中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

『アメリカン・ギャングスター』の驚き

2008年02月19日 | 映画
 今日の世界史レッスンはお休みです⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/02/post_0870.html#more

 パソコンにへばりついていたので、久しぶりに映画を見に行ってきました。リドリー・スコット『アメリカン・ギャングスター』。残酷描写をもう少し抑えてほしかったなあ、と思うけれど、なかなか良かった。実話!です。

 ベトナム戦争真っ盛りのニューヨークが舞台。ハーレムの黒人やくざが、いかにしてのし上がっていったか、不正を許さない一徹の刑事が、いかにしてそれを摘発するかが、丹念に描かれる。前半もたつくが、2筋の道が交差するあたりからしり上がりに面白くなった。

 まだ黒人差別があからさまで、ベトナム戦でも集中的に黒人が最前線にやられた、と言われていた時代、そしてマフィアといえばイタリア系が幅をきかせていた時代に、黒人が影でここまでのことができたという事実にびっくりした。ほんとに実話なのか、と一瞬疑ってしまった。映画の中でも、捜査官たちが彼を黒幕と突き止めるまでに時間がかかり、確証を得てからも上司にそれを納得させるのが大変だったのも、全てこの人種差別の壁であろう。

 興味深いのは、デンゼル・ワシントン演じるこのやくざの企業家感覚。
 当時、日本産のテレビを量販店が直接メーカーから仕入れて安く売っていることに目をつけ、それを麻薬で行なうことにするのだ。つまり東南アジアで直接、純度の高い麻薬を買い入れ、アメリカ軍のパイロットを買収して密輸し、安価で売りさばいて巨万の富を得る。

 黒人なので疑われにくいところへもってきて、非常に用心深く行動を地味にしたおかげで何年もばれずにすむのだが、たった一度だけ気が緩み・・・
 というところもなかなか人間的だ。

 追う側のラッセル・クロウは、仕事の清潔さと裏腹に私生活はダメ人間。汚い仕事をしながらふだんの生活は一見美しいというデンゼル・ワシントンとの対比も鮮やかだった。

 それにしても軍と警察の腐敗ぶりの物凄さには、うんざりしてしまう。今は大丈夫なんでしょうね、と言いたくなる。

 ☆『怖い絵』、5刷中。
☆☆年始の「週刊現代」で、桜庭一樹さんが書評してくださいました♪

怖い絵
怖い絵
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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


☆マリーもお忘れなく!(ツヴァイク「マリー・アントワネット」(角川文庫、中野京子訳)

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