きまぐれ発言

日々変化する世の中をみて、私はこう思う。

「発送電分離」は民主化への重要課題

2011-09-21 12:47:00 | Weblog
「発送電分離」は民主化への重要課題       (2011.09.21.)

福島原発問題を機に、国民生活に与える最大のインフラの一つに電力が有ることを、今更ながら実感したのである。

日本経団連の会長・副会長には平岩外四元東電会長始め多くの人材が送り込まれ、資金面だけではなく、経済産業省と一体となって財界を支え、また、電力行政を通じて、票と金では当時の自民党政権を支え、それによって、国家の秩序を安定化させてきたのである。

それだけに東電に対してはその力の源泉とも言うべきものを与えるべく、「発送電の一体化」「総括原価方式」による高収益体制、という物が取られて来たのである。
かくして、東電は、政界に対しては、当時の自民党政権との太いパイプを構成するために資金面でのバックアップ、官界に対しては、多数のOB官僚を「天下り」として受け入れ、その他広告出稿を通じてマスコミへの影響力も維持する事が出来たのである。

さらに、その後、原子力による発電が国策として取り上げられるや、政府が行うべき、用地の買収、反対派の抑え込み等々を東電が引き受けることになって、それらを抑え込む資金原を「電源三法」と言う法律によって、裏支えされ、原発立地の自治体への補助金、反対派への慰謝料や口止め料、東大原子力工学科を中心とする学会等々へも資金をふんだんに使ってコントロールしていたのである。

この様な、電力会社の高収益体制、地域独占、発送電一体、総括原価方式に支えられてきた体制に異議を唱える、官僚が2001年に現れたのである。それが、経済産業省(旧通称産業省)元事務次官:田村成二氏である。
彼は、「電力自由化で誰もがクリーンエネルギーの発電に参入できたとしても、送電網が一社独占で、その送電網を使って電力を売ろうとすれば送電網使用料が上乗せられ、市場の自由競争を削ぐばかりか、低コストのエネルギーも結局は電力会社を儲けさせることになる。」
と言って根本から変えようとしたのである。

彼が、「発送電分離」案を提案したのが2001年11月であったが、東電側の猛反対が有り当時の社長南直哉氏は「責任ある発送電一貫システムが日本に於いて役割を果たしている」と発送電分離を拒否し続けた。
田村氏は2002年7月に事務次官に就任し、引き続き「発送電分離」を主張し続けたが2004年退官し官僚の主流から外された。そのため田村氏に近い官僚も外されたと言う。

2007年、東電側も、原子力のトラブルを隠していた事が発覚し、社長はじめ4人のトップが退陣した。しかしその後東電からの強い巻き返しにより 「発送電分離」案は潰されてしまった。それには自民党側の電力族の強い反対があり、その先頭に立って反対したのは、自民党エネルギー総合政策小委員会委員長の甘利明議員と事務長の加納時男参議院であると言う事である。

当時城山三郎氏の小説で「官僚たちの夏」と言うのがある。そのモデルになった通産次官・佐橋滋のイメージが田村成二:事務次官と重なると言う人が沢山いる。
田村氏の様な官僚こそいま日本を救う官僚ではないかと思うにのある。
(えびなたろう)