ケイの読書日記

個人が書く書評

伊藤たかみ「8月の路上に捨てる」

2008-10-01 13:51:47 | Weblog
 第35回芥川賞受賞作品。ずいぶん前のような気もするが、2006年の作品なんだ。なんだ、2年前なだけか…。

 脚本家をめざしてフリーターを続けていた29歳の男が、学生時代から同棲していた女房と離婚に至った経緯を、淡々と書いている。

 男は脚本家になる夢を追いかけ、女はその夢を応援するため、生活費を稼ぐ事を一手に引き受け、やりたくもない仕事をやっている。
 一見、夫婦愛の美談のようだが、内実は違う。男は内心脚本家になる夢をすっかりあきらめ、女から「きちんと就職しなさいよ」と引導を渡される事を望んでいる。
 しかし女は、男の夢にちゃっかり乗っかり、男の夢を自分の夢にする事に生きがいを感じている。

 こういうことって、あるだろうね。別に就職しても脚本は書ける。女房に生活費のほとんどを出してもらう事によって、かえって良い脚本が書けなくなっちゃう。

 また、上手く脚本家で成功したとしても、古女房から「あなたが無収入の時代、私が支えて…」なんて事を言われたら、感謝の気持ちはどこかに吹き飛んで、憎しみすら覚えるだろう。

 まあ、自分の夢は自分だけで追ってください、という教訓ですね。
コメント
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