つれづれの記

日々の生活での印象

原発事故の収束は?

2011年07月29日 17時47分51秒 | 日記
2011年7月29日(金) 原発事故の収束は?


 先日の、7月19日、原発事故処理の進捗状況が、原子力災害対策本部 政府・東電統合対策室名で公表された。 去る、4月17日に、東電から、事故の収束に向けた道筋のロードマップ(工程表)が、初めて示されてから、ほぼ、3ヶ月後になり、今回は、当初設定した、ステップ1の目標時期という、節目になる。
 この時点で、 報告では、“安定的な冷却を実現し、放射線量を着実な減少傾向にもっていく”という、ステップ1の目標は達成された、としたが、やや無理をした、楽観寄りの評価、のように思われる。

 原子炉や燃料プールの安定的・継続的な冷却と、圧力容器への窒素ガスの注入等によって、水素爆発などの、新たな大量の放射性物質の放出という、重大事態を未然に防ぎ、冷却によって発生する滞留水を、除染処理して再利用しながら減少させ、作業環境を確保するとともに、周辺環境への流出を避ける、と言う、綱渡りの作業が続けられている。
 滞留水を処理して減らしながら、原子炉の継続的な冷却を行うという、「循環注水冷却」システムが、安定的に稼働することが、当面の最大の課題なのだ。システムの稼働当初に頻発した、各種不具合も、なんとか克服でき、最近は、特に大きなニュースは、聞こえては来ないのだがーー。便りの無いのはいい便り、と解釈していいのかな?

 今回、公表された資料によれば、循環注水冷却システムの試験運転を、6月後半から開始してから、7/18までの、滞留水処理の状況は、以下の図のようになっている。


 図で、日ごとの処理量が、赤棒グラフ(左目盛)、累積処理量が、青折れ線グラフ、累積注水量が、黄折れ線グラフ(共に右目盛)で示してある。
 グラフで見る限り、1日の目標処理量(1200トン/日)に到達したのは、1回だけで、後半には、却って減少するなど、順調に稼働しているとは、とても言えない。 稼働率を、90%とすると、1日あたり処理量は、
   1200×0.9=1080トン  
となるが、これを越えたのは、グラフにある横軸の32日の中で、7回程しかない。スタートから、初期の1週間程を除いた以降の、平均稼働率が、70%とすると、平均処理量が、840トンとなる。 
 グラフに入っていない、ごく最近の状況はどうなのかも、気になるところだ。 これらのデータは、何処かに公表されていると思われるが、調査は出来ていない。

 滞留水の処理には、かなりの時間がかかるようだ。当ブログに掲載した下記の記事
     原発事故収束の命綱  (2011/6/25)
の時点で示した試算では、

  滞留水総量            110000トン
  処理能力/日             1200トン
  注水量/日               400トン
  実効処理能力/日 200-400=800トン
  処理所要日数 110000/800≒137日

となり、順調に捗っても、滞留水が無くなるのが、137日後の、この11月下旬頃になる計算となる。今回の見直しで、前提となるこれらの数値が、変わっていないかは、未確認である。

上記のグラフを、2つの累積量が増加傾向を示している、グラフ中程左の、6月29日以降について、改めて良く見て見る。グラフの最終日の7月18日時点では
   累積処理量 23480トン
   累積注水量 約6800トン(正確な数値は示されていないので、目視推定)
とすると、6/29~7/18の20日間の累積処理量は
   23480-約6800=約16680トン
になるので、一日当たりの実効処理量にすると
   16680/20=834トン
と、目標の、800トン以上になっている! 棒グラフで見る限りは、1日ごとの処理量では、殆ど目標数値には到達していないのに、累積値で見ると、処理目標を越えている、と言うのは、おかしいのだがーー!?? 

 今後は、各原子炉の、冷温停止状態を実現する、ステップ2に入るが、この時期目標は、3~6カ月後と、前回から変更はされていない。
 ステップ2の目標時期である、3~6カ月後に相当するのは、10月中旬~1月中旬に、なる。滞留水の処理状況が、上述のように、少しはっきりしないので、なんとか、年内には完了したとしても、これと並行した作業/これに続く作業で、各原子炉で、冷温停止状態を、1月中旬に実現するのは、かなり厳しいのではないか。果たして来年は、どんな状況で正月を迎える、こととなるのだろうか。

 現在の、循環注水冷却システムは、言うまでも無いが、応急的な、寄り合い所帯の集合体であり、システムの中に、十分にはコントロール出来ていない、言ってみれば、垂れ流し式の部分がある事が、最大の弱点である。 今後、地震や台風や、他の人為的な要因等により、バランスが崩れてしまいそうに見える。
 又、このままでは、事故原子炉に関する、今後の、長期間に亘る本格的な作業に向けても、問題があるように思う。
 従って、ある早い段階で、原子炉の圧力容器や格納容器の、「漏れ」を完全に補修し、原子炉に熱交換器等を直結して、直接、循環冷却する方式に切り替え、安定的に冷温停止状態を実現する必要がある、のではないだろうか。
 これらの作業の難易度については、素人には、判断できないところだがーー。

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