一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

資格制度で大事なこと

2006-01-12 | あきなひ

耐震偽造:ERIなど検査補助員2人 建築判定資格に合格
(毎日新聞 2006年1月12日 3時00分)

 耐震データ偽造事件で、姉歯秀次・元1級建築士の改ざんを見抜けなかった国指定確認検査機関「日本ERI」(東京都港区)と同「イーホームズ」(新宿区)の検査補助員2人が、05年度の国土交通省検定「建築基準適合判定資格者」に合格していたことが分かった。建築確認の権限を持つ特定行政庁の建築主事と同等の資格で、「みなし公務員」とされる。国交省は「合否判定に問題はない」としているが、実務での致命的なミスが反映されない検定のあり方は、建築確認制度の信頼性をいっそう揺るがしそうだ。

この記事はちょっと調子に乗って弱いものイジメをしているように思います。


資格試験で最終試験の前に実務経験を求めるものはいくつかありますが(公認会計士、不動産鑑定士など)、そこの実務の内容が合否に影響をあたえることはありません。
それは資格要件として「実務で経験を積む事」を求めていて、実務経験全般が実地試験ではないからです。

当然実務経験中には失敗をするでしょうが、そこから学ぶ事を期待しているのだと思います。たとえば研修医が最初からすべてうまくできなければ国家試験を受けられない、というのでは誰も医者になれません。
また、会計監査人の不正があった場合に、その監査チームにいて末端の作業をした会計士補が公認会計士の三次試験を受けられない、というのもおかしいと思います。


本来資格制度においては実務経験中(「補」の資格)の人は単独では有資格行為をできないはずなので、指導・監督をすべき立場の資格者に対してこそ資格の停止や剥奪をすべきなのではないでしょうか?

ちなみに建築基準法では

(登録の消除等)
第七十七条の六十二
国土交通大臣は、次の各号の一に掲げる場合は、第七十七条 の五十八第一項の登録を消除しなければならない。
 (省略:不正な手段での登録のようなものです) 
2  国土交通大臣は、建築基準適合判定資格者が次の各号の一に該当するとき は、一年以内の期間を定めて確認検査の業務を行うことを禁止し、又はその登録 を消除することができる。
一  第七十七条の二十七第一項の認可を受けた確認検査業務規程に違反したと き。
二  確認検査の業務に関し著しく不適当な行為をしたとき。

とあります。
なのでまず、偽造を見逃したことが「著しく不適当な行為」なのか、について国土交通省の見解を問うのが先だと思います。


資格制度の論点は別のところにあると思います。


公的資格には一度獲得すると死ぬまで検定を受けないで資格を維持できるというのがほとんどです。
弁護士、公認会計士から個人タクシーまでほとんどそうだと聞いています。

以前深夜に周りの交通の流れに乗らずに身の危険を感じるくらいゆっくり走る高齢者運転手の個人タクシーに乗ったことがありますが、専門家でも時代のニーズに知識・能力が追いつかなくなることはあると思います。
資格者が当初持っていた能力を低下させる要因は、努力不足、事故・病気等いろいろあるでしょうが、一般に資格者はモラル高く自己研鑽に励むというのが制度設計の前提にあり、万が一資格要件に満たない程度に能力やモラルが低下した人たちは、資格者団体における懲戒やマーケットの中で顧客を失う事で淘汰されていくはず、というのが基本的な考え方だと思います。

ただ、本当にそれでいいのか、資格や業務内容によっては一定の継続的な能力査定を行うことも検討すべきではないでしょうか?

本当の問題はそっちにあると思います。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする