一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

ネット取引と適合性の原則

2006-01-20 | あきなひ
昨日(1月18日)の日経新聞の隅っこに、東証の取引停止に関連してネットで信用取引をしていて株価の急落に追加証拠金を求められた個人投資家がポジション清算のための売り注文に殺到したというエピソードの中で、証券会社に対して信用取引口座を開設していながら「追加証拠金ってなに?」という質問をしてくる個人投資家もかなりいた、というエピソードがありました。

この記事は、昨年来の株価上昇の中でリスクの認識のないネット投資家が増えているという文脈でしたが、このままライブドア株がほとんど商いが成立しないまま上場廃止になったときに、ライブドアの信用買いがポートフォリオの大半を占めている個人投資家の中には、強制決裁されて追加証拠金も払えなくなる人が出てくる可能性もあります。

また、今回マネックス証券がいち早くライブドア関連株式の担保評価をゼロにしたことが個人投資家にポジション清算を強要し、狼狽売りの原因になったと言われて、各所(特にいろんなblog)で非難されています。


しかし、そもそも証券会社は信用取引においては顧客に信用供与する立場なので常に時価で担保評価をするのは当然ではあります(これは都市銀行らがバブル崩壊時に担保の土地の評価が下がったといって融資返済を迫ったのと同じですね)


となると問題は、信用取引は通常の株の売買取引と違い、顧客と証券会社の利害が対立する構造にあり、約定上は証券会社の裁量・強制決裁権限が強いということをどこまで説明し、個人投資家が理解していたか、という部分だと思います。

投資サービス法案では「適合性原則」(投資勧誘はその投資家の知識・能力に適合したものでなければならない=顧客の知識・経験及び財産の状況に照らして、不適当と認められる勧誘を行ってはならないという投資家保護のルール)が規定される事になりそうです。

現在でもネット証券会社は適合性の原則を意識して、信用口座を開設するときには過去の投資経験や取引内容の理解の確認をしています。具体的には「説明資料を読みましたか?」「追加証拠金の預託義務があること(投資額以上の損失を蒙る可能性のあること)を認識していますか?」というような質問に答えさせるようになっています。
それによって「この商品を購入するのに十分な知識を持っている(または説明をした)」と判断しているようです。

しかし、現に仕組みを理解していないと思われる顧客が相当数いると推測されるのであれば、投資サービス法の施行をにらんで説明・同意の取り方を再検討する必要があるんじゃないでしょうか。


たとえば、今回の損失で個人投資家がネット証券会社に対して「信用取引制度の説明義務違反だ」として損害賠償(追加証拠金の弁済の免除?)を求めてきたらどうなりますかね?


ネット取引という相手の顔が見えずに定型的な手続きのしかできない取引において適合性の原則を充足するためにはどうするか、という問題はけっこう大きいんじゃないかと思います、
コメント (4)
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