ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

わが悲しき娼婦たちの思い出

2006年11月05日 | 読書

ガルシア=マルケスの久々の新作を読みました。
いきなりネタバレなんですが、ハッピーエンドだったのにびっくりしました~! ガルシア=マルケスでハッピーエンドなんて初めて読んだ気がします・・・
内容も、タイトルからして、90歳の老人が過去を振り返る話かと思いきや、意外に現在進行形の話なのでびっくりしました。
この90歳の主人公が元気でびっくり。まあ、90歳の誕生日に処女と・・・なんて考えること自体が若いのですが、それだけじゃなく、普段の生活も90歳とは思えない元気そのもの。お手伝いさんは通いで来るものの一人暮らししているし、新聞社にエッセーを書く仕事も続けているし。
周囲の人間からも、女性社員たちからは誕生日プレゼントに下着をもらったりするユーモアを向けられるし、取締役も、年齢から来るマイナス面よりも、経験を重視して重用?しているし。
そして、新聞のラブレター風のエッセイが大評判になったり・・・と、とにかく元気なんですね。
でも、「いつ死んでもおかしくない」と自分で思っていて、最後は死んで終わるのかな・・・と思ったらあのハッピーエンド。猫まで元気になっちゃって、もうびっくりしましたね(笑)
77歳でこれを書いた、作者自身の「老い」に対する心境なのかな、と思ったのですが。とっても前向きですね。
作家って、老境に向かって作品は悲観的になるのかなと思ったのですが、ここにきていきなり前向きな作風になっているのにびっくりしましたが、でも嬉しいような気もします。
この前向きさが今後の作品発表にも繋がってくれると嬉しいのですが。それとこれとは別でしょうか・・・(汗)
現実と幻想が交錯するガルシア=マルケスらしい作風も健在で嬉しかったです。嵐の家の中にデルガディーナがいるように感じるところなど。
そうそう、作中にいきなり「魔の山」の名前が出てきてびっくりしたトーマス・マン好きな私(笑)当たり前かもしれないけど、読んでるんだなあと思ったらちょっと嬉しかったです(笑)
あと、クラシック音楽がよく出てきたのも、ガルシア=マルケスの作品では珍しくないでしょうか。私が覚えてないだけかな・・・このあたりもなぜかトーマス・マンを連想させましたね。
出てくる作曲家が新しいのがトーマス・マンとは時代の違いを感じさせますが。フランクとかドビュッシーとか・・・

しかし、訳者あとがきでいきなり「コレラの時代の愛」のネタバレをしていたのがちょっと・・・でした(汗)
「コレラの時代の愛」ももう出ているみたいだし、また読むのが楽しみです。
そして、「ガルシア=マルケス全作品集」なるものが出るようですが、結局のところ「コレラの時代の愛」を読んだら全部読んだことがあるんだなあという事実に気がつきました。短編で読んでないものがあるかもしれないけど。
「コレラの時代の愛」を読んじゃったらおしまいかあ、と思ったらちょっと寂しいのでした・・・
そういや「コレラの時代の愛」の映画化の話は進んでるのかな。

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