経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

特許権とビジネスの3形態

2006-08-14 | 企業経営と知的財産
 技術開発を伴う事業において、「特許が重要である」ことは確かであると思います。そこで発明の発掘、発明提案、先行技術調査といったオーソドックスな特許業務の必要性が言われることになるわけですが、対象となるビジネスのカテゴリーによって、特許の重要性や位置づけは大きく異なるものです。その違いを意識しないままに「特許業務」であることを優先すると、経営に活かすべきツールである特許の本来の効果を発揮することができないのではないでしょうか。

 特許という観点からビジネスを分類した場合、大きく3つに分けることができるように思います。
 1つめは、特許権を取得することによって事業そのものが独占し得る分野で、医薬品がその典型例です。特許=製品となることが少なくないため、この分野では特許の有無がビジネスを決定づける極めて重要な要素になります。
 2つめは、エレクトロニクス、メカトロなどの分野です。この分野では、1つの製品が極めて多くの技術によって構成されていることが通常であり、1つの製品に関連する特許権を1社で全て取得するということは、殆ど不可能な状況になっています。しかしながら、どのような特許権を保有しているかは、類似の製品の中で機能の一部を差別化したり、クロスライセンスの条件を有利にしたりする上で重要な要因となるため、特にこの分野では特許権の取得活動が活発に行われています。
 3つめは、サービス業などその他の分野で、一見したところは技術開発に関係ない業界のようですが、IT技術の導入によって特許権が関係する場面があらわれるようになっています。これらの分野でも、特許権の有無がビジネスに影響することが生じてるようになったわけですが、特許権がビジネスの本質的な競争力というわけではないことが通常だと思います。

 この3つのいずれのカテゴリーに属するかによって、特許に対する取り組みも当然ながら異なってくるはずです。1つめの分野では、先行技術調査や1件1件の特許の質が非常に重要になるため、オーソドックスな特許業務をしっかりとこなすことが重視されます。2つめの分野では、個々の特許の質以上に、どのような特許ポートフォリオを構築しているか、クロスライセンス等の交渉戦術に長けているか、といったことが実質的には効いてくるのではないでしょうか。3つめの分野になると、特許の中味に必要以上に拘るより、特許以外の本質的な競争力をどれだけサポートすることができるか、特許制度の利用方法、特に実際に動いているビジネスのタイミングとの関係が重要になると思います。
 こういった整理がされないままに、例えば、3つめの分野に属する企業に1つめの分野で行うような先行技術調査を行っても、ビジネスの成果という意味では実効性を高めることはできないのではないでしょうか。