中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

『孤狼の血』の原作改変

2018年11月13日 | 映画
 『孤狼の血』(柚月裕子)はとても面白かった。こんな美女がこんなヤクザものを書くなんてとびっくり。ラストのサプライズも効いていました。

 読みながらどうしても「仁義なき戦い」を思い出し(作者もこの映画にインスパイアされたようです)、主人公に菅原文太を重ね、この映画を観た時の若き日の滾りが蘇りました(私の前世は荒くれ男かも。。。)

 この映画で広島弁イコールやくざとインプットされてしまい、後に広島へ行って可愛い女子中学生が広島弁をしゃべるのを聞いて「おお!!」と、のけぞったくらいです。

 『孤狼の血』の舞台は広島のお隣、呉市なので、呉弁というのかな(そして呉といえば、自衛隊の潜水艦に乗せてもらったのを思い出します)

 さて、その『孤狼の血』が映画化されると聞いたとき、すごく不安でした。『アウト』(桐野夏生)などもあんな面白い小説がひどい映画になったし、全然期待できないな、と。

 キャストが発表され、役所広司はぴったりと思いましたが、若い刑事が松坂桃李と聞いて、名前から女優と勘違いしてしまいました。時代を現代に変え、相棒を女性刑事にして、最悪の映画を作ろうとしているんだ、と誤解して心の中で涙。絶対に観ないぞと思っていたら。。。若手実力派の男優だったのね(無知を恥じる)。

 しかし忙しさにかまけて映画館へ行く時間がとれず、やっぱりまたDVD鑑賞に。大画面で観たかったと思いました。残酷描写は眼をつぶらずにおれなかったけれど、面白かったです!

 女優と間違えた松坂桃李もすごく上手くて、狼の血を引き継いでこれから役所広司へと大化けしてゆくであろうと期待させられました。

 何より映画的に良かったと思うのは、ラスト(正確にはラスト直前)を変えたというか、付け加えたこと。小説としては完璧なラストでも、映画では復讐というカタルシスがあったほうが観客を宙ぶらりんにさせない。脚本の池上純哉もすばらしい!

 好例としてはアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』。舞台や映画を観た人は、タイトルとは違うラストでも大満足し、ロンドンでのあの大ロングランにつながったのだと思います。

 いずれにせよ、日本映画もまだまだ捨てたものじゃないなと嬉しくなりました。パート2に期待しているところ。


☆☆今後の講演会

・11月14日(水)11時~ ルーベンス展ランチ・イベント アートとグルメの極上の時間」 in 「Turandot 臥龍居」
http://www.tbs.co.jp/rubens2018/ticket/

・12月15日(土)2時~3時半 文藝春秋西館地下ホール
「17世紀オランダ美術とフェルメール」(文春トークライブ「私のフェルメール」3回連続講演の第3回目)
http://www.bunshun.co.jp/info/talklive/index05.html


☆☆月刊「文藝春秋」連載「中野京子の名画が語る西洋史」のオンライン化
http://bunshun.jp/articles/-/4976

☆最新刊「名画の謎 対決篇」(文春文庫)
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☆「美貌のひと」(PHP新書) 7刷になりました🎵
name="amazletlink" target="_blank"> alt="美貌のひと 歴史に名を刻んだ顔 (PHP新書)" style="border: none;" />
 
 クリエイティブディレクター・佐藤可士和氏がご紹介くださいました。

https://iptops.com/news/173106

☆「名画の謎 陰謀の歴史篇」(文春文庫) 2刷になりました🎵
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☆アートギャラリー ヌード~かぐわしき夢」(集英社)
name="amazletlink" target="_blank"> alt="ART GALLERY テーマで見る世界の名画 5 ヌード かぐわしき夢 (ART GALLERYテーマで見る世界の名画 5)" style="border: none;" />

☆「別冊NHK100分de名著 読書の学校 中野京子 特別授業 『シンデレラ』 (教養・文化シリーズ) 2刷になりました🎵  「ジュニアエラ」で紹介しました→https://dot.asahi.com/dot/2018011700013.html?page=1

name="amazletlink" target="_blank"> alt="別冊NHK100分de名著 読書の学校 中野京子 特別授業 『シンデレラ』 (教養・文化シリーズ)" style="border:
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☆「名画で読み解く イギリス王家12の物語」(光文社新書)5刷になりました🎵
  name="amazletlink" target="_blank"> alt="名画で読み解く イギリス王家12の物語 (光文社新書)" style="border: none;" />

☆『怖い絵のひみつ』(KADOKAWA) 4刷になりました🎵
name="amazletlink" target="_blank"> alt="怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック" style="border: none;" />


☆『中野京子と読み解く運命の絵」(文藝春秋) 2刷になりました🎵
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☆「新 怖い絵」(角川書店) 10刷になりました🎵
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☆「名画と読むイエス・キリストの物語」(文春文庫)2刷になりました🎵

時代小説作家の千野隆司氏がHPで紹介してくださいました♪

http://blog.livedoor.jp/chino17jidai/archives/52067341.html#comments

☆「美術品でたどる マリー・アントワネットの生涯」(NHK新書)
美術品でたどる マリー・アントワネットの生涯 (NHK出版新書 497)

☆「名画の謎 旧約・新約聖書篇」(文春文庫)3刷になりました🎵

名画の謎 旧約・新約聖書篇 (文春文庫 な)
  『弐代目 青い日記帳』さんがさっそく紹介してくださいました♪ 3月6日のページです。
http://bluediary2.jugem.jp/


☆「残酷な王と悲しみの王妃 2」(集英社)

残酷な王と悲しみの王妃2
担当者さんが紹介してくれました♪


http://renzaburo.jp/shinkan_list/temaemiso/151023_book01.html


☆『「絶筆」で人間を読む - 画家は最後に何を描いたか』(NHK出版新書)
 4刷になりました♪

「絶筆」で人間を読む―画家は最後に何を描いたか (NHK出版新書 469)

☆「中野京子と読み解く 名画の謎 対決篇」(文藝春秋)3刷になりました🎵
<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163903089/hanatumuhiton-22/ref=nosim/" name="amazletlink" target="_blank">中野京子と読み解く 名画の謎 対決篇
「青い日記帳」さんが紹介してくださいました。素敵な紹介で嬉しいです♪
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=4050

☆文藝春秋WEBサイトでは、短いですけどわたしのインタビュー記事も載りました。お読みくださいね!→http://hon.bunshun.jp/articles/-/3935


☆「名画の謎 ギリシャ神話篇」(文春文庫) 3刷になりました🎵

名画の謎 ギリシャ神話篇 (文春文庫)


☆「愛と裏切りの作曲家たち 」(光文社知恵の森文庫)

愛と裏切りの作曲家たち


☆「マンガ西洋美術史03」(美術出版)

マンガ西洋美術史03 「市民社会」を描いた画家」 ブリューゲル、フェルメール、ホガース、ミレー、ゴッホ



☆「マンガ西洋美術史02」(美術出版社)
マンガ西洋美術史02「宗教・神話」を描いた画家  ボッティチェリ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ティツィアーノ、エル・グレコ、ルーベンス


☆「危険な世界史 運命の女篇」(角川文庫) 7刷になりました。

危険な世界史 運命の女篇 (角川文庫)

☆「マンガ西洋美術史01」監修(美術出版社)
マンガ西洋美術史01 「宮廷」を描いた画家 ベラスケス、ヴァン・ダイク、ゴヤ、ダヴィッド、ヴィジェ=ルブラン


☆「ヴァレンヌ逃亡」(文春文庫)
ヴァレンヌ逃亡 マリー・アントワネット 運命の24時間 (文春文庫 な 58-2)


☆「名画で読み解く ロマノフ家12の物語」(光文社新書)6刷になりました♪

名画で読み解く ロマノフ家 12の物語 (光文社新書)   

☆「印象派のすべて」(宝島社別冊ムック)
印象派のすべて (別冊宝島 2200)

☆「名画に見る 男のファッション」(角川書店)
名画に見る男のファッション (単行本)

☆「橋をめぐる物語」(河出書房)
中野京子が語る 橋をめぐる物語

☆「中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇」(文藝春秋) 3刷になりました♪
中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇

☆「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社文庫)4刷になりました♪
残酷な王と悲しみの王妃 (集英社文庫)

☆「怖い絵」(角川文庫) 単行本に新しく書き下ろし2作を加え、全22作品です。15刷になりました🎵 怖い絵  (角川文庫)

☆「はじめてのルーヴル」(集英社)2刷になりました🎵 はじめてのルーヴル (集英社文芸単行本)

☆「名画の謎 旧約・新約聖書篇」(文藝春秋) 5刷になりました🎵
中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇

☆「怖い絵 死と乙女篇」(角川文庫) 12刷になりました🎵 怖い絵  死と乙女篇 (角川文庫)

☆最新刊「名画と読む/イエス・キリストの物語」(大和書房) 3刷になりました🎵
名画と読むイエス・キリストの物語

☆「危険な世界史 運命の女篇」(角川書店) 2刷になりました🎵
危険な世界史 運命の女篇

☆「危険な世界史 血族結婚篇」(角川文庫)14刷になりました🎵
危険な世界史 血族結婚篇 (角川文庫)

☆「怖い絵 泣く女篇」(角川文庫)~「怖い絵2」の文庫化~ 18刷になりました🎵
怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

☆『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(文藝春秋) 7刷になりました🎵
中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇


☆「印象派で「近代」を読む ~光のモネからゴッホの闇へ~」(NHK新書)7刷になりました♪
印象派で「近代」を読む―光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書 350)

☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 16刷になりました🎵
「怖い絵」で人間を読む 生活人新書


☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」10刷になりました♪
名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書)

☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書) 24刷になりました🎵 名画で読み解く ロマノフ家 12の物語 (光文社新書)

☆「芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)
芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)

☆「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫) 3刷になりました🎵 おとなのための「オペラ」入門 (講談社+α文庫)

☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版。 4刷になりました。
歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

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☆以下の単行本は絶版としました。文庫本をお求めくださいまし~

☆「怖い絵」16刷中。怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。 怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。 怖い絵3















































 
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5 コメント

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「怖い絵のひみつ」を読んで (ダ・ヴィンチもどき)
2018-11-15 15:10:50
読みました。印象に一番残ったのは、やはりドラローシュの「レディ・ジェーン・グレイの処刑」でした。真っ先に目に入るのは、もちろんグレイですが、赤いタイツの死刑執行人も目に焼き付きました。左ひざをちょっと曲げて、リラックスしてるように見えて、なぜなんだと思い顔に目を移してみて、その表情に愕然としてしまいました。そこには自分の宿命を悲壮なまでに受け止めている、そんな印象を感じました。自分の仕事として・・。ぜひ一度、観てみたいですが、かなり大きい絵らしくて、日本にはもう来ないですかね。かと言って、美術館に行くには先立つものはもう無いしね。年も年だし、まっいいか先生の本の写真で想像をたくましくして観ればね。それからセザンヌの初期のあの絵は、タッチがゴッホかと思ってしまいました、リンゴのセザンヌとはとても思えない。それからもう一つ印象に残った絵があるんですが、長くなるので次回にします。
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Unknown (ダ・ヴィンチもどきさん(kyoko))
2018-11-16 08:35:26
 感想をありがとうございます🎵
 そうなんです。「怖い絵展」でも、皆さんジェーンの大きさにとても驚いていました。頭では何メートルとわかっていても、やはり本物の迫力と相俟ってさらに大きく感じられての驚きだったと思います。「怖い絵展」はいらっしゃることができなかったのですね。残念です。セザンヌもすごくよかったですよ!
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「怖い絵のひみつ」を読んでパート2 (ダ・ヴィンチもどき)
2018-11-18 16:13:12
忘れないうちに続きを。タサエール「不幸な家族(自殺)」生きることのかなわない女性達のやるせなさをつくづくと感じます。後述の先生のお言葉、「彼女たちの死を助長する男たちのつくった文化の仕組みにやるせなさを・・・」に少し男としてショックを感じました。確かに、ヨーロッパなどでは「娼婦街」日本では「遊郭」がありました。はっきり言って、性欲のはけ口として犠牲になった女性が多々ありました。今もあります。やるせない性などと言い逃れは出来ませんね。皇女ソフィアのような強い女性は例外ですか。
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面白かったです! (甲斐)
2018-11-25 23:00:59
孤狼の血、ブログですすめてらしたので読んでみました。いや〜まいりました、面白くて!そしてラストがこりゃまた!
面白い本を教えていただき感謝します!
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Unknown (ダ・ヴィンチもどきさん&甲斐さん)
2018-11-27 14:58:56
ダ・ヴィンチもどきさん
 皇女ソフィアは外見は強そうでも敗れ去りました。ロシアの女傑はなんといってもエカテリーナ二世ですね。「ロマノフ家12の物語」もお時間あったらお読みくださいね♪

甲斐さん
 男っぽいのもお好きで嬉しいです。じゃけん、映画も見て感想聞かせてつかあさい(えへへ)。
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