一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

強引なのはもうウケないのでは?

2006-01-31 | M&A

(2/1追記あり)

※ オチもひねりもないエントリになってますので備忘録程度に。

イオン、オリジン東秀にTOB ドンキと争奪戦に
(2006年 1月30日 (月) 23:26 朝日新聞)

オリジン株をめぐっては、ディスカウント大手ドン・キホーテがすでに敵対的TOBを実施中だが、オリジンは「企業文化が大きく異なる」と反対している。イオンの提案に対しては、オリジンの取締役会と労働組合がともに賛同を表明しており、イオンが友好的買収者「ホワイトナイト(白馬の騎士)」になった形だ。

ドン・キホーテの公開買付のリリースによると

・・・そのため、当社はオリジン東秀との事業提携を具体化するために、平成17 年8月、創業者のご遺族から発行済株式総数の約23.62%(当社単独では約8.63%)に相当する株式を取得しました。 しかし、・・・両者の事業提携を成功に導く上で必要な条件であるスピードが不足していると言わざるを得ない・・・ そこで・・・両者の事業提携の強化に向け、取締役の派遣などを含めて、オリジン東秀の経営へのコミットメントを高めることを選択し、本公開買付けの実施を決断するに至りました。

これに対して、オリジン東秀の取締役会の TOBに反対の意向表明によると

昨年8月にドン・キホーテ・・・は、当社発行済株式総数の約23%を突如として一方的に取得しましたが、それ以降、当社は、ドン・キホーテがそれらの株式の取得を当社に事前に通知しなかったことの一事に拘泥することなく、・・・事業提携等・・・に関し・・・誠実に同社と協議・・・を行ってまいりました。・・・しかしながら、上記準備過程を通じて・・・問題が多数存することなどが明らかになってきております。・・・しかも、上記協議、検討、検証の過程においても、また、本公開買付けにおいても、ドン・キホーテが「新しい時代の新しいビジネスモデルである」と主張する「次世代型コンビニエンス・ストア」という提案内容の詳細は、未だ当社に示されておりません。

提携について試験的な実施や協議にどこまで本気だったか、というあたりが双方の言い分の食い違うところでしょうが、もともとの23%の株式取得が業務提携についての合意を前提としたものでないとすると、「大株主になったので業務提携をしろ」と土足でづかづかと入り込んだあげくにTOBというのは、ライブドアvsフジテレビ・楽天vsTBSを経た後ではもはや流行らなくなっているやりかただと思います。

当初の株式取得は昨年8月と楽天よりは前だったのでそのまま力ずくで押し切ろうとしているようですが、半年で潮目が変わったので、世間的にはドン・キホーテのやり方は賛同を得られにくいように思います。

また、オリジン東秀にとって、イオングループはThe Body ShopやTalbotなど、資本参加した子会社の独自性を生かしながら育てるのが(本業のGMSより?w)得意な(または目利きがうまい)ようですから、ホワイトナイトとしてはいい会社が現れたんじゃないでしょうか。

※ もともと私はドン・キホーテに対しては悪印象があるので、リリースを見てもオリジン側の方が説得力あるように見えてしまい勝ちであることを申し添えます(^^;

*******************
toshiさんのエントリにコメントされた方が、そもそもドンキの当初の株取得自体が、創業者一族と現経営陣の確執の間に入ったいわばホワイトナイトだ、という指摘がありましたので、ちょっと調べてみました。

もともと創業者社長が店頭公開(97年末)後ガンが発病し、いなげやからスカウトしてきたのが現社長です(2000年6月就任)。その後創業者は会長となるも2002年10月他界しました(このへんの経緯は現社長のインタビュー記事参照)

その後2005年3月にJASDAQから東証2部に上場、8月にドン・キホーテが株を取得してます(この際のオリジン側の他人行儀なリリースはこちら

とまあざっと見たかぎりではどのような確執があったのかよくわからりませんでした。

「会社(特に上場企業)は誰のものか」を考えるときに、「大株主である創業者一族」(尊重されたい気持ちはわからくもないし、現にトヨタなどでは大きな影響力を持っている)、「現経営陣」、「後から買った大株主」、「一般株主」、「TOBをかけるホワイトナイト」のそれぞれの利害関係を考えるいい見本になるかもしれませんね。
(追記までしまらないエントリになってしまった・・・)

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インドについて(つづき)

2006-01-31 | よしなしごと
榊原教授のインドについての講演の続きを備忘録代わりに。

1.インドの強み
(1) 若年人口の多さ
インドは人口の55%が25歳以下。世界の25歳以下の人口の4分の1がインド人(!)である。
若年人口の増加は国力の源泉であり、ゴールドマンサックスの2050年のGDP予測では①中国②アメリカ③インド④日本となっている。
こちらからの孫引きによると、高齢化が進んでいる日本が4位にいますが、規模はインドの1/4以下、5位のブラジルに背後を脅かされている、という構図です。
原典にあたったわけでなく、予測の根拠は明らかでないのですが、2050年の予測というのは信憑性としては昭和30年頃になされた21世紀予測のようなものでしょうし、BRICsブームを後押しする意図があるような・・・

(2) 高等教育のレベルの高さ
インドは激烈な競争社会で、競争を勝ち抜いたエリートのレベルは相当高い。特にITや医学の分野に力を入れている(特に医学は社会主義政権の時から民営化されており、病院も競争に勝ち抜くために最先端の医師と機器を導入し外国からも患者を受け入れている)
今後の企業の競争力が価格要因でなく技術力・ブランド力が問われるようになっていく中で、優位性を持つだろう。

(余談)
都市部・高学歴者の中では特にビジネス上はカーストは意識されておらず(ほとんど話題にすらならないがアンダーカーストのexecutiveも多い)極端な学歴社会。逆に受験競争に勝ち残れば社会階層をあげることができるので、優秀な若者に対しては家族や村を上げてバックアップしている(競争があまりに過酷なので社会問題になっているくらい)

競争が激しいということは社会階層のmobilityにつながり、逆に競争がないと社会階層が定着してしまう。日本では「ゆとり教育」などと競争を排除した教育制度が逆に社会格差を助長し「下流社会」をもたらしているのではないか。
※ ちょうど内田樹先生のblogで「そもそも均質な社会を前提としてそれぞれの社会集団に固有のエートスがあった日本に、均質でない社会を一つの価値観で統一する「グローバル・スタンダード」を導入したことに問題の根源がある」という話もありますのでご参考まで(記事はこちら

2.インドの課題
(1) インフラ整備
ハイテク関係で経済成長をしているインドだが、貧困層は依然として国民の多数を占めており、国民に生活の向上と広く雇用の機会を与えるためにインフラと製造業の整備に力を入れようとしている(現状は中国の30分の1程度の整備状況とか)
これについては「貧困撲滅」ということで与党国民会議派と共産党などの野党の意見も一致しているが、PFI的な手法を導入したりするなかで左派には「外資」への抵抗感もあり、蜜月がいつまで続くかはわからない。

また、国民の権利意識が非常に強く、中国のようにインフラ整備のために一斉に立ち退きをかける、というようなことはまず不可能。

(2) 多様性と意思決定の遅さ
インドは連立政権であり、州ごとに支配的な政党が異なるので多数政党が実現する可能性は低い。しかも国民の権利意識が高いので、すべての意思決定に時間がかかる。
また、宗教的多様性特にイスラム過激派・ヒンズー過激派によるテロ活動も阻害要因になりうる。

(3) 外国からの資金の過剰流入
BRICsブーム、インド株ブームで外国から資金が流入し、インド株はバブルの様相を呈している。
中長期的には成長が見込まれるが、過剰な資金流入は反動によって経済にダメージを与えかねない。
特に最近日本の数百億円規模の投信が設定するそばから売り切れ、という状態でその辺節度のある姿勢が望まれる。

「インド株のアナリストもいないのに投信を売っちゃだめですよ」(事実未確認です)

※これは金利差に着目したNZドルへの投資がNZ経済に悪影響を及ぼしているのと同様(こちらの日経記事「日本からNZドル建て債投資急増、副首相「経済に悪影響」」参照)ですね。日本のマネーも自分の影響力を自覚したほうがいいかもしれません。


<おまけ:榊原教授が"Pro-Asia"なわけ>

域内分業はしているが全体をまとめてみると、既にアジアは「世界最大の工場」になっている。
一方で中産階級人口も7億人(中国2億、インド1億、日本1億、韓国・台湾・シンガポール1億、その他タイ・マレーシア・インドネシア・フィリピン等で2億(うろ覚え))と「世界最大のマーケット」でもある。
なので、将来のポテンシャルとしては欧米よりもアジアの方が高い。
もっとも、エネルギー、食糧、環境問題等が課題となり、20世紀型の成長は難しいだろうが、アジアには歴史と文化を基本にした省資源・環境適合・健康志向のアジア型経済発展モデルが構築できるのではないか。
(ここは最後の質問への回答だったので、相当テンションが上がって走り気味でした。さすがに"LOHAS"は出てきませんでしたがw)


読み直してみると床屋談義風な講演ではありましたが、何の予備知識もない私としてはけっこう楽しめました(前半は冗長でしたが・・・)
コメント (2)
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