ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

西の魔女が死んだ(ネタバレ)

2008年07月15日 | 映画
文部省推薦なんてついてしまうとちょっとひいてしまうひねくれ者の私ですが(汗)児童文学の名作との評判の作品の映画化だったので、見てみようと思い、観に行きました。
ちなみに私、長いことこの作品、ファンタジーだと思ってたんですよね(汗)「西の善き魔女」と混同してたのもあるし(汗)おばあさんがもっとおおっぴらに本物の魔女だと思ってたんですよ、なぜか。
観に行く前に誤解が解けてよかったです(汗)

以下、ネタバレを含みますので、これからご覧になる方はご注意ください。重大なネタバレには反転文字を使いますが。
いや~、久々に映画観て泣きました。うるっと来た程度は別として、ハンカチ必要になったのは今年は初かも。がっつり泣いたのはパンズ・ラビリンス以来だなあ。
とにかく、話が上手くできてるなあと思いました。これは原作の力なんでしょうが、映画化にあたって原作の良さを殺すのは簡単だということを知っているので、それだけでも評価できると思いました。
でも、原作既読者に言わせると原作は超えてないという評判ですが・・・
まず、長野の美しい自然の映像に惹き付けられました。鮮やかな濃い緑は日本の自然の美しさですね。
関東の人間にとっては、北海道や沖縄の自然も美しいけれど、やはり長野あたりの自然の方が親近感も湧きます。
そして、音の捉え方が上手いなあと思いました。風の音がとにかく印象的で。涼しげで、映像と風の音を聴いているだけで、長野の高原に行きたくなりました(笑)
その美しい自然の中で静かに淡々と日常を暮らすおばあちゃん。お洒落なコテージでの高原の暮らしは素敵だなあと思わせます。維持して行くには毎日しっかり働かなきゃ、という感じですが・・・
そして、車もない状態で、どうやって生活してるんだかいまひとつ謎でしたが・・・さすがに自給自足できるほどの畑ではなかったと思うし。
そのあたりに違和感を感じながらも、でも素直に自然の中での素朴な暮らしの営みを楽しんで観ました。
野いちごジャム作りや洗濯のシーンが印象的でしたね。
そんな素朴な淡々とした暮らしの中で、まいとおばあちゃんが対峙して行くのですが、一人の子供の思いをちゃんと受け止めようと思ったら、本当はこれだけの時間を費やさなければならないんだなあ・・・と。
現代の日本で、子供とこれだけゆったりと向き合える余裕のある大人がどのくらいいるでしょうか・・・
働いてるお母さんはもちろん、専業主婦だって日々何かに慌しく暮らしていかなければならない現代の社会。
その慌しさに上手く乗っかれて、バイタリティ溢れる暮らしを楽しめる人はいいけれど、何かの拍子について行けなくなったり、違和感を感じてしまった途端にはじき出されてしまう社会。
まいのような繊細な子供には、確かに生き辛い社会に思えます。しかも繊細な子供はどんどん増えているように思えるのに。
おばあちゃんの素朴な暮らしは、そんな現代社会に相対する生活の理想像のようにも思えます。
しかし一方で、そんな暮らしから反発して出て行ったと思われるまいの母の気持ちもわかるなあ、と思うのですね。
立派すぎる親を、尊敬しながらも反発する気持ち。彼女が仕事をしてがんばりたいと思う気持ちは、母親への反発(父親にもかもしれませんが)に端を発していたのではないでしょうか。
周囲から見たら素晴らしい人でも、自分の親となると違って来るのですよね。受け入れられないところばかり見えてしまったりして。
あの人里離れたところでの暮らしは、年頃の女の子には閉塞感に満ちたものだっただろうと想像できるし。
そして、まいも正しすぎるおばあちゃんと衝突?する時が予想外に早くやってくるのですが・・・
まいの父親が、なんとなくおばあちゃんに気後れするのもわかるな~、と。全て見抜かれているような気がして、自分の生き方がちょっと後ろめたく思えてしまうのかも。
「死んだらどうなるの」という幼いまいの問いに最悪の答え方をしたお父さん、そんな現実的なお父さんの、「おじいちゃんが大好きだった」という告白にはちょっと驚かされ、そしてほろりとしてしまいました。
そして、作品全体に「死」というテーマが流れていたのがまた良かったなあと。
冒頭からおばあちゃんの死の知らせ、という場面から始まり、そもそもタイトルに死が入っているし、最初から死と別れを予感させる物語ではあります。
既に亡き人で、直接には登場しないけれど、おばあちゃんの話や、お父さんの話で、死んでからもその存在感を示しているおじいちゃんの話を聞いていると、人が死んでから残された人の心に残すもの、ということを考えさせられます。
そして、これから死んでゆくおばあちゃんのことにも思いが至ります。
「死んだらどうなるの」と、たいていの子供が聞いたことがあるのでは。聞かない子もいるのかな。私は聞いたことがありますが。
それに対して、子供を不安にさせずにきちんと答えられる大人って、少ないのではないでしょうか。そうでもないのかな。少なくともうちの親はダメでしたよ(笑)
それでも、たいていの子供はいつのまにかそんな不安から解放されて行きますが、いつまでも引きずってしまうまいのような繊細な子供もたくさんいると思います。私は違ったけれど、そういう子供だった人は知っています。
まいの思いにきちんと答えたおばあちゃんは、最後の瞬間にも死を開放と捉えることで、残されたまいの心を救ってくれます。そこには赦しと、ずっと愛していたという気持ちもこめられていて。
ラストのカタルシスでは、やはり泣いてしまいました。
あの文字・・・おばあちゃんは本当に魔女だったのか? それとも・・・と余韻を残しているのが良かったですねえ。(そういうの大好き(笑))
ゲンジさんの存在も上手かったなあと思いました。
山中でのおしゃれでどこか現実離れもしていたおばあちゃんのコテージと対照的な、ある意味純日本家屋なボロ屋に住んでいるゲンジさん。
まいのことを学校をさぼって遊んでいる、と言った時、「お前と同じだな」と言われていたところを見ると、ゲンジさんもあまり学校に行っていなかったのでは。
最後に、「俺は出来は悪かったけどじいさんとばあさんには世話になった」と言っていたところから、まいの祖父母が学校に行かずに落ちこぼれていたゲンジさんの面倒を観ていたことが想像されます。学校の先生だったのだから、ゲンジさんを教えていたのかも?
このあたりもまいの両親同様、はっきりとは描かれていませんが、背景にある物語を匂わせていて、よく作られているなあ、と思いました。
まいは、都会の少女らしい嫌悪感をゲンジさんに抱きますが、実は似たところもあった二人が、最後には会話をするシーンにもじわっと来ました。
そういう意味では、原作には出てこなかった郵便屋さん親子だけが、上手く配された人物配置に組み込まれていなくて、別にいなくても・・・とも思ってしまいましたが(汗)まあ、他の村人と全く交流の様子がないのも不自然だし、あれはあれであっても良かったかな。
キャストでは、おばあちゃんのサチ・パーカーさんがとにかく良かったです。表情だけで泣かされそうになったりしました。
まあ、他のキャストがそんなにすごく良くもなかった、というのもあるかもですが・・・(汗)
エンドロールで流れる主題歌が印象的・・・と思ったら、歌ってたの手蔦葵さん(テルー)だったんですねー。

というわけで今年見た映画の順位。
1.イースタン・プロミス / 2.マイ・ブルーベリー・ナイツ / 3.西の魔女が死んだ / 4.ナルニア国物語第二章 カスピアン王子の角笛 / 5.エリザベス ゴールデン・エイジ / 6.スウィーニー・トッド / 7.転々 / 8.ライラの冒険 黄金の羅針盤 / 9.奈緒子 / 10.L Change the World / 11.マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋 / 12.カンフーくん / 13.ポストマン
邦画がこんな高順位に!?って「それでもボクはやってない」もあったか。
映画としての出来としてはそんなにものすごい名作とも思わないのですが、とにかく原作の力(多分)でとても良い話だったので。

あと、これから観に行く予定の映画のリストです。
公開中 「ミラクル7号」(鑑賞済)「闘茶」
7月19日公開 「たみおのしあわせ」「崖の上のポニョ」
8月9日公開 「コレラの時代の愛」
8月23日公開 「デトロイト・メタル・シティ」「スターウォーズ クローンウォーズ」
8月30日公開 「20世紀少年」
夏公開 「TOKYO!」
9月公開 「グーグーだって猫である」「コドモのコドモ」
10月公開 「ブーリン家の姉妹」「レッドクリフ」
秋公開 「あぁ、結婚生活」
冬公開 「ハリー・ポッターと謎のプリンス」

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