二銀、3四玉、2五金までの“詰み”を狙っている。
 よって、後手は3四角と打ってその筋を防ぐ。以下7三飛成、7八と、7一竜(次の図)

研究5四歩図20
 3一銀以下の“詰めろ”。 先手勝勢である。

 〔ク〕1一桂も「先手良し」。

 ここまではしかし、前回の調査の時点でも(発表はしていないが)わかっていた。
 わからなかったのは、次の手である。

研究5四歩図21(3一銀図)
 〔ケ〕3一銀(図)。 この後の変化がわからなかったので、「形勢不明」としたのであった。
 ここで2六飛では、形勢がわからない。
 今回、新たに発掘した道は、「5三歩成、同銀、7七歩、同歩成、3七飛」という道である。

研究5四歩図22
 この順を発見したので、これで先手が勝てるのではないかと思えてきた。
 3七飛と打って、このまま後手が放置すれば――たとえば7六歩なら、2三香成、同玉、3三金として、寄せることができる。
 といって、1一桂は、7七飛で先手良しだし、4二金と受けるのも、6三角成で先手が良い。
 ここは7五桂が後手の最善手のようだ。以下、7七飛、7六歩、4七飛(次の図)

研究5四歩図23
 4七飛では、3七飛としたいところだが、それは4六銀とされたときに悩ましい。
 4七飛(図)として、次に5二角成、同歩、2三香成、同玉、4三飛成を狙い筋にする。4四歩(銀上)とそれを防いでも、5二角成、同歩、2三香成、同玉、3一竜で先手優勢だ。
 なので後手は5六銀で先手を取る。以下3七飛、4二金、6三角成、6二銀右、3六馬、6六歩、7八歩、6七歩成、8五歩、同金、8六金(次の図)

研究5四歩図24
 後手は5六銀から6六歩~6七歩成で攻めをつないできた。先手は8五歩、同金、8六金(図)で、上部脱出をはかる。
 これで先手優勢のようだ。もう少し続けてみよう。
 7七歩成、同歩、同と、同飛、6七桂成(取られそうな桂馬をさばいた)、7二飛成、8四歩、8五金、同歩、8七歩(次の図)

研究5四歩図25
 7六歩、7八歩、7七歩成、同歩、7六歩、同歩。
 後手としてはそこで6五銀と銀を使いたいが、すぐ6五銀は4五馬が先手にとっての絶好手で後手負けが決まってしまう。
 なのでここで後手は4四歩。次に6五銀とする意味だ。
 以下9四馬、6五銀、8五馬(次の図)

研究5四歩図26
 先手玉の“入玉”を後手は防げそうにない。先手勝勢である。


5四歩図
 【5】5四歩 は先手良し、と結論が出た。



吉祥A図
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し

 「吉祥A図」の解明はここまですすんだ。有望な候補手はまだある。
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