ようやくたどり着いた(汗)これも6月の感想ですが・・・神奈川芸術劇場KAATでの亜門版太平洋序曲を観てきました。
初演をたまたま観て感動して、再演はもちろん、リンカーンセンター公演まで行ってしまったくらい好きな作品です。
ブロードウェイ版も観に行きました。そこでマイケル・K・リーに出会ったわけですが。
一番好きなミュージカル作品、かもしれません。あまり見る機会がないレア度もあるかもしれませんが。
久々の再演ときいて楽しみにしていましたが、キャストが発表になって、やや不安が・・・。初演・再演の頃は、ネームバリューはないけれど実力派の、東宝ミュージカルなどでアンサンブルでおなじみのキャストが集まっていて、一見地味でしたがすごくいいカンパニーだったんですよね。
それが、ネームバリューはあるけれど歌えるの?というキャストが入っていて・・・亜門さんはわりとそういうキャスティングしがちですが、序曲ではやらないと思ってたのに・・・
というわけで不安ながら観に行きましたが、結論から言うとやっぱり亜門版序曲好きだなあ、と思いました。
最初から取っていた2回分+新聞の懸賞であたって計3回観に行きました。
1回目は「初演のキャストは良かったなあ・・・」とついつい思ってしまいましたが、2回目以降は素直に作品を楽しめるようになりました。
やっぱり亜門版の演出はいいなあと思います。
ロンドンで別カンパニーの舞台も観ていますが、亜門版は、日本人であることの強みを活かして、日本らしい動きの美しさを見せることに成功していると思います。外国人がやるとどうしても「アヤシイ日本」になってしまいますが(それが面白かったりもしますが)、日舞の動きを取り入れた振付や、和服を着る動作を美しく見せたり、そしてもちろん殺陣も(外国人の殺陣ひどいですよ・・・(汗))と日本人ならではの演出が良いなあと思います。
そして、音楽のよさを引き出す演出でもあるなあと思います。これはファンタスティックスでも思うのですが。まあ全ての作品がそういうわけではないのですが・・・亜門さんの演出は軽快に踊るような音楽で力を発揮するんじゃないかなと思っているのですが。
特に「太平の浮島」の演出は見事でした。初めて観た時鳥肌が立ったのを覚えています。ロンドンのカンパニーのが「なんじゃこれ???」という出来だったので余計に・・・(ロンドンのカンパニーはその後は良かったのですが、「太平の浮島」では拍手もまばら、という感じでした・・・(汗))
麻咲梨乃さんの振付がまた良いのでしょうねー。Welcome to KANAGAWAとかのコミカルな振付も芸が細かくてすごいなあと思います。
もちろん、元々の楽曲が素晴らしいからこそ、ではありますが。ソンドハイムの楽曲は、日本風な味付けが上手くて、なおかつ楽曲として完成度も高くて、よくぞこんな曲を作れるなあ・・・と思ってしまいます。
正直、日本で和風なミュージカルを作ろうとしても、ここまでの楽曲を作れる人はいないですね・・・
だからこそ、そのソンドハイムの楽曲に「ちゃんとした」美しい和風の演出を組み合わせた亜門版太平洋序曲は、なかなかあり得ない化学反応の結果に思えて、私は感動したのでした。ソンドハイムが絶賛した気持ちもわかるなーという感じです。
「黒い竜が4匹」でのふすまの迫力ある動きも好きだったのですが、今回は初演の頃ほどの迫力がなくなってたかな・・・
演出の変更もあると聞いていてやや心配してましたが、概ね改善された、と言ってよいのではないかと思いました。
たまての自決がより理解しやすい解釈になってましたし。ただし民衆が「上へ下への大騒ぎ」の場面にたまてが出てきてしまうことで、この場面の面白さが削がれてしまったのはやや残念でした。
ポーラーハットでは、歌詞の内容が状況としてわかりやすい演出になってましたね。香山の2番目の妻が登場したりとか。そしてなんで妻が去ったかも短い時間で説明していて、上手いなと思いました。
他にもいろいろ変更はあったようですが、久々に観るのですっかり忘れてしまっていたなあ・・・
新キャストでは石鍋多加史さんと畠中洋さんが特に良かったですねー。石鍋さんは「あれ初演にもいなかったっけ?」と思ってしまうくらいハマってました。初演で老人をやってた越智さんの老け役も良かったですが、実際に年配の方で歌もちゃんと上手い方が演じたのは良かったなあと思いました。
畠中さんは、もともと上手い方だと思ってましたが、本当に何でもできて素晴らしかったです。歌は上手いし殺陣は上手いし、女役もさらっと演じていて。たくさんの役をこなさなければならないこの作品、畠中さんのような実力のある方がまさに必要なんだよなあ、と思いました。
あ、石井一彰さんも良かったです。実は私初めて観たんですが・・・正直今まで特に興味なかったんですが(汗)かなり好感度upしましたよ。
すらっとしてカッコ良くて歌も上手い、のですが、オランダ提督が良かったなあ。間抜けな振付を一所懸命踊ってる姿が予想外におかしかったです(笑)
麻乃佳代さんのたまても、さすが元宝塚トップで、冒頭の謡の場面や「帰り待つ鳥」の日舞的な踊りも見事でした。しかも見た目若くてかわいらしくて、たまてにぴったりでした。
小此木麻里さんも良かったですねー。とにかく歌が上手くて、今回歌が上手いキャストが少なくなった部分を見事に支えてたと思います。
息子をやったと思えば将軍の妻の腰元の怪しい演技とか、お馬鹿っぽい女郎もかわいかったなあ。
老中役の皆さん(石鍋さん含む)も良かったですね。かわいい老人(失礼)集めて来たなーという感じで(笑)老中たちが慌てふためくかわいい演出も好きなんですよね。
個人的に広田勇司さんが出ないのがとても残念で、「帰り待つ鳥」のワキどうなんだろう・・・と思ってましたが、戸井勝海さんもとても良かったです。歌いだしのワキが泣きそうな震え声で歌うのがツボなんですが、そのあたりはバッチリでしたね。ここブロードウェイ版だと物足りなかったんですが、やはり日本人でないとわからない感じなのかな。
ナレーターの桂米團治さん、国本武春さんのインパクトには負けるかなーというのがありましたが(三味線ロックとかやや反則技ですしね・・・(笑))、落語もまた日本の伝統芸能で、そういう意味で落語家で演技もできる米團治さんを持ってきたのはなるほどなあ、という感じでした。
また、「太平の浮島」とか「木の上に誰か」とか、ニコニコと目を輝かせて見守ってる感じが良かったですねー。特に「木の上に誰か」ではうるっと来ましたよ。
で、香山と万次郎ですが・・・
どうも亜門さんはのっぽの万次郎と小柄な香山、という組み合わせがお好きなようで。それにしても八嶋さん今までで一番小さい香山ですが・・・(汗)
今までは香山と万次郎は若い二人、という感じでしたが、今回は年齢がちょっと高め。それが後半には良い形になっていたと思います。終盤の香山と万次郎の対決の場面、今までになくドラマがあったと思いました。
ポーラーハットの場面もより芝居しやすい演出になってましたし。
そういえば二人の対決の場面、以前は香山が自ら斬られたような演出になってたと思いますが、今回はむしろ万次郎に迷いがある感じになってましたね。
しかし、二人ともあまり歌えない方なもので、「俳句」の歌が・・・(汗)今までのキャストは皆さらっと歌ってましたが、このナンバー結構難しいんだなあと思いました(汗)
ボートで交渉の場面、八嶋さんはもともと面白い方ですが、それがかえってあまり笑えなかったかも・・・本田修司さんとか真面目にやってる感じがすごくおかしかったですけどねえ。(マイケルはどうだったかなあ。忘れてしまった・・・)
あ、「帰り待つ鳥」でたまてから刀を奪う場面、そっと抱きしめるように刀を奪ってたのが「大人だな~」と思いました(笑)
万次郎は、最後香山を斬ったあたりの演技はとても良かったですが、冒頭の和太鼓とか、着物に着替えてたすきをかける場面とか、「小鈴さんカッコよかったな・・・」とついつい思ってしまいました(汗)笑わせる場面も意外に小鈴さんの方が笑えたなあ・・・
初演からのキャストはさすが、という感じでしたね。佐山陽規さん、さけもとあきらさん、岡田誠さんに、直前で戻ってきた園岡新太郎さん。初演の皆さんが出てくると、さすがというか、安心するというか。
佐山さんの将軍の母は、なんかあまりにハマリすぎていてなんかああいう人かと思ってしまうくらい違和感がなくなってしまいました・・・(笑)「菊の花茶」とか、難しい曲をさらりと歌ってのけるのもさすが。
さけもとさんの「黒い竜が四匹」を聴くと、なんか懐かしさとか色々こみ上げてしまってじーんとしてしまいました。
岡田誠さんは歌が上手いのは以前から変わりありませんが、その後お芝居に出ることも多くなって、笑いを取るようになりましたしね。「木の上に誰か」の武士の一所懸命な感じも好きです。
園岡新太郎さんは、殺陣とか物語の場面とかさすがに決まっていて、やっぱりこういう人がいないと締まらないよな、という感じでしたね。直前にキャストに入りましたが、園岡さんなしでどうやってやろうとしてたのか想像がつかない・・・
NEXTで原発事故に触れたのは、「アメリカGE社製の原子炉が・・・」とか言っていて、そうか、そういや他のも皆アメリカと日本の関係に関することを言っていたんだな、と初めて気がつきました(汗)
そして爆音(原爆の)とともに舞台の梁が折れて皆が倒れる場面が、強く胸に迫りました。以前からそうだったのですが、震災の後だから余計だったかもしれません・・・。これから日本はどこへ行くんだろうと、今までになく感情移入してみていた気がします。
この作品、私は大好きなんですが、万人受けする作品ではないですよね。リンカーンセンター公演はともかくとして、日本でもロンドンでもブロードウェイでも、観客の反応はそこそこという感じ。好きな人は好きだと思うだろうけど、別に・・・と思う人も結構いるんじゃないかと思います。まあ、日本は小技で笑わせるので、そこそこ面白かったという感想にはなるのではないかと思いますが。
というわけで、いつ再演するかわからないし、また観ることができて良かったです。またいつか再演してくれることを願っています。また海外で別カンパニーも観たいなー。というかマイケルの香山もう一回観たい・・・