ケイの読書日記

個人が書く書評

恩田陸 「クレオパトラの夢」  双葉文庫

2018-11-15 15:25:44 | 恩田陸
 神原恵弥シリーズの第2作。やっぱり第1作より、ちと落ちますね。でも十分面白い。

 北海道のH市を訪れた神原恵弥。不倫相手を追いかけて行った妹を連れ戻すのが目的だが、実は、その裏に別の思惑もあった。このH市には、ずっと以前から『クレオパトラの夢』と呼ばれる、けっして存在してはいけないものが、密かに受け継がれていた形跡があるのだ。果たしてそれは…。

 主人公の神原恵弥は、外資系製薬会社に勤めていて、ウィルスハンターを仕事にしているので、その『存在自体が絶対の禁忌』というモノがどんなモノか、だいたい推測できる。

 核兵器って本当に恐ろしいけど、生物兵器の方が、もっともっと恐ろしいよね。通常兵器が使われると、人間もいっぱい死ぬが、建物も瓦礫の山になって、「ああ、これが戦争なんだ」と実感するだろうけど、生物兵器って、人間は細菌やウィルスでバタバタ死んでいくのに、建物はそのまま。ゴーストタウンになって不気味だと思う。

 だから、戦争を始める為政者は、戦争後の復興の経済的負担を考えると、通常兵器を使うよりも、生物兵器を使いたいだろうなって思う。(もちろん生物兵器は禁止されている)
 でも、ワクチンを作って、自分たちは接種済みで安全。だから、自分たちは生物兵器の被害を受けないと楽観していても、ウィルスってどんどん変化していくらしいから、感染が広がり、ウィルスがモンスター化し、どんなワクチンも効かなくなることだって考えられる。
 いやーーー、恐ろしい。

 そもそも、世界が終わってしまえ!と生物兵器の自爆テロを起こす人がいれば、防ぎようがないだろうね。

 山岸涼子の『日いづる処の天子』の中で、天然痘(日本では疱瘡と呼んだ)で、人がバタバタ死ぬ、もちろん帝や皇子たちも例外ではなく死んでいく場面があった。何年かの周期で大発生し、自然に収まるのを待つしかなかった。
 どうやって自然に収まるんだろう? だって、ものすごい感染力なんでしょう? 結局、隅々までウィルスがいきわたり、ほとんどの人が免疫を持つようになったら、自然に終息するんだろうか?

 この『クレオパトラの夢』の中に、新大陸アメリカに上陸したヨーロッパ人が、敵対する原住民のインディアンに、天然痘患者の毛布を送り付ける話がある。これは史実として本当らしい。
 いやぁ、スゴイことやるね。もともとアメリカには天然痘ウィルスはなかったらしく、全く免疫を持たないインディアン達は次々死に、数万人いた村人が数百人になったというケースもあったとか。

 あくどい!!!! 本当に誰がこんなあくどい事を考えたんだろうか! ああ、でも日本人も731部隊の話とかあるし、人の事いえないんだよね。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする