ケイの読書日記

個人が書く書評

「朝、目覚めると、戦争が始まっていました」 方丈社

2019-04-11 15:15:29 | その他
 昭和16年(1941年)12月8日、太平洋戦争勃発。あの日、日本人は戦争をどう感じ、何を考えたか? 当時の知識人・著名人の日記や回想録から、ピックアップしてある。

 予想していたことだけど、ほとんどの人が開戦を大喜びしている。
 例えば、童話作家の新見南吉は「いよいよ始まったかと思った。何故か體ががくがく慄へた。ばんざあいと大聲で叫びながら駆け出したいやうな衝動も受けた」らしい。
 思想家の吉本隆明も「ものすごく開放感がありました。パーーーッと天地が開けたほどの解放感でした。」吉本隆明の場合、戦中は軍国少年だったと自覚している。
 日米開戦のニュースを聞いて憤ったのは、プロレタリア文学者の数名くらい。

 そうだろうよ。日清・日露戦争に勝利し、日中戦争も勝ち進んでいるという報道がされている。ゴチャゴチャいうアメリカなんか蹴散らしてしまえ!!鬼畜米英!神国日本!なんて、全く現実を知らない空想がまかり通っているんだもの。

 でも、外国の軍事力事情を知っている軍の上層部や政府高官は、事態をちゃんと把握していた。元首相の近衛文麿は、こう回顧している。「今朝はハワイを奇襲したはずだ。僕の在任中、山本五十六君を呼んで、日米戦についての意見を叩いたところ、彼は初めの一年はどうにか保ちこたえられるが、二年目からは全然勝算はない。故に軍人としては、廟議一決し宣戦の大命降りれば、ただ最善を尽くしてご奉公するのみで、湊川出陣と同じだ、といっておったが、山本君の気持ちとしては、緒戦に最大の勝利を挙げ、その後は政府の外交手腕発揮に待つというのが心底らしかった。それで山本君は、それとなくハワイ奇襲を仄めかしていたんですヨ」(内田信也『風雪五十年』実業之日本社)

 分かってたんだよ。最初から。国力が全く違ってお話にならないって。相手の準備が整わないうちに殴りつけ、有利な条件で手打ちにしようと都合のいい事考えていたんだ。バ・カ・ヤ・ロ・ウ!! 

 外国の事情をよく分かっていて、全く勝ち目がないという事を知っていた人たちの罪は、本当に重いと思う。 
 それにしても、インターネットも無くて、海外旅行や留学なんて夢のまた夢の時代に、日本国内で自国の勝利を祈って、願って、信じて、戦っていた人たちがいじらしいです。
コメント
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