一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

堀江社長逮捕 (問題はメールじゃないって・・・)

2006-01-24 | あきなひ

堀江社長逮捕に関し、47thさんから検察の強制捜査から逮捕に到るまでのプロセスに関する疑問に関しTBをいただきました(TB元の記事はこちら

別件捜査については私も拙い直感で前の記事で触れたのですが、toshiさんからのコメントで実務上は別件捜査(逮捕)の適法性を争う事は非常に困難なので、被疑者側の権利を守るためには証券取引法の構成要件を明確にすることが重要とのご指摘をいただきました(toshiさんの関連記事はこちら

法律関係の詳しいことは上の皆様を始めとする専門家の方々に委ねるとしまして、素人の直感としては経済事犯についても「誰が悪い奴か」「悪い奴を懲らしめる」という問題意識を軸に検察の行動がなされているように思います(世論を気にする検察とマスコミの相互作用かもしれません)

なので、未だに具体的に何が堀江社長の嫌疑(何の行為が何の法律に違反し、それも正犯なのか幇助なのか等)で、何が宮内取締役の嫌疑なのかよくわからないままにそれに疑問(少なくとも質問)を呈さず「逮捕」の報道だけがにぎやかにされているのは(今回のライブドアが急成長・オーナー企業・マスコミへの露出の多さ・攻撃的姿勢というターゲットにされやすい要素をすべて持っていることもあるのでしょうが)確かに健全とはいえないと思います。

逆に(もはや遠い昔の話ように感じますが)カネボウの粉飾決算(こちらのほうが規模の大きい会社の話だったので社会経済的影響は大きかったはずです)のようにサラリーマン社長の犯罪は、世間的にもあまり注目を浴びずに済んでしまいました。
また、西武鉄道・コクドの件は堤義明氏逮捕で以上終わり、という形になっていますね。


ところで今回のライブドア問題を他の(特に従来型)の企業がどのように教訓にしているかというと、

 「メールはまとめて持っていかれると危険なので、微妙な話はメールでしないほうがいい」

というような話が耳に入るのが多い事にちょっと脱力している今日この頃です。

違法行為を指示するのはもってのほかとして、いわゆるグレーゾーンの判断については専門家に確認して、会社内で十分検討した上での行動だ、という記録を残しておくほうが重要だと思うのですが。
それとも未だにトカゲの尻尾切りが通じると言う幻想があるのでしょうか。
ひょっとするとどこもかしこもヤバいことだらけなんだろうか・・・w

もっとも聞くところによると、金融庁の検査などでもメールサーバーでキーワード検索などをしてネチネチと細かいところをつつかれるのはたまらん、という話もあります。
また、現在議論されているように証券等監視委員会が権限強化された暁には、現在の(一部の?)国税のように「査察に入った以上は何かお土産がないと困る」というようにとことんあら捜しをされるんじゃないか、という危惧もわからなくはないです。

ただそれは不用意な、誤解を招くような表現をするな、という社内文書としてのメールの書き方を徹底すればいいことですよねぇ。


企業として注意すべきはむしろ

東証の開示に「書いていない」ことがあることが「偽計取引」になる
架空の売上計上をしたことが「風説の流布」とされる

という今回の証券取引法違反容疑の射程がどこまであるかなんじゃないでしょうか。

開示資料に「書いていない」ことが証券取引法違反の嫌疑をかけられるとすると、適時開示にあたっては、相当慎重にならざるを得ないと思います。

また、「決算対策」と称して損切り・益だしはどこの企業もやっていると思いますが、たとえば単純に売却した資産の売上をどの期に計上するかについてすら事後的に「風説の流布」とされうる可能性があるのでしょうか。


「まともな企業には捜査に入りませんよ」などと検察が言ってたりしたら、なおのこといやですねw

コメント (2)
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誰が誰から何を買うにしても

2006-01-24 | あきなひ
ライブドア一転、買収の標的に?資産だけでも魅力的
(2006年 1月23日 (月) 23:31 読売新聞)

などと早速はやし立てられておりますが、現在の株主にとって優しい話にはまずならないのではないかと。


まず、ライブドア本体を買おうと考えます

上の記事では「現預金-有利子負債で860億、それにセシールなどの子会社もあるので2000億円程度なら」などという「業界筋」のコメントを載せていましたが、フジテレビからの損害賠償請求や、子会社(特にダイナシティなどのキナ臭い会社)に対する債務保証など、何が出てくるかわかったものではありません。

普通この手の「死に体」の会社は倒産手続きの中で既存株式の価値を0としてから増資なり営業譲渡というのが多いのですが、今回キャッシュはあるので倒産もしません。

では現在の発行済株式の購入を検討してみます。するとまず発行済株式総数10億株、株主数22万人という会社の株を買う手間だけでかなりのものです。
それに、ライブドア本体の株を買うと、以前17%、18万株持っているホリエモンに(今の時価とは比べ物にならないかそれでも1株60円超なら億単位の)キャッシュが行くことになり、それへの批判も考慮する必要があります。

そうすると次の手は株式交換。
これなら新会社法下では代表訴訟提起後に株式交換があっても原告適格を失わないので一応「勧善懲悪」気分は満たされます。
しかし今回の証取法違反が株式交換がらみだったことを考えると、ちょっと「火中の栗」度合いが高いです。特にライブドア側の評価は高くなりようはないものの、「買収側の評価が不当ではないか」などと言われかねないですね。
さらに、ライブドアの取締役会が機能停止なので交換比率も決められないのではないでしょうか。

そうすると、株主提案で取締役を入れ替えて会社を清算して株主に還元する、くらいしかありませんが、これは既存株主が意見を統一してやるようなもので新しい投資家が入っていくメリットはあまりないです。


そうするとライブドアの関係会社をばら売りで買う、ということが考えられます。
グループ会社の概要は分からないのですが、粉飾決算会社だけでなく一応利益やキャッシュフローがついている会社はあるのでしょうから、それらは売れると思います。

でも、稼ぎ頭のHS証券が今回の投資事業組合関係で免許取り消しになったりすると、ほとんど値段のつく会社はなくなってしまうかもしれません。

そうやって本体に売却代金を集約させて、余剰金を配当させる、分かりやすくなった本体を誰かに売るか、はたまた会社を清算するということができるかもしれません。

でも、この子会社売却などの意思決定は誰がするのでしょうか?
現経営陣またはその推薦者はダメでしょうけど、火中の栗を拾って経営者になる人がいますかね。
それに、いたとしても誰が取締役候補としてかつぎあげるのでしょうか?現経営陣でなければ株主提案権の行使が必要です(要件は1%または300個の議決権を6ヶ月以上継続保有)が誰かが音頭をとる必要があります。


というわけで、素人考えでは「タナボタ」「干天の慈雨」ということはないと思います。

今まで無配の会社で(株主総会でホリエモンを見たいという人以外の)大半の株主は興味がなかったことかのしれませんが、結局最後は株主として議決権をどう行使するかが問われることになるのでしょう。
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