経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

「レコード会社」の意味

2006-08-16 | 新聞・雑誌記事を読む
 今日の日経金融新聞に、
「レコード各社、収益力に格差 ~自社アーティストがカギ」
という記事が掲載されています。この記事は、知財と企業収益の関係を考える上で、興味深いものだと思います。
 記事によると、上場しているレコード各社の収益力を比較すると、自社アーティストを多く抱えるエイベックスの営業利益率が10%に近づいているのに対して、自社アーティストが少ないコロムビアやビクターの営業利益率は2~3%程度に低迷している、よって自社アーティストを育成してヒットさせるのがカギ、という説明になっています。

 ベンチャーキャピタルで投資を担当していたのがインターネットが普及し始めた頃だったのですが、インターネットで何かを買うとすれば、現物の受渡しを伴わない金融ビジネスか音楽配信が最初だろうと考えて、音楽業界のことをいろいろ調べていました。そのときに業界関係の方から、
「一口にレコード会社といっても、SME(ソニーミュージック)とエイベックスは、他の大手レコード会社とは性格が全く違うんですよ。なぜなら、自社で原盤権を持つビジネスモデルなので、ヒット作品が出たときの利益や、二次利用の拡がりが全然違うんです。」
ということを教えていただきました(因みに、音楽CDの原盤権は、世の中では余り知られていない音楽出版社という会社が保有していることが多いそうです。)。確かに、当時はSMEも上場していたので損益計算書を確認してみたところ、両社の利益率の水準は他のレコード会社と全く違ってたように記憶しています。

 つまり、原盤権(楽曲の著作隣接権)の有無を考えると、SMEやエイベックスが音楽CDの中味(コンテンツ)の製造・販売会社であるのに対して、その他の大手レコード会社は音楽CDのプレス製造・販売会社と捉えられるということでしょうか。「知財」という意味でいえば、前者のモデルは、CDという媒体ではなく知財そのものを商品としており、それが高い収益力を生み出しているといえるのではないでしょうか(勿論、その裏返しとして、アーティストへの初期投資というリスクも存在するわけですが)。
 今日の記事から、そんなことを久しぶりに思い出しました。

注)上記の原盤権の話は、あくまで7~8年前に音楽業界の方に伺った話であり、正確な裏付をとったわけではありません。実際のところは各社が真っ二つに分かれるという類のものではなく、各社いずれのビジネスモデルも混在しており、どちらの比率が高いかという程度問題なのではないかとも推測されます。