中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

不完全燃焼の恋?

2008年12月16日 | 雑記
 先週末の朝日新聞beには、故・越路吹雪(宝塚の男役を経て歌手・舞台女優となった大スター)と長年交流のあった岩谷時子氏の詩が載っていた。

 彼女は越路吹雪の歌うシャンソンなどを翻訳し、作詞家としても名高い人。ふたりの「友情」は、越路の夫君から嫉妬されたほどだった。

 越路の死後、彼女は「眠られぬ夜の長恨歌」と題する詩を書いた。これが凄い!

  四十年近い友情は
  月日と共に昇華され、
  あなたは今
  私の胎内に宿る
  愛し子になった
   (中略)
  おんなに生まれながら
  まだ知らぬ陣痛を
  私に起こせ」

 女と生まれたことが、あるいは相手が女であったことが、無念でならなかったのだろうか?それとも異性愛のみを正しい愛とする世界を恨んだのだろうか?

 この世で十全には叶えられなかった思いを来世に託すのだ、という強い念に圧倒される。。。


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2 コメント

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ませた園児(笑) (ナジュラスター)
2008-12-17 22:10:47
 綺羅星の如き岩谷さんの名曲、名訳をひとつひとつ挙げていく気は毛頭ないのですが、今年惜しくもご逝去されたフランク永井さんの大ファンだった母親の影響で、幼稚園児のころレコード盤が擦り切れるくらい聴いた「おまえに」が、たぶん私個人の脳裏には一番焼き付いているかも…(笑)

 いや…愛の賛歌ではありませんが、炎のような情念迸る凄い詩ですね…。
 やはり越路さんは岩谷さんにとっての楊貴妃でいらしたのでしょうか。
 「長恨歌」に来世への決意のみならず、越路さんの去られたこの世に、先生のおっしゃるような倫理的な恨み。
 血の涙で愛を断たざるを得ず、最愛の人をこの世からうしなった玄宗皇帝に掛けているのだとすれば、本当に深いです…。

 ともあれ、伴侶や恋人を嫉妬させてしまう程というのは複雑ですが(笑)
人生で知音とまで言える友の存在は得難いものですね
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Unknown (ナジュラスターさんへ(kyoko))
2008-12-19 17:38:08
 幼稚園児にして演歌のどろどろの世界を理解していたなら、ちょっと怖すぎ。。。(^^:)
 うろ覚えですけど、子どもは低音より高音を好むというような説を何かで読みました。渋好みだったんですね!
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