ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

オレンジと太陽(ネタバレ)

2012年06月30日 | 映画
ディヴィッド・ウェナムさん、ヒューゴ・ウィーヴィングさんとLotR役者さんが二人も出るというので観てきました。あ、もちろん作品的に面白そうというのもあったんですけど。
岩波ホール久々で、以前はレディースデーあったと思って水曜に行ったのに、普通の料金でした・・・前売り買っとけば良かった。

かつてイギリスが孤児院?にいた児童を大量に子どもだけでオーストラリアに移民させていた、という事実が明らかになるという、スキャンダラスな題材だと思うのですが、話の重点はそこではなく、親を恋しく思うかつての子どもたちの思いと、その思いに共感して彼らのために活動する主人公マーガレット・ハンフリーの思いだったからか、スキャンダラスな面は強調されていなくて、暖かい印象が残りました。
マーガレットの活動は児童移民にかかわった教会を中心に反発も多く、理解を得られずに孤立する場面もあるのですが、スキャンダラスな事件そのものよりも、マーガレットの身を案じながらも最終的には理解し協力してくれる夫や、彼女の活動に救われたかつての移民児童たちの姿を描く場面の方が印象に残りました。
マーガレットの子どもたちも、母親が家にいてくれないことに不満を持ちますが、ラストのクリスマスパーティーで弟が「(プレゼントに)ママをあげたよ」と言ったのが、ちょっと来ましたね。冒頭ではママがいなくなる夢を見て泣いてた子が、彼なりに母親のやっていることを理解したんだなあと。
姉弟とも最後まで表情はすっきりしないままで、手放しで応援するようになったわけではなさそうなあたりがかえってリアルでよかったですね。だからこそ、「ママをあげたよ」が効いたなあと。
マーガレット自身も自分のやっていることに自信が持てなくなり、移民児童たちに感情移入しすぎるためにかえって彼らに深くかかわることに恐怖を持つようになりますが、そんな時に、ウェナムさん演じるレンが「あなたは俺達の代わりに泣いてくれた」と言ったところが最大のカタルシスだったでしょうか。レンが最初懐疑的で反抗的だったからこそ沁みましたね。
無条件で自分を受け入れてくれる存在である親と引き離されて育つということがどれだけ人の心の傷になるのか・・・そのことを深く考えさせられる話だったと思います。
ただ、実際には、この映画に出てきた人たちのように、親が理由があって子どもを手放していたケースばかりではなかったのではと思いましたが・・・実際に身寄りがなかったり、親が子どもを放棄したケースだってあったでしょう。きっと親と再会できなかった人たちの方がずっと多かっただろうと思いますし。
そんな一人だったかもしれない、40年間床磨きをしているという女性が、辛い思いを抱えながら(あるいは40年の間に乗り越えて)母親を思ってみせる笑顔が印象的でした。彼女は両親がみつからないままだったのではないかと想像しますが、それでも何度もさりげなく登場し、マーガレットの活動に協力している様子が伺えました。ラストのクリスマスパーティーで変わらず笑顔を見せていたのが良かったですね。
ウェナムさんは、最初マーガレットの活動に懐疑的で、それでいて気になって反抗的な態度を取っていたのが、次第にマーガレットに信頼を寄せるようになり、終盤には自分の活動に疑問を抱き始めていたマーガレットを肯定することで救うという、重要というかオイシイ役どころでした。孤児院を出たあと成功して社長になったようですが、社長らしい貫禄もありましたね~。
イギリスの母親に会いに行く場面で、そんな貫禄のある社長が、子どものようにうろたえている様子がかわいかったですね(笑)
マーガレットを車で送る場面で、カーラジオに合わせて歌う場面も好きだなあ。
ヒューゴ・ウィーヴィングさんは、口数が少ない朴訥なキャラクターで、今までエキセントリックだったり威厳があったりな役ばかり観ていたので、印象が全然違ってびっくりでした。いややはり上手い役者さんですよね。改めて思いました。
朴訥な中に、親と引き離された哀しみや、親に会いたい強い思いが目で語られていて、素晴らしかったですね。
そんな訳で、全体的に抑えたトーンで、移民児童たちの哀しみ、マーガレットの彼らへの共感、マーガレットと家族の描写など、過酷な物語ながらも暖かい視点で描かれていて、良作だなあと思いました。

てな訳で今年見た映画の順位。
1.オレンジと太陽 / 2.ヒューゴの不思議な発明 / 3.ものすごくうるさくて、ありえないほど近い / 4.日本列島いきものたちの物語 / 5.ヒミズ / 6.僕達急行~A列車で行こう / 7.善き人

そして今年観に行く予定の映画
鑑賞済「テルマエ・ロマエ」「レンタネコ」「ダークシャドウ」
7月7日公開「スープ~生まれかわりの物語」
7月14日公開「グラッフリーター刀牙」
8月11日公開「桐島、部活やめるってよ」
9月1日公開「コロンビアーナ」
9月14日公開「白雪姫と鏡の女王」
9月22日公開「王様とボク」
10月27日公開「009 RE:CYBORG」
11月2日公開「のぼうの城」
11月10日公開「悪の教典」
秋公開「高地戦」「ア・デンジャラス・メソッド」
12月14日公開「ホビット 思いがけない冒険」
12月15日公開「フランケンウィニー」
12月28日公開「レ・ミゼラブル」
公開時期未定「ザ・ウーマン・イン・ブラック」
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エンロン

2012年06月24日 | ミュージカル・演劇
エンロン事件ってよく聞いていたけれど実のところどんな事件だったのかよくわかっていませんでしたが、そのエンロンの破綻を題材にしたちょっと変わった?作品でした。
どういう状況であの事件が起こったかわかったのはちょっと勉強になりました(笑)・・・が、実際のところどうやって破綻したのかはよくわからなかった・・・(大汗)終盤やや抽象的?というか心象的な描かれ方してたからかな。いや私の経済方面の知識が貧困なせいでしょう・・・
赤字を「食べさせる」行為を恐竜の姿でイメージしたのも面白かったです。ちょっとかわいくすら思えてきたりして。なので弱ってきた時はなんかかわいそうでした・・・
がさごそと書類を食べる恐竜たちは、どこかネズミが群がっているようなイメージもありましたね。
しかし、結末ありきの話だからというのはあるかもしれませんが、スキリングの提唱したビジネスモデルって、いかにも後からボロが出そうな怪しく思えました。よくあれがもてはやされたもんだなあと・・・そういう時代だったんですかねえ。アメリカらしいとも言えるのかも。
見てから時間経っちゃったのもあってこんな感想しかないですが・・・(汗)
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陽だまりの樹

2012年06月07日 | ミュージカル・演劇
上川さん主演で手塚治虫原作ということで、面白いかなーと思って観て来ました。原作は読んだことありませんでしたが。
ちょうどBSでもドラマをやっていましたが、連ドラでさえ「あの長い原作をどうやって収めるのか」とか言われていたのに舞台になんてできるんだろうか・・・と思っていましたが、原作知らないながら上手くまとめていたのかなと思いました。少なくとも端折っていて話がわからないとかそういうのはなかったですね。
でもドラマをちらちらと見ていると、大分設定変えてるんだなあと。舞台のあの終わり方だと、もしかして桜田門外の変は万二郎が・・・と思ってしまったりもしますが、この間ドラマ観てたら全然違いましたね(汗)そして思いっきり途中で終わってたみたいだし・・・
それでも、見ていて違和感なくひとつの話として見られたので、上手くまとめていたのではないかと思います。原作知ってるとどうかわかりませんが。
観てみての一番の感想は、カンパニーが仲良くて楽しそう! ということでした(笑)
特に石倉三郎さん演じる良庵の父良仙が舞台を下りてアドリブで客いじりをする場面は、フリーダムな石倉さんに、一緒に出てきた役者さんたちも笑っちゃってました。舞台の上のキャストも皆笑ってしまっていて、上川さんがツッ込みまくってさらに石倉さんがボケまくるという、収集がつかなくなりそうなくらいの盛り上がりで、もうおかしかったなあ。
この場面以外にも、あちこちアドリブの応酬で、かなり笑えました。
そんな中一人キャラを守って笑わずに寡黙でいた吉川晃司さん。演技経験も少ないのでアドリブ対応できないからなのかもしれませんが、その寡黙キャラがかえっておかしかったですね。上手い使い方?かも。
ドラマを見てると万二郎ってそんなに寡黙でもないようですが、吉川さんのキャラクターに合わせたのかな。
そのかわり吉川さんカーテンコールでは結構変なことやってましたね(笑)
しかし吉川さん、予想外にカツラが似合っててびっくりでした。こんなに和装が似合うなんて思ってなかった・・・!
上川さんは「隠蔽捜査」と打って変わって軽い役でしたが、こういう役の方が面白くていいなー。
話の筋的には、善悪がはっきりしすぎでやや深みに欠けるかな、というのがありましたが、時代の流れに翻弄されながら、懸命に自分たちの道を貫こうとした人々の物語として、単純に面白かったです。
でも、どうも話の筋よりもアドリブの応酬がおかしかったのが印象に残っているような(汗)
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