一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

エスカレーターは本来危険な乗り物?

2008-08-05 | よしなしごと

首都高速に限らず世の中には危険がいっぱいのようです。

非常停止ボタン後も下降の疑い エスカレーター事故
(2008年8月4日(月)15:04 朝日新聞)  

東京都江東区有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で3日、上りのエスカレーターが急停止した後、下に動いて10人がけがをした事故で、非常停止ボタンが押された後も下降が止まらなかった疑いのあることが警視庁の調べでわかった。非常停止ボタンを押せば、動力が切られてブレーキがかかり停止する仕組みだが、それが機能しなかった可能性がある。  
(中略) 
5月に名古屋市の地下鉄駅で同型のエスカレーターが停止し、14人が負傷した事故では、ブレーキをかける制御装置の台座を固定するボルトの一部が折れており、ブレーキが十分に利かなかったとみられる。  

事故時、逆走エスカレーターにはブレーキ限界を超える重み
(2008年8月4日(月)23:08 読売新聞)

東京都江東区の東京ビッグサイトで3日、上りエスカレーターが逆走し、乗っていた10人が軽傷を負った事故で、このエスカレーターが緊急停止する際に作動するブレーキは、9・36トンの重さまで耐えられる設計だったことがわかった。  
製造元の「日本オーチス・エレベータ」(中央区)の幹部が明らかにした。  
事故当時、エスカレーターは緊急停止した後、数メートル下に動いていたことから、警視庁は、9・36トンを超える重量の人数が乗っていたため、ブレーキが耐えきれずに逆走したとみている。  
建築基準法では、事故機と同規模のエスカレーターは、少なくとも7・5トンの重量の人数を運べるモーターを設置するよう規定している。  
同社によると、事故を起こしたエスカレーターは重量が7・5トンを大幅に上回った場合、安全装置が働いてブレーキが作動し、徐々に減速しながら止まる仕組みで、9・36トンまで耐えられるよう設計されていた。  
9・36トンの重量は、各ステップに体重約60キロの大人2人が乗った状態。


社団法人日本エレベーター協会のサイトの「安全のための装置」の項目を見ると

停電や故障などで、動力(モーター)がストップした場合も、前項(1)と同じようにエスカレーターは下降を始めます。動力の切断と同時にブレーキが掛かり、危険が回避されます。

とあります(ところが「前項(1)」がどこにあるのかわからない・・・)
また  

この安全装置は下記の法令によって定められています
建築基準法施行令 第129条の12  
建設省(国土交通省)告示第1424号

なので施行令を見ると(参照)  

(エスカレーターの構造)
第129条の12
1 エスカレーターは、次に定める構造としなければならない。(以下略)
2 建築物に設けるエスカレーターについては、第129条の4(第3項第五号を除く。)及び第129条の5第1項の規定を準用する。(以下略) 

※第129条の4を読み替えた第129条の12第2項は  

(エスカレーターの構造上主要な部分)
1 エスカレーターの踏段及び踏段を支え、又はつる構造上主要な部分(以下この条において「主要な支持部分」という。)の構造は、次の各号のいずれかに適合するものとしなければならない。  
一)設置時及び使用時の踏段及び主要な支持部分の構造が、次に掲げる基準に適合するものとして、通常の使用状態における摩損及び疲労破壊を考慮して建設大臣が定めた構造方法(告示未制定)を用いるものであること。 (以下略)

3 エスカレーターの踏段の積載荷重は、次の式によって計算した数値以上としなければならない。 (以下略) 
4 エスカレーターには、制動装置及び昇降口において踏段の昇降を停止させることができる装置を設けなければならない。  
5 前項の制動装置の構造は、動力が切れた場合、駆動装置に故障が生じた場合、人又は物が挟まれた場合その他の人が危害を受け又は物が損傷するおそれがある場合に自動的に作動し、踏段に生ずる進行方向の加速度が1.25メートル毎秒毎秒を超えることなく安全に踏段を制止させることができるものとして、建設大臣が定めた構造方法(平成12年建設省告示第1424号(参照))を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたものとしなければならない。  

と事細かに定められています。 

要するに①十分な強度と耐久性をもった構造を持ち、②一定レベルの積載荷重に耐え、③緊急時のための制動装置(しかも急停止しないような)を備えることが求められています。  

上の記事が正確だとすると、今回は制動装置が作動しなかったか作動した後に壊れてしまったということのようです。  
本件の原因は定期点検の不備や部品交換を怠ったためなのかも知れませんが、施行令を読んでみると、仮に積載荷重(設計強度)の安全率すら超えるような荷重がかかった場合や、駆動方向と逆方向に力がかかった場合の(進行方向の動きを「制動」するのでなく)「逆進防止」には、今の基準では対応できていないようにも読めます(素人なので読み方が甘いのかもしれませんが)。
また「各ステップに体重約60キロの大人2人が乗った状態」が耐荷重の限界というのは基準が低すぎるようにも思います。

もっとも、そもそも「どんなに重いものが乗っても壊れないものを作る」というのは不可能なわけなので、過積載による事故を防ぐには一定以上の荷重がかかった時点で入口を閉じるなりして人の流入を防ぐような機能が必要になります。 

ただ、次々と人が押し寄せているような状態では、入り口を閉じるとかえって将棋倒しや圧死のリスクが生じます。  

なかなか難しい問題です。  


ところでふと思ったのですが、エスカレーターの基本構造図を見ると、エスカレーターはそれぞれの踏み台がチェーンで連結していて、制動装置は一か所の歯車を固定しているだけのものなので、停止しているエスカレーターといえども、積載荷重をはるかに超える荷重がかかった場合には制動装置が壊れると勝手に動き出すことになります。
ということは、大地震などでデパートやビルや駅から避難する場合には止まっているエスカレーターを会談代わりに使うのは危険だ、ということですね。


余談ですが(そして何のなぐさめにもならないのですが)、エレベーターはかごの反対側の重りでバランスを取っていて、重りはカゴ+定員の1/3とか1/4くらいが乗っている想定の重量なので、一人で乗っているときにブレーキが壊れると、カゴは落ちるのではなく上昇するのだそうです。


普通に生活するにも一定の注意力と緊張感が必要な世の中になってきたのかも知れません。

コメント
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