中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

『シャッター・アイランド』とウィリアム・ブレイク

2010年05月11日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン映画篇」第38回の今日は、「クララ&シューマン&ブラームス」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2010/05/post-1fe1.html#more
 ドイツ映画『クララ・シューマン、愛の協奏曲』について書きました。

 この中でロベルト・シューマンが精神病の治療を受けるシーンがあり、医者が言うのです、「脳のこのあたりが冷えているから温めなかればならない」。でもって髪の毛を全部剃った頭に焼きごてを当てるのです。

 うわあ、それじゃ表面が火傷するだけじゃないですか!
 
 いま公開中のM・スコセッシ『シャッター・アイランド』にも、ひどい治療法が出てくる。映画の舞台になっている50年代に、アメリカでひんぱんに行なわれていたロボトミー手術だ(『カッコーの巣の上で』を思い出す)。

 ところで『シャッター・アイランド』だが、宣伝の方向があまりよろしくないんじゃないかしらん。伏線に気をつけろ、とか意外なラストだとか、そんなことばかり強調するものだから、逆に「なあんだ」と落胆させるのでは。。。

 だいたいこの程度の謎は、映画好きあるいはミステリ好きならたちまちわかってしまう。この作品の面白さはそんなところにはないのだ。主人公にとっての世界の認識がゴシック・ホラーのように描かれており、そこに魅力を感じれば十分楽しめる。

 耐えがたい悲しみにおしひしがれ、生き残った者としての罪悪感にかられながら、やっとのことで自分を支えている人間を、レオナルド・ディカプリオは圧倒的存在感で演じていた。

 わたしは早くに結末を予期しながら、ああ、どうか違っていますように、彼に救いがありますようにと祈りながら見た。あまりにも感情移入して見たので、終わるとぐったりしてしまった。さっそく原作も読んだが、こちらもなかなか面白い!(チャックだけミスキャストかなと感じた)

 それはさておき、この映画にウィリアム・ブレイクの絵が出てきたのにお気づきの方もいらっしゃるでしょう。精神を病んだといわれるナブコドノゾール王(ヴェルディのオペラ「ナブッコ」のモデルですね)が、裸で四つんばいになっている奇妙な絵だ。医長の部屋の壁に掛かっていた。あれもまあ、ひとつの伏線といえるかな。



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コメント (9)
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