中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

愛妾という職業のトップに立つポンパドゥール(世界史レッスン第21回)

2006年07月04日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日ブログ「ベルばらkidsぷらざ」に連載の「世界史レッスン第21回」は、「ふたりの愛妾ーー格の違い」。ルイ15世に愛されたふたりの女性、ポンパドゥールとオミュルフィの勝負について書いた。⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2006/07/post_efd2.html#more

 ポンパドゥール夫人の出世ぶりは目覚しかった。そもそも貴族ではない。父は高利貸し業。才色兼備の娘ジャンヌ・アントワネット・ポワソンは、20歳で裁判官と結婚し、まずデティオール夫人となる。裕福な夫人はサロンをひらき、ヴォルテールら名士と交流しながら、さらに上を狙う。

 ルイ15世とは仮面舞踏会で知り合ったといわれる。周到に準備して接近したのは間違いなさそうだ。ハンサムで遊び人の王の歓心を惹こうとする女性は数多くいたから、競争率は高かった。

 彼女には<平民の主婦>という自らの不利な立場をものともしない根性があった。だからチャンスをつかめた。つかむだけでなく、それを持続させる能力もあった。ためらうことなく離婚し、王からポンパドゥールの地を授与され、貴族に序せられる。24歳で侯爵夫人、31歳で公爵夫人と、階段を上り続ける。

 こうしてポンパドゥール夫人は、芸術文化の偉大なるパトロンとなり、大臣波の公務を抱えた政治家にもなったわけだが、成り上がりの女性に対する風当たりは、昔も今も変わらず強い。

 7年戦争の敗北も、宮廷の財政悪化も、全て彼女のせいにされている。放蕩三昧の王を叱咤激励し続けたのは、他ならぬポンパドゥール夫人だったというのに。

 才女もつらい。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

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マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)

♪♪「恋に死す」のインタヴュー記事はこちら⇒http://www.book-times.net/200312/14.htm 
コメント (4)
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