経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

伝説のコーチから考える知財戦略実践法

2008-02-03 | プロフェッショナル
 NHK土曜ドラマ‘フルスイング’(あの熱さ、毎回涙なしには見れません・・・)の影響で、「甲子園への遺言」を読みました。高畠コーチの名前はよく目にした記憶はありますが、こんな凄い人だとは知りませんでした・・・
 高畠氏は30年のコーチ生活で多くの名打者を育てていますが、その打撃理論は素人にもわかるシンプルなもの(構えたトップの位置からバットを最短距離で打点まで持っていく。そして、その打点からは、できるだけスイングを大きくする。)だそうです。そして、それをマスターさせるために、理想のフォームを強制するのではなく、選手の個性を生かしながらどうやったらその理論を実践できるか選手と一緒にその方法を探していくそうです。そのため、練習方法も選手によって様々になり、いろんな道具を使ってみるたいへんなアイデアマンだったそうです。練習では選手の短所を矯正するのではなく、長所を伸ばす中で自然に短所も修正されていく、そんな教え方をしていたそうです。
 知財経営・知財戦略のことを難しい言葉であれこれ言う人達もいますが(難しい言葉を使うほど、却ってほんとにわかってんのかいなと思ってしまいますが)、本当はもっとシンプルなものでよいんだと思います。基本形はシンプルでいい、というか、基本はシンプルでなきゃいかん、そうでなきゃ使いこなせんのです。企業の強みとなる要素(差別化要因)を見極め、そこを守れるツール(知的財産権)でしっかり守る。そして、それを実現するために、それぞれの企業の状況(ステージ、人材、資金力、雰囲気etc.)によく目を配りながら、できそうなところから形を作っていく。そのときに、研究部門等に対して知財部が「知財教育」をするという‘上から目線’では状況は良くならず、理想に近づくために「一緒に方法を探す」というスタンスが求められるのだと思います。
 この本の中で、どうしても力が足りずに2割5分しか打てそうもないある打者に対して、高畠コーチが「相手に嫌がられる2割5分になろう」といって、徹底的にファール打ちを練習させる(∵球数を投げさせられるので嫌がられる)という話が印象的でした。よくわかる気がします。「これはちょっとなぁ」という発明に出会ったときのことを考えると。

甲子園への遺言―伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯
門田 隆将
講談社

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