経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

経営者の視座

2008-02-25 | イベント・セミナー
 先週金曜に特許流通シンポジウム2008in福岡があり、パネルディスカッションではパネリストの皆様から大変有益なお話をお伺いさせていただくことができました。

 ご登壇いただいたのは、株式会社エルムの宮原社長、田川産業株式会社の行平社長、株式会社日本開発コンサルタントの橋川社長と、九州各地で御活躍の3名の社長様です。各社のプレゼンテーションを拝聴していて、
① 強い商品を持ち、
② その強さを形成するのに特許制度を有効に利用し、
③(商品を増やすのではなく)世界に目を向けることで市場を広げている。
という共通点が見えてきました。

 ①については、強い商品を作れる理由について、宮原社長から「地方には企業が少ないので分業化しにくく、何でもやらなければならない→結果としてできることの幅が広がり、商品開発の発想も多様になっている。」とお話いただいたの対して、行平社長は「漆喰の分野で他にないノウハウを蓄積することで、公的機関・大学など外部の協力や評価を得て商品開発を進めていった。」という、逆のアプローチからそれぞれ結果を出されていることが印象的でした。橋川社長からは、「ユーザーニーズに徹底的に拘って特化したこと」を成功要因に挙げていただきました。
 ②については、各社ともに「特許をとった製品で成功した」といった特許中心の発想ではなく、事業戦略にあわせて特許制度をうまく利用されている、さすが経営者の視点は違う、ということを感じさせていただきました。宮原社長からは、製品そのものの特許に拘らず、事業のどの部分で特許を抑えれば効果的かを工夫した、というお話がありましたが、特許に割けるリソースに限界のある中小企業には大変参考になる事例だと思います。行平社長からは、基本的には特許よりはノウハウの比重が高い分野ではあるものの、外部を巻き込んで開発を進めるにつれて特許の必要性が高まるというお話がありましたが、ノウハウ優先の分野でも事業のステージによって方針が変わってくるということの好例であると思います。橋川社長からは、リソースに限りのある中小企業は絞り込みが必要で、その市場を世界に広げることで業績を拡大できるというお話の中で、特に外国市場に出る際には特許が重要になるというご指摘をいただきました。
 
 先の「中小企業のための知財戦略活用セミナー」でのパネリストでご登壇いただいた社長様方のお話もあわせて、痛切に感じたことは、

 同じ特許のことを考えるにしても、やはり経営者は実務家とは視座が違う

ということです。どの社長様も、「特許で独占権を確保する」とか「知的財産を創造、保護、活用する」とか教科書通りの発想ではなく、各社それぞれの事業戦略の下で、特許制度を客観的に捉えて「利用できる制度なのだからうまく使ってやろうじゃないの」といったスタンスが伺えます。「たかが特許、されど特許」の感覚です。ここがたぶん、守備範囲を広げようとしている知財の実務家には一番欠けていることが多い部分だと思います。ご参加いただいた中でも事業に積極的に関与しようとする知財実務家の皆様には、そのあたりをぜひ感じ取っていただければ。