経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

これぞ知財経営

2008-05-01 | 新聞・雑誌記事を読む
 日経ヴェリタス最新号の「会社がわかる」で紹介されている東洋炭素ですが、お手本のようなこれぞ知財経営、という感じで興味深いです。主力製品の等方性黒鉛の世界シェアは32%で断トツの首位、原発の炉心用部品のような高度な技術を要求される高付加価値製品に特に強いとのこと。その結果、今期の予想営業利益率は24%、これはカーボン大手の8%、素材セクター平均の3%を大きく上回り、これまでも増収増益を継続し、来期以降も高い成長が予想されているそうです。
 では、東洋炭素はこの技術にどのように参入障壁を築いているのか。焼成する際の窯の温度の上げ方や窯の内部に置く位置など、典型的なノウハウものであるようですが、重点分野を定めて特許取得にも力を入れているとのこと(実際に参入障壁としてどの程度効いているかはよくわかりませんが・・・)。それより何より面白いポイントだと思ったのが、生産期間が長すぎることが大きな障壁になっているとのこと。粉砕・成形・焼成に1~2ヶ月、黒鉛化に2ヶ月といった複雑な工程を経る生産期間は6~8ヶ月に及び、試作品を作ろうとするだけで1年はかかってしまうとのこと。今のように経営の成果が早く求められる環境下では、参入の決断が非常に難しくなると思います。
 時間が参入障壁になる、という今まであまり意識していなかった視点ですが、そういえば同じ素材系で、信越化学の強みに山を買って資源を確保するという経営判断があった、という話もありました(鉄鋼の世界ではあのアルセロール・ミタルが最近は鉱山を次々と買っているそうです)。強い企業の参入障壁というのは、知的財産権だけではなく様々な仕組みが施されています。我々知財人もそのことをよくわかった上で、知的財産権で何ができるかを考えていくことが大切だと思います。
 日経ヴェリタスの「会社がわかる」のコーナーは、企業の見方を知る上でなかなかおススメです。