アブラハム・パイスの著書から。
〔 私はお昼にはいつもサンドウィッチを食べていた。食欲旺盛だったので、三切れを食していた。これが次のディラックとの会話につながる。私の返事と彼の次の質問との間に、ぜひ三十秒ほど間をおいていただきたい。
ディラック いつも昼にサンドウィッチを食べているの?
パイス はい。
デ いつも昼にサンドウィッチを三切れ食べているの?
パ はい。
デ いつも昼に同じ種類のサンドウィッチを三切れ食べているの?
パ いいえ、その日の気分によります。
デ 何か決まった順序で食べているの?
パ いいえ。 〕
アブラハム・パイスは、オランダ・アムステルダム生まれの物理学者。ユダヤ人であり、アンネ・フランクと同じように戦争中は“隠れ家”で過ごした。アンネと違って、彼は生き延びた。戦争が終わってパイスはアメリカに渡り、オッペンハイマーが所長を務めアインシュタインもいるプリンストン研究所で働いた。 そこには時々、イギリスからポール・ディラックもやってきていた。
さて、上の会話から数年後のことである。 プリンストンにて、再びアブラハム・パイスはディラックと昼食を共にし始めた。その頃パイスの食欲はいささか落ちて、サンドウィッチは二切れになっていた。二人が再び昼食を一緒に食べ始めた初日、ディラックはパイスの皿を見てこう言ったのである。
「君は今じゃ、昼には二切れしか食べていないんだ。」
ポール・ディラックの顔は、勝ち誇ったようだった。
この話にはまだ続きがある。さらに数年後、一人の青年がイギリスのケンブリッジ(ディラックはここに住んでいた)からプリンストン研究所にやってきて、メッセージをもってパイスを訪れた。彼のもってきたメッセージは、こういうものだった。
「ディラック教授がくれぐれもよろしくとのことで、あなたが今でも昼にはサンドウィッチを食べているのか知りたがっています。」
さて、僕はこの文を書きつつ、こう思っていた。
「“食欲旺盛で三切れ”って…。 このサンドウィッチ、どんな大きさなのか? ああ、知りたい…!」
〔 私はお昼にはいつもサンドウィッチを食べていた。食欲旺盛だったので、三切れを食していた。これが次のディラックとの会話につながる。私の返事と彼の次の質問との間に、ぜひ三十秒ほど間をおいていただきたい。
ディラック いつも昼にサンドウィッチを食べているの?
パイス はい。
デ いつも昼にサンドウィッチを三切れ食べているの?
パ はい。
デ いつも昼に同じ種類のサンドウィッチを三切れ食べているの?
パ いいえ、その日の気分によります。
デ 何か決まった順序で食べているの?
パ いいえ。 〕
アブラハム・パイスは、オランダ・アムステルダム生まれの物理学者。ユダヤ人であり、アンネ・フランクと同じように戦争中は“隠れ家”で過ごした。アンネと違って、彼は生き延びた。戦争が終わってパイスはアメリカに渡り、オッペンハイマーが所長を務めアインシュタインもいるプリンストン研究所で働いた。 そこには時々、イギリスからポール・ディラックもやってきていた。
さて、上の会話から数年後のことである。 プリンストンにて、再びアブラハム・パイスはディラックと昼食を共にし始めた。その頃パイスの食欲はいささか落ちて、サンドウィッチは二切れになっていた。二人が再び昼食を一緒に食べ始めた初日、ディラックはパイスの皿を見てこう言ったのである。
「君は今じゃ、昼には二切れしか食べていないんだ。」
ポール・ディラックの顔は、勝ち誇ったようだった。
この話にはまだ続きがある。さらに数年後、一人の青年がイギリスのケンブリッジ(ディラックはここに住んでいた)からプリンストン研究所にやってきて、メッセージをもってパイスを訪れた。彼のもってきたメッセージは、こういうものだった。
「ディラック教授がくれぐれもよろしくとのことで、あなたが今でも昼にはサンドウィッチを食べているのか知りたがっています。」
さて、僕はこの文を書きつつ、こう思っていた。
「“食欲旺盛で三切れ”って…。 このサンドウィッチ、どんな大きさなのか? ああ、知りたい…!」