中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

ムンクの「女吸血鬼」

2008年11月11日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇>」第3回の今日は、「ヴァンパイアもモーツァルトを歌う」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/11/post-dfc0.html#more
 トム・クルーズ主演の「インタビュー・オブ・ヴァンパイア」について書きました。

 吸血鬼映画は数多い。古いところではドイツ無声映画の「ノスフェラトゥ」。ひょろひょろの長身に禿頭、耳が尖って爪も長くて、セクシーさのかけらもない化け物然としているのは、いかがなものか。

 ドラキュラといえばクリストファー・リーということになっているけれど、あいにくわたしは一本も見ていなくて残念。ゲーリー・オールドマンのドラキュラは今ひとつ。

 「ドラキュラ、ニューヨークへ行く」というコメディはちょっと笑えた。大都会にはヴァージンがいないので、ドラキュラが困る、という映画でしたね。

 ポランスキーの「吸血鬼」もブラックな笑いに満ちていました。これはミュージカル「ダンス・ウィズ・ヴァンパイア」となって近年蘇えり、ウィーンで初演(ポランスキー本人が演出)。日本でも上演されたので、わたしも見に行きました。けっこう楽しかった♪

 絵画ではムンクがけっこう吸血鬼を描いています。
 中で「女吸血鬼」がすごく怖い。ふつうヴァンパイアは耳の下あたりの首筋に牙をたてるわけで、それによって愛撫に似たエロスが醸されるのですが、ムンクのは男の首の真後ろにガブリという感じです!男は諦めたのかおとなしくしているのが何とも・・・

 ムンクのように女性にもてまくった男性は、自分が相手のいいようにされている、精気を吸い尽くされている、と被害者気分になるものかもしれないなあ。。。

 話変わって。

 もうだいぶ以前のことですが、わたしはひどい貧血になったことがありました。少しずつ悪化していったので、あまり自覚症状がなくて、でも階段を上がる時ひどい息切れがして、ついに病院へ行くと、「こんなにひどくなるまでどうして」と言われたほどでした。でも鉄剤を飲んで劇的に回復したので、めでたしめでたしなんですけど。

 その自覚症状がなかったとき、なぜか何度も吸血鬼に追われる夢を見ていたのです。意識にはのぼらなくとも、身体が脳へ訴えていたのかと今にして思います。血が足りませんよ、血が足りませんよ、って。夢には耳傾けるべきだな、とつくづく感じています。    


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5 コメント

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貧血 (干しアンズ)
2008-11-12 19:00:50
自覚症状のない貧血の人は多いですね~。
女性の大半は気をつけないと貧血気味になると思います。(かく言う私も経験がありますwwその時は毎日すぐ疲れてやたらと眠かった…)
それでも今の時代は鉄分の薬を飲んで栄養のある物を食べていればあっさり治るからいいですが、江戸時代なんか貧血が酷くなって死んだ人が多いんじゃないでしょうか。
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吸血鬼と夢と言えば (ナジュラスター)
2008-11-14 03:00:03
 「吸血鬼ドラキュラ」は、作者が蟹料理を
食べ過ぎて具合が悪くなった時に見た
怖い夢をもとにして書かれたという話を
昔、何かの本で読んだ記憶があるのですが、
…もしかしたら夢かも(汗)

 お身体の異変を敏感に察知されていたのでしょうね。
 でも、吸血鬼のイメージだなんて流石先生、
と思ってしまいました(笑)

 私も以前、うしろから暴漢に追いかけられ、
全速力で走っているにもかかわらず、
まるで沼地のようにのろのろとしか走れず、ついに
…という夢を毎晩のように見るので、
眠りにつくのが憂鬱になったことがあるのですが…。

 そうか! 車ばかりで足腰が弱ってきたのを
敏感に察知して…(ええっ!?)
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Unknown (干しアンズさん&ナジュラスターさんへ(kyoko))
2008-11-15 10:12:37
干しアンズさん
 確かに昔は貧血も命取りだったようです。しかも治療の大きな部分を瀉血が担っていたので、血が足りない上に抜かれちゃ、たまりませんよね~

ナジュラスターさん
 蟹料理を食べて・・・それはすごく面白い説ですね!今度調べてみます。
 「まるで沼地のようにのろのろとしか走れず」--わたしもみたことがあります。やっぱり疲労が溜まっている時にみました。体調の変化は夢にあらわれますので、お大事にね!
返信する
貧血と献血 (ドイツ娘)
2008-11-16 10:41:08
 ドイツの病院では、手術の前に自己献血をします。万一、大量出血して輸血をしなければならなくなっても、安易に血清剤を使わないためです。
 エイズだの、肝炎だのに汚染されていることが多いですからね。輸血の必要がなければ、そのまま他の人用の献血として回すことができるし。
 (但し、癌などの場合には、自分の血液そのものが癌に汚染されている可能性があるので例外的に自己献血はしませんが。)

 で、私も手術の前に自己献血を500ml程度したら、すぐに精密な血液検査があって、「貧血気味です」とのことで、鉄剤を出されました。
 自覚症状がなかったのに、びっくり。血圧はしょっちゅう測っていて、低血圧用の薬は飲んでいたのですが。

 というわけで、よほど持病があったり、明らかに貧血などの症状がない限り、定期的に献血をすると、逆に血液関係の病気その他が、早期発見されるのではないかと思います。
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 ところで、バンパイアが処女の血しか吸わない、というのは、西洋人の潜在意識が表れているようで、面白いですよね。
 クリムトは、処女と貴婦人、それに売春婦の肌を描き分けられると言っていたらしいけれど、婦人科の検査などしなくとも、肌を見ただけで分かるものなのかしら?

 《魔笛》と同系の題材で対抗した同時代の《ファゴット吹きカスパー》には、悪者に囚われた妖精の娘(パミーナに相当)が、「母の贈り物で、私はどんな暴力も、自分の意思ひとつで撥ね退ける力を授かっています。その力を持ち続ける条件はただ1つ、決して恋をしないことなのです。」という下りがあります。
 こういうのにも、西洋人の処女信仰、逆に言えば、恋を知らない、まだ男を知らない生娘に漂う雰囲気を、敏感に嗅ぎ分ける力のようなものを感じてしまいます。

 (適齢期をとっくに過ぎているはずの私に、いつまでも恋の兆しがあるのは、生娘[=オールドミス?] であることを見抜かれているからなのでは、と思ったりして?)
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Unknown (ドイツ娘さんへ(kyoko))
2008-11-16 12:01:24
 手術されたことがおありだったのですね。今はお元気そうでよかったです。貧血も早めに手当てできてラッキーでしたね。
 貧血が進むと髪の毛が抜けやすくなったり、顔色はひどく悪くなるので、クリムトに見抜かれたかも。。。
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