中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

ショスタコーヴィチ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」

2009年05月05日 | 音楽&美術
 雑誌への登場が今月は重なっています。書店へおいでの時に、思い出してくださいませ。以下です⇒

☆「ダ・ヴィンチ」6月号194ページ
   漫画「鋼の錬金術師」についてインタビューを受けました。

☆「ミセス」6月号165ページ。
   阿修羅像についてのエッセー(向田邦子「阿修羅のごとく」にからめて)。
   たまたま去年、奈良へぷらりと出かけて見てきたばかりでしたが、そのときは真後ろが見えなかったので、なるほどこういうふうになっていたのね、と。

☆「東京人」6月号7ページ
   巻頭エッセー「青い血の人々」。映画「アラトリステ」にからめ、フェリペ4世についてなど書きました。早く暇を見つけて原作も読みたいなあ。

 さて、昨日は、新国でオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(ショスタコーヴィチ)を見てきました(仕事漬けのゴールデンウィーク中、唯一の息抜き♪)

 現代オペラは苦手だし、寝不足だし、居眠り覚悟だったのですが、あまりに凄くて興奮しっぱなし!!

 歌手が粒揃いなのと演奏が分厚くて聴き応えたっぷりの上、演出も良かった。19世紀半ばの設定が1950年代に変えられていたのは少々不満ですが、ヒロインの悲劇は時を超えて普遍なのでやがて気にならなくなりました。

 凄まじいリアリズム。粗野で暴力的で剥き出しで、美もなく、ロマンのかけらすらない。怒涛の音楽の渦の中、ひとりの不運で不幸な女性の転落と地獄が描かれる。

 若い退屈しきった人妻。中年の夫は不能。子どもができないことを舅にいつも責められている。遊び人の雇い人に誘惑され、舅と夫を殺してふたりともシベリア送りにされるのだが、道中、恋人は早くも別の女に言い寄り彼女を裏切る。

 愛が幻影にすぎなかったと思い知らされた彼女の絶望のアリアは、舞台が突然真っ暗になり、檻のような四角いスポットライトの中で歌われる。「森の茂みの奥深くに丸い湖がある」「まるでわたしの良心のようにどす黒く」「風が吹けば大きな波が立つ」と・・・

 それまでの出来事は全てこの一点に、この絶望のアリアに向けて突き進んできたのだ、と思える素晴らしいステファニー・フリーデの熱唱!

 この後彼女は恋仇を道連れにヴォルガ河へ身を投げるのだが、舞台に川が設定されていないので、どんなふうに演出するのだろうと思っていたら、予想外の、実に実に静かなラストが用意されていた。かえって強烈に印象に残った。

 いやあ、大満足。でもぐったり疲れた。まるで壁から天井から、ルーベンスの大作ばかりが飾られている狭い部屋に半日入れられたみたい。おなかがぺこぺこ。


☆今後の講演など

 5月23日(土) JTBカルチャー新宿で、「怖い絵」関連のレクチャー(朝日カルチャーセンターでの講義とは別ヴァージョンです)。⇒ http://jtbculture.com/search/detail.php?seq=3&ge=1&se=

 6月12日(金)は銀座の国際フォーラムで、日本呼吸器学会の基調講演。これはお医者様の学会員のみの参加になります。⇒ http://www.jrs.or.jp/jrs49/convocation.html

☆「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
おとなのための「オペラ」入門 (講談社+アルファ文庫 D 61-1)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。<愛のフェア>本の一冊ですので、帯の写真は松山ケンイチさん♪「女の恋は 激しく、哀しい」がキャッチコピーです。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫 な 50-1)


☆最新刊「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)、6刷になりました♪

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)


☆最新刊「危険な世界史」(角川書店)
毎日新聞での紹介⇒ http://mainichi.jp/enta/book/shinkan/news/20080903ddm015070149000c.html

危険な世界史

☆「怖い絵2」、5刷中。
月刊誌『美術の窓』最新号で紹介されました。ごらんください。

怖い絵2


☆『怖い絵』、11刷になりました。ありがとうございます♪ 「ほぼ日」での紹介。再録⇒ http://www.1101.com/editor/2007-11-13.html

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ミュージカル『エリザベート... | トップ | THEハプスブルク展 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ショスタコ (フィルギア)
2009-05-09 22:29:59
ご無沙汰しております。
2月8日兵庫県立美術館の京子先生の講演に
行きたかったのですが、ちょうど父の三回忌の
法事に重なって行けませんでした。残念でした。また是非神戸での講演お願いします。
怖い絵3も楽しみにしています!
さて、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
私も観に行きました。やはり最後のシーンが
衝撃的で、こわかったです。ショスタコの音楽はとてつもなく壮大で息をつく間もなく凄いものでした。前日に銀座で開催されている「ミヒャエル・ゾーヴァ展」に立ち寄りました。
返信する
Unknown (フィルギアさんへ(kyoko))
2009-05-10 20:22:54
 お久しぶり♪
 同じ日だったのでしょうか?もしかしたらロビーですれちがっていたかも!
 ほんと息つく間もない音楽でしたね。若い時の作曲でエネルギー有り余っていたのかしらん。
返信する

コメントを投稿

音楽&美術」カテゴリの最新記事