本書はいろんなところで取り上げられているようですが、読んでみると人気が出るだけのことはあるなと納得。
人間は合理的な行動をするという前提であった従来の経済学に対し人間は様々な要因で不合理な行動をするということを前提にして最近注目を集めている行動経済学について、人間がいかに様々なことに影響されて不合理な行動に陥りやすいかについて(これがまた面白い)実験結果などを元にわかりやすく語っています。
中でも印象深かったのが、社会規範(お金の絡まない関係)が市場規範(お金の絡む関係)と衝突すると社会規範が消えて市場規範が残る、というもの。
これは他の「不正直」の実験とあわせて、専門家の職業倫理(社会規範)が低下すると取り戻すのは容易ではないという教訓を導きます。
本書で例に挙げられているのは(当然アメリカの)弁護士や医師ですが、昨今のサブプライム問題の一因ともなった格付け機関や、日本でも不正経理に加担する会計士とか不動産ファンドの圧力に負ける不動産鑑定士とか最近案件が減ったのでタイムチャージを稼ぐためか急に契約書の細かい論点にこだわるようになったファイナンス系の弁護士とかを想起させます。
また、「不正直」の実験では人間は現金がからんだ場合より現金のからまない場合の方が不正をしやすい(たとえば現金を盗む犯罪被害額よりも保険金の不正受給額のほうが桁違いに多いなど)というところも印象的です。
アメリカにおけるエンロン事件や日本の新興市場などでの怪しげな増資やM&Aや循環取引なども心理的な障壁が少ないことも一因なのかな、と思ったりもしました。
確かに数字(帳簿だとか合併比率だとか)をいじればお金が回るという誘惑は大きいですし、それにFA(ファイナンシャル・アドバイザー)などはもともと市場規範オンリーの人々だったりしますからそこをいかに事前・事後で監視するかが会計監査人や証券取引所の役割として議論されているわけですね。
ところでふと気がついたのですが、「行動経済学」というネーミング自体が「アンカリング」(物をある価値と関連付けて「刷り込み」をすることで高い価格を受け入れやすくする)のいい見本ですね。
競争の厳しいアメリカの大学で、ポストや講座やスポンサーを獲得するためには一番必要な工夫なのかもしれません。
(もちろん著者はそんなことは言ってませんが・・・)
人間は合理的な行動をするという前提であった従来の経済学に対し人間は様々な要因で不合理な行動をするということを前提にして最近注目を集めている行動経済学について、人間がいかに様々なことに影響されて不合理な行動に陥りやすいかについて(これがまた面白い)実験結果などを元にわかりやすく語っています。
中でも印象深かったのが、社会規範(お金の絡まない関係)が市場規範(お金の絡む関係)と衝突すると社会規範が消えて市場規範が残る、というもの。
これは他の「不正直」の実験とあわせて、専門家の職業倫理(社会規範)が低下すると取り戻すのは容易ではないという教訓を導きます。
本書で例に挙げられているのは(当然アメリカの)弁護士や医師ですが、昨今のサブプライム問題の一因ともなった格付け機関
また、「不正直」の実験では人間は現金がからんだ場合より現金のからまない場合の方が不正をしやすい(たとえば現金を盗む犯罪被害額よりも保険金の不正受給額のほうが桁違いに多いなど)というところも印象的です。
アメリカにおけるエンロン事件や日本の新興市場などでの怪しげな増資やM&Aや循環取引なども心理的な障壁が少ないことも一因なのかな、と思ったりもしました。
確かに数字(帳簿だとか合併比率だとか)をいじればお金が回るという誘惑は大きいですし、
ところでふと気がついたのですが、「行動経済学」というネーミング自体が「アンカリング」(物をある価値と関連付けて「刷り込み」をすることで高い価格を受け入れやすくする)のいい見本ですね。
競争の厳しいアメリカの大学で、ポストや講座やスポンサーを獲得するためには一番必要な工夫なのかもしれません。
(もちろん著者はそんなことは言ってませんが・・・)
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