経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

知財コンサルの機能論と産業論

2008-03-20 | 知財業界
 関東経済産業局のホームページに先日の‘知財戦略コンサルティングシンポジウム2008’の開催報告が掲載されています。
 この取組みについていろいろな方にご意見を伺う中で、内容そのものについては好意的なご評価をいただくことが多い一方で、ネガティブな意見としては「知財コンサルが果たして事業として成り立つのか?」という指摘を受けることが少なくありません。それは確かにその通りで、‘公共事業’であるからあそこまで精緻な分析ができたという面は否めないのですが、この点については、必要とされている機能に関する機能論と業として成り立つかどうかという産業論をごちゃ混ぜにして、全体を否定的に見てしまうことは避けたいものだと思っています。
 勿論、業として成り立たないと機能として提供できない、という意見も理解はできますが、それは知財コンサルを主体に業を成り立たせたいと考えている事業者からの見方に過ぎないのではないでしょうか。ここで議論されているような機能を提供する者は、知財コンサル専業者に限られるものではなく、経営コンサルの一部であっても、取引金融機関のサービスの一形態であっても、特許事務所のサービスメニューの一つであっても構わないものです。まず最初に必要なことは‘どういう機能が求められているか’を明確に認識することであり、どのような事業形態で提供し得るのかというのは性質の異なる話になってくると思います。例えば、IPO前の企業からは、必要な社内体制の整備や資本政策等を支援する‘IPOコンサル’という機能が求められますが、この機能はIPOコンサルの専業者によって提供されるよりも、こうしたスキルを有する個人がIPO前後の企業に転職して社内の一員として取り組んだり、ベンチャーキャピタルや証券会社などが事実上その機能を提供しているということのほうが多いように思われます。知財コンサルについても、スキルを有する個人が社内に入って体制整備に取り組んでもよいし、経営コンサルや研究開発コンサルの一部として、或いは金融機関等のサービスの一部として提供されてもよいわけであり、知財業務が他の分野の活動から遊離するリスクを考えると、むしろそのほうが実効性が高まる可能性すらあるとも思われます。
 実際、シンポジウムで紹介された地域知財戦略支援人材育成事業の前身である地域中小企業知的財産戦略支援事業がスタートした目的は、「中小企業における知財戦略の実践」であって「知財コンサルティング業の振興」ではありません。あくまで前者を推進するための手段として、知財コンサルティングの必要性がフォーカスされてきて、その業務のモデル化を試みることとなったものです。この業務をどのような事業形態で提供していくかは、まさにこれをサービスに取り込もうとする事業者が個々に考えていくべき問題であると捉えるべきでしょう。