一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

「私は既に死んでいた」と言われてもねぇ

2008-08-14 | あきなひ

アーバンコーポが再生法を申請、今年最大の倒産で負債総額2558億円
(2008年8月13日(水)19:15 ロイター)

当社の民事再生手続開始の申立てに関するお知らせ

・・・しかしながら、米国におけるサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融市場の混乱及び信用収縮、これを受けた日本の不動産投資市場の沈静化により、昨年末以降、当社は、新規融資による資金調達や短期借入金の借り換えが困難となるとともに、開発済不動産の売却も困難な状況に陥りました。

2008年3月期の有価証券報告書を見ると、SPCを使った不動産開発の棚卸資産=ノンリコースローンの対象が本体の倍もあるので、「当社の借り換え」が困難になったのではなく、そっちのリファイナンスがつまったのでは、とか「ノンリコース」なんだから資産を捨ててデフォルトさせてしまえばいい、というわけにもいかないというのがビジネスモデルの構造としてあるんじゃないか、というあたりも興味があるのですが、それよりもまずいんじゃない?というのが

(訂正)「2010 年満期転換社債型新株予約権付社債の発行(第三者割当)のお知らせ」

【訂正箇所】
2.調達する資金の額及び使途
(2)調達する資金の具体的な使途
(訂正前)
本件取引により調達する資金につきましては、財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定であります。
(訂正後)
本件取引により調達する資金につきましては、割当先との間で締結するスワップ契約に基づく割当先への支払に一旦充当し、同スワップ契約に基づく受領金を財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定であります。
【訂正の理由】当社は、BNP Paribas S.A.(以下「BNP パリバ」といいます。)を割当先として2010 年満期転換社債型新株予約権付社債(以下「本新株予約権付社債」といいます。)を発行するに際して、発行時の2/6状況下における資金調達及び資本充実の高度な必要性等を踏まえ、BNP パリバと協議の上、BNP パリバとの間で、平成20 年6 月26 日及び7 月8 日にそれぞれスワップ契約(以下あわせて「本件スワップ契約」といいます。)を締結しております。
(中略)
当社は、上記のとおり、本新株予約権付社債により調達した300 億円を一旦本件スワップ契約に基づくBNP パリバに対する当初支払に充当しつつ、上記のような本件スワップ契約の特徴から当該支払後直ちに日々相当額の支払がBNP パリバから短期間でなされることを想定し(当時の株式出来高から7 月8 日付スワップ契約に基づくBNP パリバからの支払は1 ヶ月程度ですべて行われると想定)、当該支払を受ける都度短期借入金を始めとする債務の返済に使用することとしていたために、本件お知らせにおいては、かかる最終の使途のみを開示いたしました。しかしながら、本件スワップ契約において、出来高加重平均株価の算定の基礎となる当社株式の価格に一定の下限が設定されていたところ、当社の市場株価が本件スワップ契約締結時の当社の想定を超えて大幅に下落したため、本日までの本件スワップ契約に基づくBNP パリバから当社に対する支払額は、当社の当初の想定を大幅に下回っています。
(中略)
当社は本日民事再生手続開始の申立てを行いましたが、当該申立ては、本件スワップ契約の終了原因に該当し、その結果、本件スワップ契約に基づくBNPパリバからの支払いを当初の想定どおり当社債務の返済に充当することもできないことが確定するとともに、本件スワップ契約に基づき当社に58 億円の営業外損失が発生することが確定しました。

この社債を発行当時は、アーバンコーポレーションの株価にとってpositiveなニュースとして受け止められていたと思うのですが(当時あまり詳しくは見てませんでしたが)、同日付のスワップ契約で資金を還流しているというのを黙っていたとしたら、適時開示の問題以上に風説の流布(不利益な情報を流布しなかった?)にはならないのでしょうか。

しかも上記リリースの末尾のスワップ契約の概要を見ると「各計算日において当社株式が下限株価以上で取引した取引のみから計算した売買高加重平均株価」をベースに支払額が計算されることになっています。
この下限株価は250円(7月25日までは175円)です。

ところが実際の株価の推移はこのようになっていて


 

ほとんどの期間で下限株価にヒットしていて支払いがなされていなさそうです。
そればかりか、社債発行当時の株価自体が下限株価に近く、そもそもこの契約の経済合理性には疑問があります。
また下限株価を社債発行当初だけ低く設定していることも、この社債発行によって株価が上昇するという「一発勝負」にかけた感じがします。

ここにきてさすがにまずいと思ったのか、民事再生を申し立てるにあたって申立で代理人弁護士から言われたのか、同日付の平成20年度第一四半期の決算短信にも後発事象としてちゃっかり書いてあります。



ライブドアMSCBは社債の発行条件として転換価格調整のメカニズムが織り込まれていたので届出や開示の対象になり、その調達の是非(巧拙)が話題(+市場のターゲット)になりましたが、その轍を踏まずに裏側でスワップ契約を結ぶことで開示を逃れて起死回生を狙ったように思えます。


同社の「不動産流動化事業」のキャッチフレーズは

あらゆる角度から、他にない価値を創造すること。

のようですが、ちょっとやりすぎのようで。

 

コメント (2)
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