中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

3人のアン・ブーリン

2011年02月01日 | 映画
 「残酷な王」の筆頭にあげられるヘンリー8世は、何度も映画に登場しています。必然的にアン・ブーリンも描かれるわけで、今日は3人の女優それぞれのアンについてーー

 最新作『ブーリン家の姉妹』(ジャスティン・チャドウィック監督、2008年公開)のアンは、ナタリー・ポートマン。理知のかった正統派美女。しかし王は、優しくて何でも言いなりになる妹スカーレット・ヨハンソンに恋します。

 この映画は(原作も)史実と少し違い、アンは妹が王の恋人になってから、自分をブラッシュアップするため数ヶ月フランス宮廷へ行儀見習いに行ったという設定になっています。大変身して帰国し、妹から王を奪ったという話の流れなのですが。。。

 あいにくナタリー・ポートマンは、フランス渡航前も後も、全然変わって見えません。すでに十分魅力的でしたし、もどってからもその魅力に変化が生じたようには思えず、観客としては釈然とせず。
 しかしギラギラした野心はとても良かった。

 『1000日のアン』(チャールズ・ジャロット監督、1970年公開)のアンは、ジュヌヴィエーヌ・ビジョルド。美人ではないけれど、ツンと上向いた鼻と勝気な強い眼と、全体に何とも愛らしさの漂う、不思議な女優で、イメージ的には全くイギリス人的ではなく、だからかえってアンにぴったりでした。

 『わが命尽きるとも』(フレッド・ジンネマン監督、1966年公開)のアンは、なんとバネッサ・レッドグレイプ。大柄でがっちりした彼女は、フェミニズムの闘士然としているので、ミスキャストだろうと思いきや!

 彼女の出演シーンはわずか1回。
 でもそこに至るまでさんざんヘンリー(こちらはロバート・ショーで、やはり素晴らしかった)の暴虐ぶりと周囲の恐怖が描かれているので、このシーンは強烈です。誰に対しても高圧的で手におえない王が、アンにだけは腑抜け状態であることが示されるのです。

 アンは特に媚態を見せるでなく笑顔で王に近づき、計算ずくの仕草で、彼の耳にふうっと息を吹きかける。演技巧者のふたりの役者の、なりきりぶりが凄いので、たちまち彼らのベッドでの様子までもが想像できるような、エロスの立ち上りようでした。

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