ケイの読書日記

個人が書く書評

香山リカ「私はうつ」と言いたがる人たち

2008-10-06 11:07:43 | Weblog
 すごく刺激的なタイトル。香山リカさんは売れっ子精神科医なので、患者さんも多くかかえているだろうが、その人たちがこの本を読まないでいてくれることを祈る。

 精神科の場合、患者さんの自己申告症状で診断するから「うつ病」になりたい人が「うつ病」の診断書をかちとることは容易だろうが…。
 しかし、現役の精神科医がそんなに簡単に認めていいんだろうか? 私はもっと高度な診療テクニック、判断基準があると思っていた。

 でも朝青龍の時も、精神科医のそれぞれが言う事はバラバラだったし、著名な犯罪者、例えば宮崎勤の精神鑑定についても、三者三様の鑑定書で、結局何が本当なの? 精神科医っていいかげんよね、と憤慨したものだった。


 本書の中には、うつ病で仕事を休職しリハビリがてら海外語学留学に行く「うつ病セレブ」、うつ病だと言う事が会社に知られると即クビなので、必死に働き続ける「うつ病難民」といった格差についても書かれている。

 前者は公務員や大企業の正社員、後者は零細企業従業員や非正規雇用者である。


 しかし…休職中にリハビリとして海外に行くほど、タフな神経をしているなら、うつ病にならないような気がするが…。その穴埋めで必死に働いている人たちに申し訳ないような気がする。
 それとも、こういう考えを持つ事が、うつ病の治癒を遅くする事なんだろうか?
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伊藤たかみ「8月の路上に捨てる」

2008-10-01 13:51:47 | Weblog
 第35回芥川賞受賞作品。ずいぶん前のような気もするが、2006年の作品なんだ。なんだ、2年前なだけか…。

 脚本家をめざしてフリーターを続けていた29歳の男が、学生時代から同棲していた女房と離婚に至った経緯を、淡々と書いている。

 男は脚本家になる夢を追いかけ、女はその夢を応援するため、生活費を稼ぐ事を一手に引き受け、やりたくもない仕事をやっている。
 一見、夫婦愛の美談のようだが、内実は違う。男は内心脚本家になる夢をすっかりあきらめ、女から「きちんと就職しなさいよ」と引導を渡される事を望んでいる。
 しかし女は、男の夢にちゃっかり乗っかり、男の夢を自分の夢にする事に生きがいを感じている。

 こういうことって、あるだろうね。別に就職しても脚本は書ける。女房に生活費のほとんどを出してもらう事によって、かえって良い脚本が書けなくなっちゃう。

 また、上手く脚本家で成功したとしても、古女房から「あなたが無収入の時代、私が支えて…」なんて事を言われたら、感謝の気持ちはどこかに吹き飛んで、憎しみすら覚えるだろう。

 まあ、自分の夢は自分だけで追ってください、という教訓ですね。
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