ケイの読書日記

個人が書く書評

津村記久子「カソウスキの行方」 

2016-05-17 14:33:52 | 津村記久子
 「カソウスキ」って何だろう? 植物の名前かしら? などと不審に思いながら読みだす。津村記久子の小説って、そういう事がよくある。『アレグリアと仕事はできない』という彼女の小説があるが、アレグリアとはコピー機の型式の名前で、女の子の名前ではない)
 「カソウスキ」というのは、どうも仮想で好きになった相手、あるいはその状態をいうらしい。


 イリエは20代後半のOL。事務機器卸の会社で営業事務をしていて、女子社員の中心となって、せっせと働いていた。
 ある時、後輩と上司のもめ事に首をつっこんだせいで、僻地の倉庫勤務となる。つまり飛ばされた。すっかりヤル気をなくす。会社に行きたくなくて会社を辞めたくて仕方がないが、生活のため仕事を辞めるわけにはいかない。 
 なんとかモチベーションを上げようと、倉庫の商品管理をしている森川に自分は恋していると思い込もうとする。あまりうまくいかないが…。
 はたして、その恋の行方は?

 津村記久子の小説を気に入って読んでいるが、時々、この人、うら若き乙女なのに、恋愛にこんな淡白でどうするんだよ!!! と思う時がある。
 女流作家って肉食系の人が多く、自分の恋愛体験を赤裸々に書いてあって、読んでるだけでお腹一杯になったりする事がある。
 非恋愛体質で、恋愛に対して低体温の津村さんだが、この「カソウスキの行方」を読んで、少しはそういった気持ちの揺れの経験があるんだな、と安心した。


 同時収録されている「Everyday I Write A Book」と「花婿のハムラビ法典」も少し恋愛テイストが入っている。彼女にしては珍しい。特に「Everyday~」は、主人公の野枝が、ほのかにあこがれていたデザイナーが他のミュージシャン兼絵本作家の女の子と結婚してしまい、理不尽にもその女の子に嫉妬する所が書かれている。
 別に野枝は、そのデザイナーと付き合っていた訳じゃない。友人の結婚式の二次会で一度見かけただけなのだ。
 しかしブログを開けば、彼と彼女の幸せそうな様子がUPされている。こういう所がブログって困る。「風の便りに小耳にはさんだ」が出来ない。ストレートに幸せな近況が分かっちゃうからつらいのだ。別に見なければいいけど、止めようと気にすればするほど見てしまう。とっても迷惑。そう思っている人、多いのでは?


***最近、体調が悪く、ブログの更新の間隔が開くかもしれません。でも、続けますので、今後もよろしくお願いします。
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