中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

もうひとりの自分ーードッペルゲンガー

2010年04月20日 | 雑記
 先日、同僚からこんな妙な話を聞きました。

 休日にどこも外出せず、自宅で読書三昧の一日を過ごした。なのに翌日とその翌々日、別々の知り合いからこんなことを言われた、映画館で見かけたけれど声をかけようと思ったら、いつの間にかいなくなったので気になった、とーー

 その映画館は、東京は東京でも場所は違うのだそうです。ただしかかっていた映画は同じ。それも彼女が前から見たいと思っていた映画だった由。

 「ドッペルゲンガーだろうか、自分の生霊だったら(我ながら)怖い」と言うのです。「ちょうどその時間、本を読みながらウトウトしていたので、魂が飛んでいったのかしら・・・」。

 何とも返事のしようがありませんでした。その人たちは、彼女が見たがっていた映画だと知っていたので、それが無意識にあり、単によく似た女性を見間違えただけということもありえます。

 ドッペルゲンガーはドイツ語でDoppelgaenger。
 ドッペルは「ダブル」、ゲンガーは「歩く人」の意。「同一人物なのに、同時に違う場所にあらわれる人」「第二の自我」「生霊」などと訳されます。

 それはそうと、この不思議な話を聞いていて、わたしはふっと思い出しました。たしか高校一年か二年生ころ、電車に乗っていて見知らぬ人から、全然違う名前で呼びかけられたことがあったのです。

 別人だと言ってもしばらく信じてもらえませんでした。あげくの果てに、これほどそっくりな人が世の中にいるとは驚きだ。彼女の名前と電話番号を教えるから、ぜひ連絡をとって会ってみてはどうですか、とまで言われたのです。

 なぜそんなことをいつまでも覚えているかというと、その人の言い方があまりに真剣だったので、ものすごく怖くなったからです。今にしてみるとちょっとおかしいのですが、私はその時、「絶対に自分にそっくりという人に会ってはいけない」と強烈に感じたのです。まるで心の中でアラームが、鋭く鳴り響いたみたいに。それでほとんど逃げるようにして、その人から離れました。

 考えたら、人間の顔のパーツなんてとても少ないのだし、似た人はたくさんいるのですよね。でも。。。やっぱり会わなくて良かった!



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5 コメント

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なにげにイヤ (パセリ)
2010-04-22 08:44:02
 スパへ行ったとき、同じ湯船のなかで、私の顔を見ては、にやにやしている若い女性がいました。
 そのうち話しかけてきて「死んだお母さんにそっくりだ」と言うのです。
 
「死んだ妻にそっくり」とか「死んだ恋人にそっくり」だなんて男性に言われるのはならロマンティックですけれど、なにげにイヤでした。

 ま、女優さんに似てると言われたときは、ちぃともイヤではなかったので、かなり自惚れが強いんですね。
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不思議ですね……。 (YUMIKA)
2010-04-23 14:48:03
自分にはそういう経験はありませんが、なんとも不思議なお話ですね。

ドッペルゲンガーの場合、もう一人の自分と会ってしまうと命を落としてしまうという話もあって、ちょっと不気味……。
自分がそういう話を友人などから聞かされたら怖さもあるけれど、ほんの少しだけ会ってみたくもなりそうです。
「こんにちは」と会うのではなく、物陰から遠巻きに観察したいという感じでですが(笑)。

でも、先生が経験をなさった「ぜひ会ってみては?」とすすめる人のことは、ドッペルゲンガー以前に気味悪いです……。
見ず知らずの方にいきなりそんなことを言われるなんて、危険信号が鳴ってしまいますよね。
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Unknown (パセリさん&YUMIKAさんへ(kyoko))
2010-04-23 19:58:24
パセリさん
 あはは、それは確かにあまり嬉しくないですね!
 女優さんだと「ちいともイヤじゃなかった」にも同感。

YUMIKAさん
 この見ず知らずの人、ものすごく真剣だったのです。ミステリ小説だったら、その後どんな展開になったでしょう??
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Unknown (サボテン)
2010-04-25 11:39:46
前回は、コメントの付け方でご迷惑をおかけしました。
今日の新聞で、愉しみにしていた中野先生の「名画に見る男のファッション」の4回目、「皇帝カール5世と猟犬」が掲載されました。カラーじゃなくてとっても残念です。こういうの、新聞社の方は考えていただきたいなーと思います。
真顔でおかしな格好をしているカール皇帝、今あの世でどんな気持ちで振り返ってるんでしょう。
価値観って、本当にさまざまなんですね。
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Unknown (サボテンさんへ(kyoko))
2010-04-27 09:37:41
 サボテンさんがお読みになっている新聞では、絵は白黒なんですね~残念。地方によってはカラーの新聞もあるんですよ。それぞれ曜日も載せ方も違っているのです。この連載は共同通信から依頼されて書いており、共同通信が各新聞へ配信するという方式なの。
 
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