中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

ホームレス中学生

2008年03月03日 | 
 先日、知人女性から、中学生のときの家出体験を聞いた。30年前の、それも地方の田舎町なので、見知らぬ人たちが皆とても親切だった由。

 それで思い出したが、年末に「ホームレス中学生」という本を読んだのだった。ベストセラー本はほとんど読まないのだけれど、これはかなり面白かった、というか、驚いた。

 キリンというお笑いの人気コンビがいて、その片方の実体験である。

 彼が中学2年の夏、学校から帰ると家が差し押さえにあって入れない。大学生の兄と高校生の姉の3人で茫然としていると、父親が遅くにもどってきて曰く、「これからは各々頑張って生きてください。解散!」。

 この「解散!」という言葉ひとつで本書は多くの読者を獲得したのでは、と思うほどの凄みだ。要するに遺棄である。

 母親はとうに亡くなっており、親戚づきあいもない。父親はお金をくれるでなく、そのまま後ろも見ずに消えてしまう。3人のきょうだいは放り出されてしまった。そして彼は兄姉と別れ、団地の児童公園で一ヵ月ホームレス生活をするようになる。そのサバイバル体験がこの本だ。

 なまじ日本が豊かなだけに、友人や教師に救いを求めることができないという彼の気持が痛いほど伝わるし、兄や姉に迷惑はかけたくない、との優しい心もいじらしい。必死に日々を生きるけれど、しかしまだ半分子どもだから、いろいろ頭もまわらない。

 胸に響いたのは、彼が一貫して父親への恨みを示していないこと。むしろあれこれ弁護してやっていること。

 子どもというのは、こんなにもこんなにも親を愛しているのだなあ・・・読んでいるこちらの方が、この父親の胸ぐらをつかんで「責任を果たせ!」と怒鳴りたくなってしまった。

☆今日の「世界史レッスン」は、「ジェシー・ジェイムスVSピンカートン社」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/03/vs_66eb.html
 記事をアップするまでには映画「ジェシー・ジェイムスの暗殺」を見ておこうと思っていたのですが、忙しくて見ないまま上演終了となりそうです。DVDが出るまで待とう、ホトトギス。

☆☆いま書店に出ている「サンデー毎日3/9号)の123ページをごらんください。南伸坊さんが「怖い絵」の書評を書いてくださっています♪
 少しだけ抜粋するとーー「・・・これを知ってから見れば絵は、いままでと違う見え方をするし、面白がり方ができる。わたしはこの本を読んで、そうした新しいアングルをたくさん教えられた。こういう切り口で編集された絵の本というのは今までなかったのではないか。もっと読んでみたい」

☆「表紙からして怖すぎる『怖い絵』は、古今東西の呪われた名画とその慟哭の背景を紹介する恐怖の一冊」--これは年始の「週刊現代」で、桜庭一樹さんが書評してくださった文章の導入部です♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


☆マリーもお忘れなく!(ツヴァイク「マリー・アントワネット」(角川文庫、中野京子訳)

マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)
     






コメント (4)
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